娘を抱きながらそう誓う
そんなダニエルの姿を見て俺は思わず【フェニックスの尾】をストレージから出していた。
ドゥーナの足を治す為にと取ってきた時に、ゲームと同じような効果なのか不安だった為一応予備として一枚多く採取して来たものであり、結局フェニックスの尾がゲーム同様にドゥーナの足を治してくれたため残ってしまっていたものである。
本当はこんな行為、ダニエルが今まで行ってきて残虐非道な行いからしてありえないという事は理解できているのだが、それでも『俺がストーリーを改変しなければダニエルはこんな罪を背負う事も無かったと思うと身体が勝手に動いてしまっていたのだ。
「…………何の冗談だ?」
そんな俺の行動に、ダニエルは苛立ちを隠すことなく俺の取った行動の意味を聞いて来る。
「俺ならば一度お前を殺して、生き返らすことができる。 そうすれば今の化け物のような姿も人間の姿へと戻るだろう」
「……それで、罪から逃げて、死ぬまで逃げて生きろとでも言いたいのか? なめてんじゃねーぞっ!!」
そして俺はダニエルへ一度死んで、やり直さないかと提案するのだが、ダニエルは魔剣の影響で化け物になった身体の再生力はまだ残っているのか、再生した手足で俺の手にもっているフェニックスの尾を掴むと地面へ落とし、踏みつける。
「…………お前は、ダニエルは強いんだな」
「当り前だ。俺を誰だと思っている? 気持ちだけはお前にだって負けやしねーよ」
そういうダニエルはどこか誇らしげで、何か吹っ切れたような表情をしていた。
「あぁ、身体が崩壊してきたようだ。 どうやらあの魔剣のお陰で俺のこの身体を維持できていたようだな。魔剣が無くなった今、俺の身体はやはり維持できないようだな……本当に、俺の人生は一体何だったんだろう。結局、振り返ってみると承認欲求と嫉妬心に狂わされた人生だった……。なぁルーカス……俺の身体が崩れて無くなってしまう前に、俺の意識を保っている内に殺してくれないか?」
「…………分かった」
なるほど、ダニエルをこの手で殺す事が、これから俺が背負っていく罪なのだろう……。
そして俺は、小声で「すまなかった」と呟き、ダニエルの首を切り落とすのであった。
◆ルーカスside
あれから数か月がたった。
ダニエルを殺したあと、崩れ行くダニエルの身体をストレージへ入れて帝都へ、そしてドゥーナを拾ってタリム領へと戻って来た俺はダニエルの墓を作り、そこへ崩れてしまって最早原型をとどめていないダニエルだったものを地面に埋めて桜のような花が咲く木を植え、そこへタリム領で作られた酒を撒く。
「ルーカス様っ!!」
そんな時、セバスが血相を変えて俺の元へと走ってくるではないか。
ちなみにダニエルの墓は家から少し離れた丘の上に作っていたりするので、その老体で走ってくるのはかなり堪えただろう。
「どうしたセバス? そんなに急いで? どこかの貴族が生意気だと宣戦布告して来たとかか?」
なので俺はセバスに回復魔術をかけてやりながら俺の元へとそこまで急いでやって来た理由を聞く。
「か、回復魔術ありがとうございますルーカス様。……って、ち違いますぞっ!! た、確かに今ちょっときな臭い奴らはいるのも確かではありますが、今はそんな奴らなどどうでも良いのですっ!! とにかく戻ってきてくだされっ!!」
「ったく……どっかのバカ貴族からの宣戦布告ではないとすると……ま、まさかっ!?」
そのセバスの焦り様に、どこかの貴族から宣戦布告をうけたのかと思っただが、どうやら違うらしい。
そして、宣戦布告される以外にセバスがここまで血相を変えて俺の元まで老体に鞭を打って走ってくる理由が他にあるだろうか? と思った時、俺はピンときた。
俺の予想が正しければ、今すぐにでも走って帰らなければならないだろう。
「そのまさかでございますっ!! 奥方様の陣痛が始まりましたっ!!」
こういう時、男がいかに無力であるかという事を痛感させられた。
できる事と言えば隣の部屋で子供が産まれて来るのを待つだけである。
しかも、ただ待つという事も出来ずに部屋の中をうろうろと動き回り、なんとかはやる気持ちや、何もできないという無力感を誤魔化す事しかできないのが歯痒くて仕方がない。
そして、何時間俺は部屋の中をうろうろしていただろう。
何百と部屋の中を往復したその時、隣の部屋から元気な産声が聞こえて来るではないか。
その瞬間俺は部屋を飛び出してドゥーナがいる部屋へと向かう。
するとそこには、汗だくになりながらもやりきったという表情と母性を感じさせるような表情をしたドゥーナと、産まれた子供をお湯で洗っているマリアンヌとタオルを持った女性の使用人たちの姿が見えるではないか。
「旦那様……元気な女の子です……」
だというのに、周囲は嬉しさの中にもほんの少しだけ残念そうな雰囲気をしているではないか。
「よくやったドゥーナっ!! 俺は男の子だろうが女の子だろうが関係なく嬉しく思っているぞっ!! ドゥーナに似て可愛い女の子ではないかっ! 跡継ぎが何だっ!! 男の子が産まれなければこの子に継がせれば良いっ!! 女性が継いではいけないなど、頭の固いじじばば共の考えではないかっ!! それに文句を言ってくる奴は例え皇帝陛下であろうともぶん殴れば良いっ!!」
確かにこの世界に転生して色々とあったのだが、それら全てがどうでも良いと思えるくらいに最高に嬉しいと言うのにそんなくだらない事で俺の嬉しさの度合いが少なくなる訳などあり得ない。
そんな俺の言葉にドゥーナは「この子はこれからお父さんのせいで大変そうね」と呟きながら微笑む。
その微笑みは勿論、娘やマリアンヌ、そして使用人たちに領民も含めて今よりも幸せに暮らして行けるように、今まで以上に領地発展に力を入れなければと、俺はタオルにくるまれた俺の娘を抱きながらそう誓うのであった。
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ここまで読んでいただきありがとうございますっ!!
この作品でございますが一旦はここで完結とさせていただきますっ!
書籍化の話が来た場合は続きを書けるように色々と回収していない伏線や領地開拓もございますので、その場合は続きを書かせていただきますっ!! ので何卒宜しくお願いいたしますっ!!(ちらちら)
また、ここまで読んでくださった方たちは勿論誤字脱字報告をしてくださったかたもありがとうございますっ!!
基本的には睡魔と戦いながら執筆していたのでかなり助かりましたっ!!
そして、この作品を読んで面白かったという方はブックマークと評価をしていただけますととても嬉しく思いますっ!!
とにもかくにも、ありがとうございましたっ!!!!
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
今現在、別作品にて
【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】
https://ncode.syosetu.com/n5038jr/
を連載中でございます!
もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