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家族と共に殺されかけた少女、妖魔と契約して祓い師として立つ  作者: あるる


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第13話

 気付いたらベッドの上で、何処か一瞬分からず警戒したが、周りを見渡して今借りているマンションの自室だと分かって力が抜けた。


『ユウ、目が覚めたか。ほら、水分取れ』

「ん」


 渡された冷えたスポドリが身体に染み渡る感じがして、ホッとする。

 私が水分を取れたのを確認すると、すかさずクロが栄養補助のゼリーを渡してくれるので、大人しくむぐむぐ飲む。


 人の倍くらいの時間をかけて飲みきると、クロは少しずつ眠っていた間のことを教えてくれた。


 あの後、私は3日程寝込んでいた、らしい。

 佐々木美優はその後家に帰ってなく、家族から捜索願が出されていたが発見されることなく、行方不明として警察にも届け出が出された。


 瀬名葵の死亡はどこにも出ることなく、瀬名自身の情報と共に抹消された。殺害方法があまりにショッキングだったため、祓い師本部や政府が動き、洗浄と記憶操作を行ったのかもしれない。

 たった1日共に過ごしただけだったけれど、瀬名葵の屈託のない笑顔が忘れられなかった。軽口を叩くくせに、護符の追加効果も複製ダミーの制御も驚くほど精巧で――妖魔の目さえ欺く才能の持ち主だった。


「クロ、瀬名は本当に亡くなってた?」

『ああ、間違いなく本人だった』

「そっかぁ……瀬名、もう会えないんだね。それに佐々木さんは、今頃人であることを辞めているだろうね」

『次会った時は間違いなく敵だな』

「クロ……きっついなぁ。ちょっとだけ弱音吐いても、いい?」

『おう』


 その後30分ほど、クロに正直に泣きながら話した。佐々木さんは話しやすくて、仲良くなれそうで嬉しかったこととか、瀬名とは名前で呼び合うのが嬉しかったこと、本当は週末瀬名と佐々木さんとカラオケ行く予定だったこと、取り留めもない話しばかりだった。

 分かっているけれども、彼女たちを失ったのは悲しかった。乗り越えられない辛さ、悲しみではないけれども、心はちゃんと痛かった。話しながら涙が溢れてしまうと、止まらなくてしばらく泣いていたけれど、クロは猫の姿のまま私の好きに抱き上げさせてくれた。


「……はあ、久々に泣いた。クロありがとう」

『おう。明日は本部から厳槌いづちともう1人来るから、今日は早めに休んでおけ』

「ん、了解」


 そのまままた寝てしまった私は翌朝は割と回復していた。ベッドからも起き上がれて朝食もクロと2人で取って本部から来る2人を待っていると11時頃にチャイムが鳴ってインターホンに出ると、そこに居るはずのない人物がいた。


『こんにちは~、瀬名とぉ』

『よう、厳槌だ。開けてくれ』

「……あ、うん、すぐ行くね」


 心臓が嫌な音を立てて、動揺が収まらないまま、玄関に行くと瀬名がいた。


「瀬名……な、なんで」

「神崎、とりあえず俺たちを入れてくれ」

「う、うん。どうぞ」


 2人から逃げるようにリビングに行くとソファで寝そべっていたクロを抱き上げる。


『なんだ、ユウ?』

「ううん、このままで」


 後から2人が入ってきて、ドアもちゃんと閉めてくれる。


「神崎、動揺も分かるがらしくないぞ。不用心すぎる」

「あ、あは……先輩いたし」

「まあまあ、あたしのせいですよね? あたしは瀬名葵の従兄弟、瀬名晶くんだよ♡」

「くん?」

「そそ。くん。あたしね、こう見えても男の子なんだ~。葵ちゃんとは瓜二つで能力も揃えたように一緒。ただし、あたしは引きこもりでね~。これはあたしのドッペルゲンガーって呼んでるんだけど、要は分身なんだ」

「……遠隔で操作してるの?」

「そう。でね、あたしと葵ちゃん、仲良しだったの。だから、あたしは葵ちゃんとして学校に行くよ。学校には葵ちゃんは手続き漏れで前の学校に行くから2~3日休むって届けてあるんだ♪」

