責任は取ってもらわねぇとな
そしてダニエルの雰囲気が急に変わるとわたくしを犯すと言うではないか。
「そ、そんな事をしてただで済むと思っているのかしら……っ」
「だからここにいる目撃者全員殺すんだろう? 証拠が無ければいくらでも言い訳できるからな。それこそ、このクマ型の魔獣に殺されたとかな」
「…………最低っ!」
そしてわたくしは流石に相手にできないと、下山しようとした瞬間、わたくしの頬を石の礫が掠り、擦り切れた頬から血が滲み出るではないか。
どうやらダニエルが土魔術をわたくしに向かって行使していたようである。
「誰が帰って良いと言った?」
「ダニエル、流石にやり過ぎだっ!!」
「いくら何でも仲間に攻撃するのは違反行為だぞっ!!」
「お、落ち着いてくださいっ!!」
流石にダニエルの先ほどの行動は他のパーティーメンバーも看過できなかったのか、三人がわたくしを守るように前でダニエルと向かい合う。
「…………いいねぇ。わざわざ俺の手間を省く為に一か所に集まってくれて、すまないなぁっ!!」
「それでも四対一ですわっ!! むしろダニエルの方が不利なのではなくてっ?」
「あ? 雑魚が調子乗ってんじゃねぇぞ?」
そして、こちらは四人に対してダニエルは一人なのでいくらダニエルが強いからといってこちらが不利になる事は無いだろう。
そう思っていたのだが、次の瞬間にはわたくしの意識は途切れ、意識を取り戻した時にはダニエルの姿は無かった。
「それで、ダニエルさんの姿がなかったと……」
「は、はい……」
わたくしは今、後からやって来た学園の学生に助けを求め、何とか下山し、現在保健室のベッドで安静にしつつ担任の先生へ何があったか説明をしていた。
ちなみにわたくしの身体が弄ばれてはいなかったようで、その点に関しては一安心である。
「なるほど、一応この件に関しては他の教員で情報を共有しておくとして、学園長も居なくなってしまったのでどこまでフォローできるか分からないのですが……」
「いえ、そう言っていただけるだけでわたくしとしては有り難いですわ。ですが流石にこんな事になってしまっては、実家の方が一度帰って来いとうるさいので、一度休学するかもしれません」
恐らくダニエルはルーカスを倒せる程の力を得る為に姿をくらましてしまったのだろう。
わたくしがその要因の一つだと思うと少しばかり心苦しく思うのであった。
◆
帝都内のとある居酒屋の地下で犯罪集団のリーダーをしている俺は、部下が持って来ていたシノギの金額の低さに苛立っていた。
「おい、これぐらいしかないのかよ?」
「すみません、すみませんっ!」
「お前、才能ないな。も良いよ」
そう言うと俺は部下の首を切り落とす。
使えない者を生かしておく必要は無いだろう。
そもそも、ここ最近とある賊狩りが現れたせいで俺はただでさえ苛立っているというのに、一般人相手に舐められてシノギの足元見られていつもより回収率が悪かったなど、何でそれで許してもらえるのかとおもったのか。
馬鹿は死んでも治らないと言うのならば俺が殺してその死体を有効活用してった方がまだ有意義だろう。
人間の死体は人間の死体でまだ活用方法は色々とあるからな。
「良いかお前ら? 俺たちの仕事は舐められたら終わりなんだよ。 次は相手がシノギの値段を下げようと交渉してきた場合、相手が提示した金額を支払う前に俺に相談しにこい。 そしたらそいつに自分がやっている事がどういう事かその身に教えてやるよ」
そして俺は周囲で委縮している者達に視線を向けて話す。
そもそも俺を無視してシノギの値段を減らすとか横領されている可能性も考えられるため許すはずが無いだろうが。
「ったく、無駄な事をしやがって。今からこいつが回収し損ねた分のシノギを回収しに行くから、ここは誰も来ないように見張っておけよ」
しかしながら『今回上手く行ったから次からはもっと値段を下げてやるか』等と相手に思われてはこの商売では流石に稼げなくなってしまう可能性があるのでここは一つ相手に分からせる必要があるだろう。
