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魔王化


「それで、マリアンヌがわざわざ俺の元を訪れた理由を教えてくれないか? ただ飯を食いに来た事が理由じゃないんだろう?」


 そして、使用人が料理を運んでくる間に話の本題をマリアンヌに投げかける。


「あ、当たり前ですわっ!! …………とは強く言えない今のわたくしが情けないですわね……。わたくしが来た理由なのですけれども、ダニエルの身に起きた事と変化を聞いて欲しいんですの。わたくしは一応勘当される前に一度両親に対してダニエルの身に起こった異変を話してみたのですけれども『お前に男を見る目が無かっただけだろう。お前と違ってルーカスに乗り換えたドゥーナと違ってなっ!!』と怒鳴り散らして会話になりませんでしたわ……」


 そしてマリアンヌはぽつりぽつりと俺が学園でダニエルを倒した時からの出来事を話してくれる。


 その内容は、要約すると──


●謎の老婆からダニエルは魔剣を譲ってもらったとの事。

●その魔剣を手にしてからダニエルは今まで隠していた本性を隠す事をしなくなった。

●それだけではなく、日に日にダニエルは魔物を殺したがるようになっていった事。

●最終的にマリアンヌや学友に対して暴行をし、その後姿をくらましていた事。

●そしてダニエルは魔族を殺すだけではなく、帝国のスラム街に住む者達までも殺すようになっていた事。

●しかしダニエルは、性格だけは難があったとはいえあそこまで酷いものではなかった事。

●そもそも平民上がり故によく『スラム街に住む者達にも暮らしやすい世の中にする事』だと夢を語っていた事。

●そんなダニエルが、いくら性格に難があると言えども魔族は勿論のことスラム街に住む者達までも殺す事は考えられない事。


──という事らしい。


 女性の話は長いというが、マリアンヌがこれを全て説明し終えるのに、卵雑炊を食べながらとはいえ二時間以上はかかった。


 ちなみに話が長くなった理由は、マリアンヌの身に降りかかった身の上話が八割を占めていたからである。


 その身の上話は両親から勘当された事や、好意を信じたら襲われそうになったこと、何も考えずに持ち金を使って生活していたら一か月も持たなかった事、その為働こうと思い行動に移すのだがどこも使えないと罵倒されて三日として続かなかった事などなど、基本的にはどうでも良い事で占められていたので、最終的に俺が『マリアンヌが伝えたかった重要な点だけ』を箇条書きで紙に纏めておいた感じである。


 道中の苦労話は今夜ドゥーナにでも話してスッキリしてもらえば良いだろう


 そして、マリアンヌが俺に教えてくれたこれらの情報でダニエルが何故このような事になってしまっているのか分かってしまった。


 何故その事にまで理解が及ばなかったのか……。


 そもそも前世俺がハマっていたRPGゲーム『暁の夜明け』のラスボスである魔王であるのだが、魔族側で魔剣を老婆から譲り受けた一人の魔族の男性であった。


 この魔族は、幼い頃から学校では同年代からいじめを受け、家に帰れば両親から暴力を振るわれ十歳になった頃に捨てられスラム街で生きていた。


 そしていつしか自分の生い立ちの怒りを両親やいじめた奴らではなくこの世界そのものを恨むようになった。


 そんな時に彼は謎の老婆から魔剣を受け取ったのである。


 初めこそ彼はその魔剣で他人を殺そう等とは思っておらず、けれど男性にとっては初めて手にした『力』でもあった。


 ただそれだけで男性の精神は安定し始めたのだが、そんな男性の持つ魔剣を奪おうとした不届き者に対して自身の身を守る為にも男性は魔剣を抜き不届き者を魔剣で切り殺してしまった。


 この瞬間から男性の精神は魔剣に蝕まれはじめ、魔族の王を殺せるまで力を付け、魔族側の国を崩壊させて混沌へと落とし込み、それが人間側へと浸食しはじめていた。


 これが『暁の夜明け』の大まかなプロローグである。


 そして、その後は主人公がその男性を倒すために旅をし、その道中で様々な経験をする事で幼かった精神が成熟していき、最終的に魔王となった男性を倒して世界に平和が訪れヒロイン一人を娶りハッピーエンドか、二人とも娶りハーレムエンドか、ヒロインとくっ付かずにバッドエンドか、いずれかの結末を迎えるという内容であった。


