国家・財政と安全保障」特別講座の公開討論会。
『徴収官と学生たちの国家非常会議』
(大学構内のホール。壇上にはスーツ姿の鏡、鋭い眼光の涼宮、夜の街モード全開のユウコ。対面には、緊張する野田、生真面目な顔の副部長、スカした部長、眠そうな澤田、落ち着きない亀田)
野田(緊張した声で)
「え、えー…本日は、あの、えっと……なんかすごい国家とか税とか国防とかの話を……わたしたち一般学生が、するんですよね……?」
鏡(淡々と)
「そうだ。“平時の無関心”が、国家を滅ぼす。その現実を考える場にしてもらう。」
亀田(口をとがらせ)
「あらやだ~国家とかって、私ら関係ある?って思っちゃうのよね~。アラフィフ独身、年金も危ういし、もうどーでもよくなっちゃうのよ~」
涼宮(鋭く切り返し)
「その“どうでもよさ”が国家にとって最大の脅威です。納税も、投票も、無関心で放棄する人が増えれば、国家の屋台骨は崩れます。」
副部長(メモを取りつつ)
「つまり……“国家の脆弱性は、国民一人一人の無責任さに起因する”と。これはある種のラカン的構造ですよね、主体の空洞化……」
澤田
「それ言いたかっただけだろ……」
部長(腕を組んで、髪をかきあげ)
「でもさー。私たちが危機感持ったところで、政治家とかエラい人が動かなきゃ意味なくない?」
ユウコ(にっこりしながら、でも目が笑ってない)
「あら。じゃあアンタたち、夜の街で税金払ってないホストが“政治家が悪いから”って言ったら許せんの?
国家ってのはね、“払う人間”が“語る資格”持ってんの。逆じゃないのよ。」
(会場がざわつく)
野田(手を挙げて、真面目な顔で)
「じゃあ、私たち大学生が今、一番するべきことって……なんですか?」
鏡(すぐに答える)
「“想像すること”。自分の街にミサイルが落ちたらどうなるか。南海トラフでインフラが止まったら、何がなくなり、どう生きるか。それを“頭の中で”一度やっておく。」
涼宮(冷静に)
「備えることは、誰にでもできる。“備えない自由”はない。」
副部長(思わず口を開く)
「でも、それって…不安を煽るだけじゃないですか?日本は平和国家としてやってきたんです。ずっと。」
鏡(眼光を強めて)
「“ずっと”は続かない。昭和も平成も、どこかで“危機を見なかったふり”をしてきた。
だが、もう“あの頃”は戻らない。」
(ユウコがバッグから1枚の紙を取り出す。ホストの納税滞納書。真っ赤な差押印)
ユウコ(低く、でも優しく)
「この子ね、売上2千万。納税ゼロ。夜は“夢を売る”って言ってたけど、
夢だけじゃ、国家は守れないの。
大学生も同じ。“未来を語る”だけじゃ、未来は来ない。
ちゃんと、払うもの払って、考えること考えなきゃ。
じゃないと、戦争も災害も、他人事のまま“飲まれる”のよ。」
(沈黙)
野田(小さくつぶやく)
「私……本気で、考えなきゃいけないと思いました。何を“引き受けるか”を。」
亀田
「そうねぇ。アタシもそろそろ……真剣に“逃げ道”じゃなくて“立ち位置”考える年かしら。」
澤田(眠そうな声で)
「俺、備蓄くらいは始めるわ……カップ麺、あと5個買って帰る。」
鏡
「それでいい。まず一歩から。国家の背骨は、日常の些細な“意識の選択”でできている。」
部長
「じゃあ、今夜はシェルター体験と防災訓練、サークルでやるかぁ。非常用ランタン、私が持ってるし。」
副部長(小声で)
「それ……部長のキャンプ道具じゃ……」
(場内、爆笑。そして拍手)
終幕ナレーション(鏡のモノローグ)
「国家は“誰か”が守るものではない。
国家は、“あなた”の無関心を喰って、音もなく壊れていく。
気づいた者から、始めるしかないんだ。」