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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第17話

 清水くんと宮本くんの監視報告が夜、当たり前のように我が家に来た。

 まあ、晶くんと厳槌いづち先輩が毎晩来るようになっているので、効率的だし良いのだけど。

 最近は晶くんと一緒に帰宅途中にお夕飯の食材を一緒に買いに行って、2人にもお金を出してもらっているので私も特に不満はない。何より「美味しい」と言って食べてもらえるのは作り甲斐がある。


 今夜は生姜焼きと茄子の煮びたし、ツナのチャンプルー、なめこの赤だし味噌汁。人数が多いので、その分品数多く作れるから食事のバランスも良くなって良い事尽くめで私としてはほくほくで楽しい。

 クロと晶くんがすぐに喧嘩するのが少々面倒だけど……ほんと、仲良くして欲しい。

 なんで、こう2人共お互いに煽り合うのだろうか、と思うけどその割には仲良くて、先輩は放置気味だし。私だけが振り回されている気がする。おかしいな……?



 閑話休題



 私が料理中に報告が来たから先輩が受け取ってくれて、食事の後に、今後の対策を含めて話し合う事になった。食事は美味しく食べたいから正しいね!

 今日も今日とてお代わり分の争奪戦にぎゃーぎゃー賑やかな我が家の食卓は、終わった後の洗い物などの片付けはみんな一緒にやってくれるので、ちゃんと役割分担出来ていて作りてとしても嬉しい。


 と、言うことで本題がやって来た。


 結論として、宮本くんは変化なく、妖魔の目くらましに利用された可能性が高い。とは言え時間差で浸蝕が行われる場合もあるので、当面監視対象として継続することとなった。

 清水くんは妖魔の気配が弱くだがまとわりついていて、清水くんが妖魔の目的ターゲットであることが間違いないと判断された。浸蝕具合は明日再度確認する事となっている。


 保健室の妖魔の出現条件については現時点でも不明。放課後まで保健室で眠っていた清水くんの対応をした養護教員に変化はなく、妖魔の出現も確認されていない。現状瀬名葵を殺害した妖魔については何も分かっていない。

 葵の遺体は何か鋭いもので切り裂かれていた事以外は何も判明していない。その武器さえも不明なため、少しでも情報が欲しい所だが、同時に焦る訳にも行かない。これ以上祓い師を犠牲にはできない。


「うーん……清水くんをどうするか、が焦点かな」

「このまま継続監視でいいだろう?」

「進行を確認したら?」

「状況次第だが、妖魔を吊り上げるためには彼にはもうしばらく囮になってもらう」

「一般人ですよ?」

「あたしも基本は反対だけど、現状プールの方からのアプローチに無反応なのを考えると致し方ないかな」

「晶くん……大事の前の小事、だけど」

「ユウちゃんの気持ちも分かるけど、清水くんに憑いている妖魔はダミーには付けられなかった。つまり彼の魂にターゲットが固定されているって事だから正直あたしでも手の打ちようがないんだ。ごめんね」

「ううん、我儘言ってごめん。そうだよね……せめて、彼にはお守りを付けておくくらいかな」

「神崎、それも駄目だ。祓い師の気配は妖魔を警戒させ、捕縛と滅殺を考えると一切手を出すな」

「先輩……それは、彼に死ねと言っている事では?」

「分かっている。これは年長者であり、この3人を率いる者としての判断だ。上長判断だと思ってもらってもいい」

「了解、しました」

「神崎、もし清水が死んだとしても、それは俺のせいだ」

「せん、ぱい……はい、妖魔の滅殺を最優先します。幸い彼の隣の席なので監視は密に行います」

「頼む」


 心配そうに私を見ている晶くんに大丈夫、と微笑みながらその日は解散した。


 ほぼ確定で彼は死ぬ。

 この仕事をしている限り、人の死とは離れられないものだけれども……それを防ぐのが祓い師の仕事だ。みんな分かっている、別に死なせたいわけじゃない、でも手詰まりでもある。

