薔薇と少女
幼い薔薇、いわゆる成長が途中で止まると言うあの薔薇をたくさん抱えて今日も街に出る。
実はこの商売は全く実のないものだ。だって誰が欲しい?そんな薔薇。
大輪の百合に太陽を向くひまわり。そう言うのだったら欲しい人はたくさんいるだろうが、小さくも大きくもないこの中途半端な薔薇は需要がない。いや全くないわけではないけれど、まあない。
しかし、一人だけずっと買いに来る少女がいる。
「赤色の薔薇をくださいな、お姉さん」
「はいよ、かわいいお嬢さん」
私はこの子だけのために沢山の幼い薔薇を携えて街に出ている。なぜかって?少女が可愛いからさ。あと、この子はなんだか有名な子らしく少女が薔薇を買うとこぞって興味半分の若者が私の元を訪ねる。
「おばちゃん、何この薔薇?途中じゃないの?なんでもう売ってるの?」
「おばちゃん!?失礼な、まだ34だよ!
この薔薇はこれが成長しきった姿だよ。綺麗だが中途半端な大きさでね、あんまり売れないんだ。でも一人だけ買いに来る子がいてねぇ」
「へえ、買いに来る子って、あの大振りのリボンが着いた麦わら帽子の子?」
「ああ、そうだよ」
「あの子は有名な才能のある子だよ!!でも病弱らしくって、あんまり街に出ないんだ」
「あんまり、、??あの子うちには毎日来るよ」
「うそ、ほんと?すごいな、そりゃおばちゃんお客さん増えるわ」
「嘘かホントかどっちかにしな、どうしてだい?」
「噂でさ、あの子が寄ったり気に入った店は売れるんだってさ。商売繁盛!よかったね、おばちゃん!記念に俺も一つもらうよ」
「最後までおばちゃん呼びをあんた辞めなかったね??まあいいよ、そうなることを願いつつだね。はい、幼い薔薇一本」
青年が言った通りうちの店は大繁盛になった。少女は幼い薔薇を病弱で成長しづらい自分の重ねたのかねぇ?まあなんにせよ商売繁盛はいいこった!
「さ、幼い薔薇だよ!押さないで!あの子が一番だ!」
今日も私はあの子のために幼い薔薇をえっちらおっちら街に抱えて持ってくる。