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…………返せよ、俺の謝罪


 それに、恐らく俺に恨みを持っているであろうダニエルである為、最悪俺が親から引き継いで運営しているタリム領へと攻めて来る可能性が高く、それであれば帝都で身を潜めていた方がまだ安全であるというのもあり、セバスとメイドと一緒に連れてきたのだが、もしかしたら俺がダニエル討伐に向かっている間にセバスから要らぬ事を吹き込まれる可能性を忘れてしまっていた。


 セバスは俺の祖父の代からランゲージ家の執事をしており、俺が子供の頃、まだ祖父が生きていた頃のセバスはかなり誇りをもって仕事をしていたのが見て分かったのだが、祖父が死んで父親が爵位を引き継いでからのセバスは感情を感じられず、まるでロボットのような仕事ぶりへと変わっていた。


 それはあくまでもセバスが忠誠を誓っているのは俺の祖父だけであり、俺の父には忠誠を誓っていないからであると思っていたので、俺の代になっても変わらずロボットのような仕事ぶりなのは変わらないと思っていたし、俺の記憶の中の、俺に対するセバスの態度から見てもそうなるだろうと思っていた。


 しかしながら蓋を開けてみるとまるで祖父の代のように生き生きと働き始めるセバスの姿がそこにあった。


 当初こそは『どうあれやる気がでる事は良い事だ』などと思っていたのだが、ドゥーナと結婚する前は「当主の務めは妻を娶り跡継ぎとなる子を作る事です。領地改革も素晴らしい事ではございますが、婚約者を探す事にも力を入れてもらいたいですな」と口酸っぱく言ってきたかと思うと、ドゥーナと結婚すれば「良いですか? 旦那様。子作りこそ当主のするべき一番の仕事です。聞く所によるとまだ奥方様に手をつけていないようではないですか。それではダメですぞ」などと言ってきたり、やる気が無かったロボット時代のセバスの方が幾分かマシだと思えるくらいには鬱陶しかった。


 しかしそれも俺とドゥーナとの間に子供ができてからはすっかり聞かなくなったので俺はセバスの事をあまり気に留めなくなってしまっていた。


 そして、思う。


 セバスならば絶対に『マリアンヌを第二夫人にするように裏で動いていてもおかしくない』と……。


 恐らく俺に言った所で『ドゥーナがいるから第二夫人は必要ない』とバッサリ却下されると判断したのだろうし、実際そう聞かれたらそう返すのだが、だからこそセバスは将を射んとする者はまず馬を射よと言われるようにドゥーナから攻めていたのだろう。


 仕事が出来すぎる執事というのも考え物だな……。


 いや、まだマリアンヌが俺の第二夫人と決まった訳ではないのだから、これからしっかりと話し合えば良いだろう。それよりも今は模擬戦に集中する事が先決であろう。


 アイシャは腐ってもSSS級冒険者である事には変わりないので舐めてかかって万が一負けるような事が無いようにしなければ。


「準備はできたようですね……」

「あぁ。待たせたな、すまない」


 どうやら俺が模擬戦へと意識を切り替えるのをわざわざ待っていてくれていたみたいなので、ここは素直にアイシャへと謝罪する。


「いえ、お構いなく。ここで死ぬかもしれないと思ってしまったら怖気づいてしまう気持ちは分かりますので。それに、実際闘技場で私と相対いして『勝てない』と分かってしまったものの、あんな啖呵を吐いておいて自分の女に『やっぱり模擬戦やめるわ』と言えない肝の小さな腰抜けだという事も、ちゃんと理解できてますので」


