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ここまで酷い有様とは

「あぁ、分かった……恥ずかしいから、一回だけだぞ? ドゥーナは俺の妻だ……っ」


 それは胸の事やら素数の事やら頭の中から消えてしまう程恥ずかしいと思ってしまうのだが、俺の為にダニエルに怒ってくれた妻の為に俺は恥ずかしさを我慢しながら今一度『ドゥーナは俺の妻だ』と言ってあげる。


 これでドゥーナが喜んでくれるのであれば安いモノだろう。


 恐らくドゥーナは片足を失ってから、自分を必要としてくれる誰かを強く欲しているのだろう。


 それが例え、忌み嫌っている俺という存在であろうとも、そしてそんな相手から妻だと言われる事だったとしても。


 なので今はある意味でドゥーナを精神的にサポートしていき、マイナスまで下がってしまっているであろう自己肯定感をプラスに持って行くことができればと、俺は思うし、俺が少しばかり恥ずかしい思いをするだけでドゥーナの自己肯定感がプラスになるのであれば安いものであろう。


 そんな事を思いながら学園の敷地内の駐車場に停めていた馬車に乗り込もうとしたその時、何故か馬車で俺たちを待ってくれていたセバスから『まさかここまで酷い有様とは……。唐変木という言葉ですら生温いですねぇ……』という視線を俺へ向けてくるではないか。


 いや、もしかしたら俺の勘違い、思い過ごしかもしれないのだが、あの目はどう見てもそう言っているとしか思えないのだが?


 そもそも前世では数多の女性(大人の恋愛ゲームに出てくるヒロインたち)を攻略してきたこの俺に対して、そのような視線は流石に失礼ではなかろうか?


 しかしながらそれを言った所で理解してくれるとも思えないので、俺は言い訳も否定もすることなく馬車の中へと入り、先に入っていたドゥーナの隣に座る。


「それで、何故これからギルドへ向かうのか教えて貰っても良いか? 勿論話せない内容であるのならば話さなくても良いのだが、私たちは旦那様と妻で呼び合う仲なのだから私も少しくらいは旦那様の役に立てる事ができるようにこれからは様々な事を知っておきたのだ……っ」


 そしてドゥーナはやる気満々といった表情でそう聞いてくるのだが、どうしようか。お互いの呼び方については一応突っ込んだ方が良いのだろうか?


「そうだな、ギルドへは学園へ融資していた全額を取り立ててもらうよう依頼をしに行く予定だ。こういうのは早ければ早い程良いと思うし、自分でやる時間も無ければ、ギルドという他国にも繋がっている巨大組織であればまず取りっぱぐれる事も無いだろうしな……」


 そもそも俺が取り立てたところであの学園長は首を縦に振らないどころか噛みついてくるだろう事が容易に想像できる。


 ギルドに依頼した場合は、回収した金額から成功報酬として一割ほどを支払わなければならないのだが、そんな面倒くさい事をする必要がなくなるのならば俺は喜んでそのくらいの金額は支払う事を選ぶ。


 ちなみに、回収する役員たちの報酬など考えればギルド側は赤字(今回の件では黒字だが低い金額までと考えると赤字)なのだが、支払いができない者へ前世から見たら闇金レベルの利息を付けて貸し出す為むしろこっちの方がメインの収入となり、結果黒字となるえぐいからくりがある。


 利息で借金が膨れ上がる状態であれば、まだ月々の支払額が増えず一定額払えば何も文句を言われないリボ払いの方がマシだと思えるくらいの利息なので、間違いなく借金をするであろう学園がどうやってこれから返して行くのか少しだけ楽しみである。


 まぁどうせ他の貴族から融資とか言って回収しようとするのだろうが、ランゲージ家が今まで融資していた金額プラス利息分と、更にギルドから借りた事によってできた利息分を支払える貴族はまずいないだろう。


 それこそ帝国に泣きつくくらいしか無いとは思うのだが、帝国がそれを許すとは思わないので近い将来学園が経営難で最悪閉校してしまう未来が見える。


 それこそ今回俺は自分の感情を抑える事ができずにダニエルへ攻撃してしまった為、それが死亡フラグになりかねないので、どうせならばいっそのこと本当に潰れてしまえば俺の死亡フラグも一緒に消えて無くなれば良いのに……。