 その魔剣が何故かダニエルに渡っており、今現在魔族や人族関係なく殺し始めている所を見るにもう救えない所まで来てしまっていると見て良いだろう……。


 これは恐らく俺がストーリー的に修復できない程のフラグを何本か折ってしまった結果なのだろう。


 本来であれば俺は悪役として主人公に立ちはだかる壁となり、主人公の精神を成熟する一つの試練であったはずであるし、ヒロインの一人であったはずのドゥーナは俺の嫁になっている。


 それだけではなく俺の手によって学園長を処罰し、ギルドを脅し、タリム領を冒険者メインで繁栄させる事によってドゥーナの実家も俺のせいでゲームとは違う動きをし始めており、本来であれば主人公が超えるべき壁が、そのせいで何個か消えてしまったのだろう。


 その結果歪んでしまった展開の帳尻合わせが『ダニエルの魔王化』だったのであろう。


 そして俺は今の状態に引っかかるところがあったので、もう少しだけ思考を深く巡らせる。


「いやいや……そんなまさか……」


 しかしながら、できればこの展開は外れて欲しいとは思うもののどの角度で見てもそうとしか思えないのである。


「どうしたんだ? 旦那様」

「あぁ、すまん。少し考え事をしていてな。大丈夫だ、問題ない」

「それならばいいのだが……」


 そして、俺の頭の中で描いた仮説を認めたくなくて現実逃避していると、そんな俺を見てドゥーナが心配そうに声をかけてくれるので問題ないと返しておく。


 しかしながら俺は、自分がたどり着いた答えに、背中が汗をかいて止まらないわけで。


「し、しかし顔色が悪いですわよ? あれでしたらわたくしが回復魔術を施してあげましてよ? これでも、腐っても聖女と呼ばれた実力は健在でしてよ?」

「マリアンヌもありがとう、その気持ちだけ受け取っておくよ。本当に大丈夫だから」

「そ、そうですの……。無理だけはしないでくださいましね?」


 そんな俺の顔はやはり悪いようで、ドゥーナに続きマリアンヌが心配して回復魔術を行使してくれると言うのだが、体調が悪いのではなく精神的な事なので意味が無い為感謝の言葉を述べつつも断る。


 そもそも、何故ドゥーナが俺のところに嫁ぎに来た事に対して疑問に思わなかったのか。


 恐らく、シナリオという物があるのであればこの時点で変更していたのであろう。


 ヒロイン候補の一人であるドゥーナを娶るのはゲームの主人公、言い方を変えるのであれば魔王を倒す駒であると考えれば、同じくヒロイン候補であるマリアンヌが俺の所まで押しかけて来るのは辻褄が合う。


 そして、殺され役が主人公へと裏返ったのだとしたら、元主人公であったダニエルに死亡フラグが立った。


 だからこそダニエルに魔剣が渡り、魔王という駒に堕ちたという事なのだろうが、だからと言って俺の死亡フラグが全て消えて無くなった訳でもないだろう。


 故に、俺がダニエルを討伐するのは正に命がけであると言える訳で……。


 一言で言い表すのであれば『面倒くさい』という事である。


「なぁドゥーナ、そしてマリアンヌ」

「何だ? 改まって……」

「あら? わたくしを妾にしたいとでも申しますのかしら?」

「いや、それは無い」

「なっ……!!」


 とりあえずマリアンヌが煩いので黙るように指摘して仕切りなおす。


「お前たち二人はダニエルの事を救いたいか? この場合は魔剣から救う事でありダニエル本人がやらかした悪行に関しては別問題なのだが……」


 ここまで読んでいただきありがとうございます!!




 今現在、別作品にて


【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】


https://ncode.syosetu.com/n5038jr/




 を連載中でございます!




 もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ

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