 あの妖魔を、七不思議を放っておけばどんどん妖魔は力を付けて、益々被害者が増える。分かっている。

 そして、犠牲が出るのであれば冷徹に、自分の心を殺してでも彼を囮として完璧に妖魔は滅すべきだと言うのも、全部理解しながら私は動揺が抑えられない。私の未熟だ……先輩は自ら泥を被ってくれているのに。


『ユウ』

「あ、クロ……」

『それ以上自分の責めるな。お前も瀬名も厳槌も悪くない』

「うん、ありがとう」

『ほら、もう()()


 クロに言霊を使われた、と分かった瞬間にもう私の意識は朦朧としてそのまま翌朝まで眠ってしまった。クロはいつも、私が不安定になると、心身への影響を心配してこうして強制でも寝かしてくれる。


『ったく、ユウはいつも考えすぎなんだ……おい、厳槌、見てるんだろ? ユウはもう寝かしたから安心しろ』

「すまんな、お前の相棒を追い詰める気はなかった」

『ユウは人間が死ぬ事に過敏だからな。気にするな。分かってない訳じゃない』

「神崎の状態はどうだ?」

『精神不安の影響は大して出てねえよ。むしろ葵の死を乗り越えられたから、少し安定している。あのクソガキのおかげだな』

「そうか、晶にも感謝だな。あいつも辛かろう」

『祓い師はだれしも身内を亡くしている。みなが乗り越えていくものだ』

「だと言っても辛いものは辛い。俺とてもう誰も死なせたくない、そう思って活動はしているが……人の手は小さいな」

『そうだな。神や仏にもっと仕事しろと言うしかねえよ』

「ははっ、確かにな。邪魔したな」

『いんや、お前もちゃんと寝ろよ?』


 片手を上げて厳槌が去ると、ユウをベッドに運んで、周りに結界を張って寝かした。全く、己の半身の弱さを仕方ないと苦笑しつつ、それさえも半身の可愛さだと思っている自分に苛立つ。

 クロは最終的にはユウさえ無事ならそれで、いい。

 ユウは一体どこまでそれを分かっているんだろうな?と思いつつ、クロもまたユウの隣で眠りに就いた。



 翌朝、私は軽くクロと共に朝食を食べて、クロ兄の姿を取ったクロと歩いていると葵ちゃん(あきらくん)が合流してきた。


「おっはよー! ユウちゃん~」

「おはよう、葵ちゃん」

「ユウちゃん、ちゃんと寝れた?」

「うん、大丈夫だよ」

「うーん……うん、大丈夫だね! やるなネコ」

「けっ」

「えっ、なんですかー?従兄弟のクロさーん??」

「なんでもねーよ」


 いつも通りな賑やかな登校時間に、自然と笑顔が出る。この時間がずっと続けばいいのに、とは思うものの学校にあっという間についてしまう。

 クロと別れつつ、クラスに向かい隣のクラスの葵ちゃんともここまでだ。教室に入ると清水くんはもう席についていた。


「おはよう」

「ああ、おはよう神崎さん」

「清水くん体調大丈夫? 養護の先生が熱中症だろうって言ってたけど……」

「そういえば神崎さんと瀬名さんが気付いて助けてくれたんだよね。ありがとう」

「いえいえ、私は何もできなくて、ほぼ葵ちゃんが清水くんを引き上げてくれたんだよ。葵ちゃん、意外と力持ちでビックリしちゃったの」

「へえー! そうだったんだ。後で瀬名さんにもお礼を言わないとね」

「うん。でも、清水くんが元気そうでよかった!」

「うん……おかげさまで無事だよ」

「どうか、した?」

「あ、ううん! まだちょっと疲れてるのかな……まあ、でも大丈夫だよ!」

「そう? 無理、しないようにね?」


 ホームルームの開始と共に清水くんの視線は黒板ではなく、ゆらゆらと何かを探すようにそっと周りを見渡していた。その表情は、どこか不安そうに見えた。

 清水くんの周りからは、妖魔の気配は特に強まっていない。清水くんの内部で浸蝕が進んでいる可能性が高まったが、現時点では見守る事しかできない。


 はがゆい思いを隠しながらも時間は刻一刻と過ぎて行く――。



読んでいただきありがとうございます!

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