そして俺は数人の部下を引き連れて、バカが取り損ねた差額分を回収しに、このバカがシノギを回収しに行った教会へと向かう。
この教会は金を持っている癖に賊を狩る者が現れてからは少しずつ態度が大きくなっていっていたのだが、流石にここまでコケにされて黙っていられるほど俺は優しくはない。
それにしても、そもそもこの糞みたいな状況を作った、タリム領の領主にはいつか仕返しをしなければと思っている。
そもそもタリム領の領主が、何故かここ最近帝国、特に帝都の治安維持に力を入れるのではないかという噂が出回っているのが全ての原因であるのだからそれが嘘かどうか関係なく、俺たちに不利益を被らせた責任は取ってもらわねぇとな。
噂ではS級の冒険者や学園長を倒したというのも耳に入ってくるのだが、S級のアイテムを複数所持している俺の敵ではないだろう。
そして俺はその決行日と作戦内容を頭で練り始めつつ教会のシスターであるババァを蹴り飛ばし、隠し持っていた金銭を回収するのであった。
◆
「始めはどうなるものかと思っていたのだが、なんとか軌道に乗れたみたいで一安心だな」
「いや、本当にそうだよな……まさかここまで全て上手くとは思わなかったな……。それもこれもドゥーナのお陰でもある」
私がそう言うと旦那様が私の頭を撫でながら私のお陰でもあると言ってくれるではないか。
その事が嬉しくて私の尻尾がブンブンと左右に揺れる。
「それで実家から抗議の手紙が来ているのだがどうする? 旦那様」
「あぁ、それに関しては無視して良い。何かあれば俺が跳ね返すしちゃんと帝国側と冒険者ギルド側からも抗議の連絡をさせてもらうつもりだ。あと流石に鬱陶しい場合は直接乗り込んでぶん殴るつもりだから気にするな」
そして、それとは別に私の実家からの手紙について相談してみたのだが、こちらからは無視、代わりに帝国側と冒険者ギルドから抗議を入れてもらうと返事をしてくれる。
しかも、それでも直らないのであれば直接殴って抗議してくれるというではないか。
普通であれば自分の親を殴ると言われたらいやな気分になるのだが、私の場合は親に裏切られた上でゴミ箱に捨てるように旦那様の所に嫁がされた身で言わせてもらえば、かなり嬉しいと思うし、もっとやってやれとすら思ってしまう。
「しかし……せっかくのデートなのにこんな色気の無い話ですまない……。わ、私は昔から女っ気が無くてな……。可愛くないだろ? こんな女……」
しかしながらデート中にこんな色気の無いような事を言ってしまう私なんか、いつか旦那様に見捨てられるのではないか? と、旦那様とデートする度に思ってしまう。
少し前にデートした時なんか、タリム領の冒険者ギルドに登録している冒険者と模擬戦をしてみたいと言って、デートそっちのけで模擬戦をしてしまう始末である。
そして毎回デートから帰って来ては家で反省するという事を繰り返すのだが、結局こうやってデートとまったく関係ない事を話したり、首を突っ込んだりするのだから泣きたくなる。
「いや、それ込みでドゥーナの良いところだし、可愛いところでもあると俺は思うが?」
「だ、旦那様……っ!!」
さらに言うと、私がこう言うと旦那様が『そんなことは無い。ドゥーナは可愛い』と慰めてくれる事に味を占め始めている自分がおり、わざとそういう行為をしそうになるのだから救えない。
「とりあえず、俺もドゥーナのように美人な女性を連れてデートとかは未だに慣れないからな、その点に関してはお互い様だろう」
ここまで読んでいただきありがとうございます!!
今現在、別作品にて
【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】
https://ncode.syosetu.com/n5038jr/
を連載中でございます!
もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ




