アフターアクション報告会」
第一幕:報告は沈黙から始まる
(無機質な会議室。壁は灰色。机の上には、各人のアフターアクション報告書。野田の報告書だけ、手書きでボロボロ)
官房参与(無表情で)
「まず、前提確認。
本件“歌舞伎町地区広域停電・情報遮断・徴収文書の未遂奪取”において、国民保護制度は発動されず、現場判断により対応。
民間人(学生)5名が同行・支援し、徴収官1名の救出と文書確保に寄与。
これは本来、“あってはならない行動”である。」
(場が静まり返る)
鏡(静かに)
「だが“国家の危機”は、常に“あってはならない”形で訪れる。」
第二幕:学生たちの“報告”
部長(資料をパワポで出しながら)
「我々学生の動員は、制度上“偶発”ですが、行動は“意図”を持ちました。
都市インフラ崩壊時、若年層がどこまで動けるか――それが私の焦点でした。」
副部長(メモを手に語る)
「私は“納税者教育”の空白を感じました。
税は経済行為じゃない。“命の分配行為”です。
今回、私たちは“生きることに直結する税”を、ユウコさんの背中で見ました。」
澤田(淡々と)
「私は、サバイブしただけです。
でも、“逃げながら考える”のは大事だと思いました。
“考えるために逃げる”のも、国家の一部だと。」
野田(緊張しながら)
「わ、わたし……っ、すみません、報告書、折れちゃってて……。
でも……わたし、生まれて初めて、
“自分の税金”が“誰かの命を守る”って意味を体感しました。
もう、“払いたくない”とは……言えないです……。」
(ユウコ、口元だけでにっこり笑い、野田の肩をぽんと叩く)
第三幕:徴収官チームの応答
涼宮(鋭く)
「“徴税”は、国家の静かな戦争です。
その戦争に、今回は素人の若者が巻き込まれた。
だが彼らは、“戦場”にいた。
それを否定すれば、この国は未来の防人を失います。」
ユウコ(静かに)
「税ってのは、“誰かが誰かの分を先払いしてくれてる”ってこと。
それを背負う覚悟があるなら、あたしたちは次の時代にバトン渡せる。」
(鏡、最後に立ち上がり、報告書の最後のページをめくる)
鏡
「本件において、“徴税”と“主権”は完全にリンクした。
課題は多いが、得た教訓は明確:
•若者に国家の背骨を触れさせる教育が不足している
•防災・納税・危機管理をつなげた“実践型教育”の創設が必要
•国家は、“守るべきもの”ではなく“引き受けるもの”として語られねばならない
本報告、以上。」
終章:薄明の中で
(会議室を出た帰り道、永田町の朝焼け。霞ヶ関のビル群の上に、うっすらと日が差してくる)
野田(空を見上げて)
「……私、たぶん……この国のこと、少しだけ“自分のこと”として考えられるようになった気がします。」
部長(スマホで自撮りしながら)
「“この国は誰のものか”――って、今日から少しは、言えるようになったね。」
ユウコ(ふとつぶやく)
「そう、誰かが“国家”を言葉にしてくれなきゃ……
夜の街は、ずっと“税の無法地帯”のままだもんね。」
(全員の歩みが、ゆっくりと議事堂の前を通過していく)