 …………返せよ、俺の謝罪。


「…………」

「返事が無いという事はどうやら図星のようですが、ここで模擬戦をキャンセルしようとしても許可はしませんので、さっさと覚悟してください」


 そして尚も高圧的に煽ってくるアイシャに、ギルドマスターの顔色がどんどん悪くなって来ており、青から緑へ、そして現在は土色へと変化している。


 流石にこの状況は俺の精神的にも、そしてギルドマスターの精神的及び胃にも悪いのでさっさと模擬戦を始めるとするか。


「おいギルドマスター……」

「は、はいっ!!」

「流石に我慢の限界だからさっさと模擬戦をはじめるぞ。模擬戦開始の宣言をしろ」

「か、かしこまりましたっ!! それでは両者中央へ…………模擬戦開始っ!!」


 そして俺は今回模擬戦の審判兼見届け人として参加するギルドマスターへさっさと模擬戦を開始するように命令し、その命令を聞いたギルドマスターが片手でお腹を押さえながらも別の片手を上げて模擬戦を宣言する。


「まったく、D級冒険者にここまで言われて注意するどころか言いなりになるギルドマスターなど辞めてしまえば良いと思うわ。この模擬戦が終わったら次はギルドマスターへその事も含めて文句を言わなければならないわね……」


 そんなギルドマスターの姿を見てアイシャはため息を吐きながらそんな事を呟く。


「なので、アナタには悪いけれどもこんな茶番はさっさと終わらせないといけなくなったわ」


 そう言いながらアイシャは面倒事が増えて怠そうな表情をしながらストレージから愛用の魔剣を取り出す。


 その魔剣は、ゲームで何度も見てきたアイシャの愛剣であり、その剣を見ただけで俺のファン心が激しく脈打つ。


 正直なところこんな決闘とかいうくだらない茶番なんかよりも、このアイシャの愛剣を三時間ほど眺めたり触ったりして堪能したいところである。


「良い剣だな……」

「あら、一応貴方は見る目だけはあるようですね。しかしながら相手の強さまでは正確に測る事ができる目を持てるくらいには修行が足りなかったようですが、今日私がその身体に『自分の力で周囲が見えなくなり、過信した結果』というやつを叩きこんであげますので感謝してほしいわね」

「そりゃどうも」


 なら、そんな無駄口を叩く前に俺を潰せば良いだろうとは思うものの口にしない。


 結局こういう奴は、それを言った所で聞きやしないし、こういう無防備な所を狙って倒したところで後から卑怯だなんだといちゃもんつけるというのは火を見るよりも明らかだろう。


 正直それでは勝ててもストレスが溜まり、決闘をした意味も無ければ勝った意味もなく、例え彼女をパーティーに入れて行動したとしても道中のストレスは半端ない事になるだろう。


 であれば、真正面からアイシャをぶっ潰し、ゲーム同様に彼女のプライドを粉々に砕く方法が一番俺の精神上安定した未来を過ごす事ができるだろう。


 しかしながらゲームではアイシャのプライドを粉々に砕く役目がブラックスライムである為、どうせならゲームと同じようにブラックスライムにプライドを粉々に砕かれてから会いたかったと思ってしまう。


「良いでしょう。この剣の価値を少なからず理解している貴方には特別にこの剣だけが持つ特殊スキルで倒して差し上げましょう」


 俺が運命によって損な立ち回りを押し付けられている現状に嘆いていると、アイシャはそんな俺に気付くことなくノリノリで愛剣の能力を披露してくれると言うではないか。


 そして、闘技場の温度が明らかに、急激に下がって来ているのが分かる。


「あら、ここまで温度を下げても平気そうですね。ですがやせ我慢は身体に悪いと思いますが?」

「いや、自分の魔力で周囲の温度を快適な温度で固定しているだけだ」

「まぁ、そういう事にしといてあげましょう」

「あのさ、無駄話は良いからさっさとかかって来いよ。三下」

「…………あ?」


 しかしながら喋るばかりで一向に攻撃してくる気配がないので流石に待つのも飽きてきた俺はアイシャを軽く煽ってやると、見て分かる位かアイシャの顔が真っ赤に染まり、小刻みに震えだすではないか。


 ここまで読んでいただきありがとうございます!!




 今現在、別作品にて


【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】


https://ncode.syosetu.com/n5038jr/




 を連載中でございます!




 もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ

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