プロローグ 託された思い
どうも、鳩です。
これは、今でも鮮明に思い出すことができる記憶。確かあの日は夕暮れ時だっただろうか、技術学校を終えた僕は丘の上の木の下のよく町が見渡せる所で寝そべっていた。夕暮れの朱色の空を彩るように飛び交う鳥たち、彼らの翼の羽ばたく音と鳴き声、どこまでも飛んでいけそうな、生き生きとした姿を見る度に僕は
『僕も......あの鳥のように......どこまでも......』
と、空に手を伸ばし、つい口に出してしまう。本来はこの様なこと決して口走ってはいけない、いつ、だれが、僕の言葉を聞いているか判らないからだ、万が一密告者にこんなことが聞かれでもしたら、一発で秘密警察の餌食だ。ただ、この丘は大分開けているし、誰かが隠れて盗み聞きをできるような場所ではない、そう、ここはこの国ではこの国では数少ない自由な場所なのだ。
この国は壁で覆われている、高さは......数十メートルは確実にあるだろう、壁の近くに集まることは禁じられているから、正確な高さはわからない。ただ一つ言えるのは、この国に自由なんてものはないという事実だけだ。
と、そんなことを呟いていると。
『君も自由を求めるのかい?』
『!!』
と、自分の真横からそんな声が聞こえてきた、顔から冷や汗が溢れてくる。警戒を怠っていた、鳥を見るのに夢中になってしまっていたが故に気づくことができなかった。ああ、こんな所で僕の人生終わりなのかと、そんなことを考えていると。
『あ、全然大丈夫だよ。ボクは秘密警察でも密告者でも何でもない。ただのヒト、普通のヒトだよ、キミと同じさ、だから安心して、僕の話を聞いてくれないか。』
と、彼?(声が中性的だったため)は言っていた、本来であれば何も信頼できない言葉、人なんて所詮権威の前では無力に過ぎない、でも、何故か彼?の言葉は何か信じれるものがあった。
意を決して彼?の声のした方を見る
『......やあ。』
と、彼?はふにゃりと僕に笑いかける。
『きっと、初めましてだよね?』
『そ、そうですね......僕は少なくとも、あなたと会った記憶はありません。』
『そっか、まあ、そんなことはどうでもいいんだ。ボクはそんなことよりも、キミに渡したいものがあるんだ。』
『......なんですか?』
と、そう僕が言うと、彼?はおもむろに自分のポケットをまさぐりだし、あるものを取り出す。
『これだ。』
『......なんですか?それ、ちゃんと見せてもらわないとわからないんですけど......』
『うーん、これが何か、かぁ。キミは難しい質問をするね......まぁ、強いて言うなら......』
一つ、沈黙が僕らの周りを包み込んだ、それは永遠のようにも刹那的にも感じられた。
『ボクらの思いの証かな。』
『思いの......証......?』
『そう、思いの証。この壁に囲われた閉鎖的で不自由なこの国では、いつ何時でも自由を追い求める人がいたんだ、そんな彼らの思いを、キミに受け取って欲しいんだ。』
と、彼?は強く握りしめた手を僕の方に差し出して、その手を開いた。次の瞬間彼の手から何かが落ちる、それは翼の形をした何かだった、そしてそれはゆっくりと落ちていった。
『......これは、なんですか?』
と、僕が呟くも、彼?そんな僕に目もくれず
『それじゃあ、頼んだよ。』
と言って、彼?は去って行ってしまった。それ以降、彼?は姿を現すことはなかった。
どうも、鳩です。初投稿です、拙い文章ですが大目に見てください。
この後書きでは、筆者である鳩の近況だったり本文に関係あることないこと様々なことを日記のように記していこうと思いますのでよろしくお願いします。
ルフトシッフを読むうえで補足情報を書き記しておきます。主人公のフリューゲルは、壁に囲われた不自由な国オストに生まれます。壁は進撃の巨人の壁を思い浮かべてくれればイメージしやすいと思います、あんな感じです。その壁はフリューゲルが生まれるずっと前から存在しており、壁を超えることはもちろん、近づくことでさえ固く禁じられています。
オストに生まれた少年少女は、満5歳を迎えると10年制の技術学校への入学を義務付けられています。そこで理系科目の好成績を修めた者は大学への進学と研究者を志すことを許されますが、殆どの人間は15歳で技術学校を卒業した後、国のための勤労、納税を義務付けられています。
秘密警察とはオストに異をなす者、または危険分子とみなした者を排除、粛清する組織で、公にされている組織です、そのため、オストの人々は秘密警察に怯えながら生活をしています。密告者とは秘密警察でも何でもないただの一般の人間ですが、オストに異をなす人間を秘密警察に密告する、言わばチクリ魔的存在です。
こんな感じでこれからも頑張っていこうと思います、よろしくお願いします。
敬具