「徴収官VS学生」の国家予算ディベート大会編
「防衛費か?社会保障か?――“自分の税金”は誰のためのものか」**
短編対話劇
『国家の財布をめぐる戦い』~徴収官VS学生 国家予算ディベート大会編~
(講堂の舞台に、長机を挟んで左右に向かい合う2つのチーム。左が徴収官、右が学生)
副部長(司会、律儀に眼鏡を上げながら)
「それでは、第2回 “国民的予算白熱教室” を始めます。テーマは、
『あなたの払った税金は、戦争を止める武器に? それとも、あなたの老後と医療に?』――
学生側、持ち時間3分、開会お願いします。」
部長(立ち上がり、髪をかきあげて)
「私は“社会保障重視派”よ。
防衛費を増やしたって、核ミサイルの前では焼け石に水でしょ。
だったらさ、国民の健康とか教育とか、未来のほうにお金を使うべきじゃない?」
澤田(静かに)
「年金も医療も限界だよ。少子高齢化なのに、防衛費倍増?
その結果、親の介護費が削られたら、国家って誰のためにあるの?」
(会場から拍手)
副部長
「それでは、徴収官側。反論どうぞ。」
鏡(静かに立ち上がる)
「では質問する。
“社会保障”とは何か。誰が守り、いつ支給される?
答えは、“平和な国家の中でのみ成立する福祉”だ。
戦争や大災害で国土が荒廃すれば、年金も医療も“支払われる場所”がなくなる。」
(涼宮が資料を机に並べて補足)
涼宮(冷徹な声で)
「2024年度の国防予算は約7兆円。社会保障費は約36兆円。
“福祉を優先”という声が多いが、福祉の“土台”は国家機能そのもの。
攻撃されて都市が麻痺すれば、社会保障はゼロになる。わかりますか?」
ユウコ(笑顔で、でも鋭く)
「夜の街だって、平和じゃなきゃ商売できないのよ。
“夢を売る商売”も、“生きてるから”できるの。
私たちは、国家の保険をかけてんのよ。防衛は、その“保険料”だわ。」
(場内ざわつく)
野田(思い切って立ち上がる)
「でも……それじゃ、結局“どっちも大事”って話になってしまいませんか?
限られた税金の中で、何を優先するかを決めることこそ、“国民”の仕事じゃないですか?」
(一同が注目)
亀田(目を細めて)
「まあ、税金ってさ……あたしらの汗よ。
それをどこに“染み込ませるか”って話。
“戦う国家”に染み込ませるか、“支え合う社会”に染み込ませるか……
でも、どっちも“命”の話だわねぇ。」
(副部長がメモを取りながら)
副部長(まとめ始める)
「本日のまとめ:
•学生側:国家は“人間のため”にある。その人間の“生活”と“老後”を守ることにこそ税を使え。
•徴収官側:その“生活”は“安全”の上に成り立つ。“生きる土台”が崩れれば、支える対象そのものが失われる。
どちらが正しいというより――」
(鏡が立ち上がる)
鏡
「“国民一人一人が、その都度、選択し続けること”。
それが、主権者の義務であり、国家という船の“舵取り”だ。」
(野田が、口元をきゅっと結んで)
野田
「じゃあ……次の選挙、ちゃんと“自分の意思”で投票します。
私の税金、私が考えて使わせるために。」
(大きな拍手。舞台が静かに照明を落とす)
終幕ナレーション(涼宮のモノローグ)
「予算は数字じゃない。“生きる”という行為そのものの、設計図。
あなたは、どんな国に住みたいか。
それを選ぶ時代が、もう始まっている。」