 なんて事を思ってしまうのであった。





 よくもこの儂をコケにしおってからに……。


許せる訳がない。


 儂の半分も生きていない若造にバカにされて引き下がる等ありえない。


「どうしてくれようか……。若造が調子にのりやがって……っ」

 

 学園長である儂に喧嘩を売ると言う事がどういう事か思い知らせてやろう。


 そして儂はとある冒険者を学園まで呼び付ける。


「お久しぶりです、学園長」


 その冒険者はオリバー・レイ・アニストンであり、冒険者のランクはS級である。


 オリバーなのだが、丁度帝都にいたらしく数時間で儂の元へと来てくれる。


「おぉ、久しぶりじゃのオリバー。 お主を呼んだのは他でもない、お主に頼みたい事が一つあっての?」

「別に良いですけど、理由を聞いても良いですかね? 学園長の頼みならばできるだけ断りたくはないんですけど、これでも冒険者を生業としておりますので、ギルドの禁止事項などで難しいのかな? と」

「おぉ、それならば大丈夫じゃ。ちょっと痛い目を見せて欲しい者が居ての、かくかくしかじかで調子にのっている小僧に痛い目を見せてあげて欲しくてな……」


 そしてオリバーは、内容次第では儂の頼みを聞いてくれると言うので今までの経緯をオリバーへ説明した上でルーカスにお灸を据えて欲しいというのを話す。


「なるほど……一応噂だけはルーカスについて聞いた事はあるのですが、まさかあのルーカスがねぇ……。噂では実力が無いくせに学年一位のダニエル君に噛みついてはボコボコにされている面倒くさく自己中心的な男性と思っていたんですが、まさかそんな男にあのフォング家であるドゥーナ君に慕われているとは……。金で半ば無理やり娶ったというのもあり、ドゥーナ君はルーカスの事を心の底から嫌っているものとばかり思ったんですがね……」


 やはりこやつも、ドゥーナがルーカスを慕っている事に疑問を感じてしまうのだろう。


 しかしながら儂からすればそんな事はどうでも良いし、大事なのはあいつら二人がこの儂に何をしたかという事実の方が重要である。

 

「それは儂もそう思っておったんじゃ。 だからこそ儂はドゥーナの一撃に反応が遅れてしまったんじゃよ……。一体どうやってあのドゥーナを懐かせる事ができたのか不思議でならないんだが、とにかくルーカスさえ生きるのが辛くなるような地獄を味合わせる事ができれば後は何をしたって構わない。それこそ、まぁそういう訳でどういった経緯かはしらないのじゃが儂の顔を殴ったドゥーナに関しても、ルーカスに地獄を味合わせた後ならば何をしてもかまわない。ただ、ルーカスを殺すのはこの儂じゃ。瀕死の状態でかまぬか儂の前にもってこい」

「まったく、貴族をボコって攫ってくるのですから報酬はがっつりいただきますよ」

「分かっておるっ! そもそもあいつが融資していた分を利子込みで耳を揃えて返せなどと言ったせいで大変な事になってるんじゃ。無視して突っぱねてやろうかとも思っていたのじゃが、あいつは腹立つことにギルドに融資返還を依頼してきたのじゃ。まぁでもそのお陰でギルドにお金を借りて返す事ができたのじゃが、これは言い換えると今ランゲージ家には学園がギルドを通して返還した多額のお金があるという事じゃ……。ならばアイツをボコってその金もついでに返して貰えばよい」


 そもそもいくら融資とはいえ貴族が金を返せとほざく方がどうかしている。


 他貴族に『あそこの家は近々没落するかもしれない』と思われてしまいかねないし、そうなっては周囲から貴族や商人たちが離れていき本当に没落する可能性があるというのに、これだからバカは困る。


 




 ここまで読んでいただきありがとうございます!!




 今現在、別作品にて


【婚約破棄された公爵令嬢は罰として嫁がされたのだが、旦那様のお陰で日本(地球)の食べ物に舌鼓を打てて今日も幸せです】


https://ncode.syosetu.com/n5038jr/




 を連載中でございます!




 もしよければこちらも読んでいただけると幸いでございます(*‘ω‘ *)ノ

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― 新着の感想 ―
つまり主人公はルーカスのことが、態度を改めようと実力を上げようと反省してようと前向きに頑張ろうと、過去の態度と根本的な性根を信用出来ず、忌み嫌って信じられず関わりたくないぐらい嫌いだと。 だからそんな…
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