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別に気にしていないわよ?


 ちなみにニーズヘッグなのだが、人が乗れるようにストレージから移動用の鞍を装着しているのだが、それは最早鞍ではなく馬車のキャリッジをそのまま背中に付けたようになっているので、そこへ乗り込む。


「では行こうか」

「任せてくれたまへ、主よっ!! 我が主とその番いたちへ快適な空の旅を届けようではないかっ!!」


 そして俺が出発の合図を言うと、ニーズヘッグは事もあろうかマリアンヌとアイシャの事を番いだと言うではないか。


 マリアンヌはそれを聞き、俺にバレない様にすました顔をしているのだが頬が仄かに染まっていり、口元がにやけそうになるのを我慢しているのかもにょもにょと動いているのが見て分かる。


 それだけで後から訂正するのが面倒くさそうだなと思うのだが、それ以上に今すぐにでも人一人を殺さんばかりの表情と眼光をしているアイシャの表情を見て俺の胃がキリキリと痛み始める。


 どうやらいくらステータスなどが上がろうともそれに伴って精神的にも胃が強くなるという事はないようである。


 精神攻撃の恐ろしさを今まさに味わっているのか……。


 そんな事を想いながら俺はバレない様にお腹に回復魔術をかける。


 とりあえずアイシャに謝罪と訂正をしても良いのだが、それが地雷で爆発する可能性がゼロではない以上、俺は時間が解決してくれるだろうと放っておくことにする。


 悪く言えば後回しにするというやつだ。


「アイシャさん……怒っているのかしら?」

「お、怒ってなどいないっ!!」

「あら、表情がまるで怒っているようでしたので……。このニーズヘッグというドラゴンさんからルーカス様の番と呼ばれた事が気に喰わないのかしら? ですが安心してくださいまし。番いと言われたところでアイシャ(・・・)さんは正式に婚姻を結ぶわけでもありませんので、ニーズヘッグさんの軽いジョークだと思っていただければよろしいかとおもいますわ……っ」


 そして、そんなアイシャに向かってマリアンヌが声をかけるのだが、頼むから黙ってくれと叫びたくなる。


 あと『アイシャは正式に婚姻を結ぶわけではない』と何故かアイシャの部分を強調して言っていたのだが、それは『私は婚姻を結ぶけど』と聞こえるのは気のせいだろうか?


「そ、そんな事などどうだって良いっ!! そんな事よりも今私に話しかけるなっ!!」


 しかしながらマリアンヌのお陰? でアイシャが怒っているのが俺と番いである事を勘違いされた事ではないと知ってとりあえずは一安心ではあるのだが、逆に何で怒っているのか分からないのが逆に気になってくる。


 だからと言ってこういう、人が荒れている時に好奇心からちょっかいをかけると大抵いい結果に結びつく事はないので、ここはその好奇心には気付かないふりをしてやり過ごすのが一番賢いやり方だろう。


「では何でそんなに怖い表情をしているのかしら……?」


 しかしながらそんな俺の配慮などマリアンヌによって一瞬でぶち壊されてしまった。


「こ、怖い表情なんかしてないのですが? むしろこれがいつもの私なので誤解を招くような発言は止めて欲しいわね……っ」


 そして、マリアンヌの空気の読めない追及に対してアイシャは『怖い顔などしていない』と否定するのだが、流石にそれは無理があるだろう。


 そう思ったのはマリアンヌも同じだったらしく、まるで獲物を見つけた猫のような表情をするではないか。


 そのマリアンヌの表情を見て『そう言えばコイツ表向きでは聖女っぽい振る舞いをしてはいるが、腹黒い内面を持っているしたたかな女』だという事を思い出す。


「まさか、高いところが苦手だとか……というのではございませんわよね? SSS級冒険者ともあろうお方が……?」

「と、とととととっ、当然ですっ!! ここから万が一落ちてしまった場合、助かる方法はないものかと今も常に考えていたりなどしておりませんっ!!」


 そしてマリアンヌはアイシャに向かって『高い場所が怖いのか?』と聞いているのだが、そのマリアンヌの表情は間違いなくアイシャは高い場所が苦手だという事を、確信をもって聞いている事が窺える。


 その事を、高い場所が苦手であるという事を見抜かれているとは気付いていないようで(というか気付ける精神状態ではなさそう)、マリアンヌの問いかけに必死になって否定するものの『もうそれ肯定しているようなものだろう』というお手本のような反応をするではないか。


「まぁ、アイシャは違うかも知れないが高いところが怖いと思う人も中にはいるだろうし、別にそんな事は良いんじゃないのか? 高いところが苦手だからと言って何が変わるわけでも無い」

「まぁ、そうですわね。わたくしもすこしばかりしつこかった事は謝罪いたしますわ」

「い、いや別に気にしていないわよ?」


 アイシャは窓枠に付けられている、降りる時に掴む用の棒をぎゅっと握りしめながらそう言うのであった。





 そんなこんなで途中から顔面蒼白になり「じ、実は高いところが苦手……なのっ!!」とアイシャが叫びながらマリアンヌに抱き着き、マリアンヌはアイシャの背中を優しく撫でながら軽く回復魔術をかけてやったりとしながらもなんとか俺たちはエルフの国、ウッドグリーン王国の首都であるエルフェイムの手前まで着くことができた。


 そして俺たちは外壁の中にあるエルフェイムへ入る為に関所がある門構えの入口へと向かうのだが、その時点で既に分かる位の違和感を覚えていた。


 普通、大国の首都へと入る関所であれば居るはずの種族関係なく商人や旅人といった人たちが全く見えないのである。


 この不自然さを疑問に思いながら進んで行くと、違和感の正体が分かった。


 今俺の目の前にはウッドグリーン王国の住人であろうエルフたちや、その他種族たちの遺体が転がっているではないか。


 それはまさに無差別に殺されているといっても過言ではないだろう。


 今までの話であれば、ダニエルは悪事をしているような裏で生きる者達やスラム街に住む者達という、一応彼の中で最低限の一線は引いて殺戮を繰り返していた事が窺えてくるのだが、どうやらダニエルはその一線すら引く事できないくらいに魔剣に乗っ取られているのだろう。


 その事からも、ダニエルの持っている魔剣はゲームで一人の魔族を狂わせた呪いの魔剣【ティルフィング】である事は間違いないだろう。


 まったく……落ちるところまで落ちたと言わざるを得ないというか、これではまさに魔王そのものではないか……。


 いったい何故こんな事になったのか、何が彼をあそこまで変えてしまったのか、そのきっかけに俺が絡んでいる事は、理解はしているのだが、それはあくまでもきっかけに過ぎないと思っている。


 しかしながらいくら考えたところで俺はダニエルではないので分からない事は分からない為考える事を止めて先に進む事にする。


 こういう答えが無く、そして暗い内容の問題を考え始めるとそちら側へ引き込まれてしまうので、分からないものはいくら考えても分からないと切る事がメンタル的にも必要だと思っている。


「よぉ……遅かったな」


 そして、そんな事を思って歩いていると道の真ん中で突っ立っている男性が俺に聞き馴染みのある声で話しかけてくる。


「…………人間を辞めたのか?」


 その姿はとてもではないが人間とは言えるようなものではなく、宇宙からの侵略者と言われた方がまだしっくりくるような、グロテスクかつ両生類感もあり、しかしながら人間っぽさも残したような姿をしていた。


「あ? この姿を見て第一声が『人間を辞めたのか?』だと? この俺、ダニエル様を舐めているのか? どっからどう見ても神に一歩近づいた神聖な姿に対して……」


 しかし、ダニエルは今の自分の姿を見て気持ち悪いなどとは思っていないようで、むしろ神聖な姿になったと本気で思っているようである。


 ここまで読んでいただきありがとうございます!!




 今現在、別作品にて


【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】


https://ncode.syosetu.com/n5038jr/




 を連載中でございます!




 もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ

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