「そっか…」

「神崎さん、ユウちゃんって呼んでいい?葵ちゃんがね、いっぱい話してくれたの。美人さんで、でも飾ってなくて仲良くなれそうで嬉しいって」

「っ!!そっかぁ、嬉しいなぁ……私も、葵ちゃんともっとお話ししたかった……ごめんなさい、守れなくて」

「ううん、あの時間帯は大丈夫なはずだった。葵ちゃんも結界は張っていた、なのに突破されたから、誰のせいでもないよ。でも、アイツだけはあたしにやらせてね?」

「うん、絶対敵は討つよ」

「おーけー、ならユウちゃんはあたしの仲間♡ よろしくね~」


 そこに瀬名が、葵ちゃんがいるようで涙が溢れていく。晶くんも辛いだろうに。でも、私も祓い師だ、これからの対策を立てないといけない。


「ごめんね、今までのことは報告書で読んでいるだろうけど、改めて私の感じたものを共有する」


 並河高等学校はかなり特殊な状況で、基本的に生徒は既に洗脳状態である可能性すらあること。それはここ数年の生徒の死亡と行方不明の数の多さにも関わらず誰も気にしているふうがないことから始まる。最初は何らかの政府の記憶操作かと思ったがその兆候はなかった。

 次に校内があまりに清浄で何かの結界内であるのは確実なのに、その何か(・・)はまだ見えていない。そして、七不思議はそこに巣くう何かが人間を食らうために準備した仕組みの可能性が高い。

 七不思議の中でも異色だと思っていた【聞いてはいけないチャイム】は一時的に一定空間を妖魔たちの領域テリトリーに変えるものだった。

 最後に、佐々木美優の持っていた本と目次の写真。その目次の中にもある田辺の言っていた「山人」と「山の神」は何かのヒントになるかもしれない。それに田辺が言っていた「なりそこない」も。アレはきっと妖魔に取り込まれて、自我が崩壊した人間なのだろうとは思うけど、単に食うためではなく人間を「なりそこない」として残す理由が不明だった。そして、行方をくらました佐々木美優。


「……ざっとこんな所かな、気になることは聞いて」

「俺は本が気になるな。さすがに写真からじゃ呪式も何も見えないが、この目次内容は気になる。お伽噺を模した精神誘導だろうとは思うが、実際に本体がいるのはこの山なんだろうな」

「そうね、その辺に関しては今地元の有力者のご婦人の所の資料を見させてもらっているんだけど、何分資料が多くてね。今週何処かでまたお会いしに行くから頑張って読まないと」

「なら、俺がそこは協力しよう。俺の一族は地方にあるそう言った神話等に詳しいから共通点も見つけられるだろう」

「先輩、助かります」

「じゃあ、あたしは葵ちゃんとしてクラスメイトや他の同級生から怪しい子をさがそっかな!きっとね、敵は無害そうな生徒と教師の中に潜んでいると思うの。あたし、隠れ鬼得意なんだ~」


 ニヤァと笑った顔は葵とは違って闇のあるものだったけど、葵を失ったんだ。晶の恨みも怒りも深いのは分かっているし、私には苦手分野だから任せるしかない。


「晶くんも、気をつけてね?」

「うん♪ ドッペルはまだまだあるけど、この身体を傷付けられるのは本意じゃないから気を付けるよ~。ユウちゃん、最後に葵ちゃんが結界と認識阻害を付与した護符、見せてくれる?」

「うん、ちょっと待っててね」


 自室の鞄から組み紐のチャームを取り外してリビングに持って行くと、晶くんがクロにちょっかい出して厳槌先輩が難しい顔をして座っていた。なんだか、ホッとする光景だった。


『てめえ!だからオレ様はネコじゃねえ!』

「ええ~、ほらほら」

『ぐっ…オレ様はそんなものには釣られねえ!!』

「あ、逃げた~!!」

『うっせ、ばーか!』


 異空間に逃げたクロの姿にあっけにとられつつ、見ていると晶くんがこっちを見て手を振ってくれる。本当に、葵ちゃんがそこに居るみたいだった。


「お待たせ、これだよ」

「おお~可愛い!ユウちゃんの自作かぁ、綺麗に編まれた組み紐だね。ふぅ~ん、あのネコもやるじゃん。葵ちゃんの繊細な付与ほどじゃないけど」

「晶くん、どうかな?」

「うん、何も綻びてないし大丈夫だよ。ユウちゃん自身も近接戦闘は得意じゃないでしょ? 大事に持っててね」

「うん、ありがとう」

「神崎、俺はこの2冊を持ち帰る。それと俺たちはこの部屋の左右の部屋が割り当てられている。だから、何かあれば来い」

「はい、ありがとうございます」


 一通りの情報交換も終わり、2人も帰宅したので私も資料に取り掛かる。葵ちゃんのためにも、いつまでも悲しんでいられない。「旧校舎の図書室の持ち出し禁止書架」は田辺を滅したので一旦保留だ。例の「伊津那いづなの御伽草紙」がないから何も打てる手はない。



 ――明日から次の七不思議の調査に取り掛かる。

読んでいただきありがとうございます!

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