01、こんなとこ、出てってやる!
「死ぬのが怖くて何が悪い!」
声を荒げる少女に、老人は困ったような呆れたような目を向ける。
「タオよ、何度言ったら分かるのだ。生への執着を捨てよ。生も死も斉しくただそこにあるに過ぎぬのだ」
また始まったよ。
師匠はその死生観で死んで、その後に神格化されて神仙になったからね。
そりゃあ、死もへっちゃらでしょうよ。
でも、ボクは違うから!
こちとら生きたまま修行して、やっと昇仙できたってのに。
これで死んだら意味ないじゃん。
なんの為に苦労したんだって話だよ。
大体、仙人になる奴なんてさぁ、ほとんどが不老不死目的でしょ?
つまり、死にたくないからじゃん!
それで死を怖れるなって、完全に矛盾してるよねぇ……。
ああ、もういい!
こんなとこ、出てってやる!
ひとしきり説教して満足した師匠がその場を立ち去るのを確認すると、タオは屋敷に転がる自作の宝貝を適当に自分の巾着に詰め込んで、鏡のように澄み切った庭の池に飛び込んで姿を消した。
『やれやれ、まぁ、可愛い子には旅をさせよというしな。俗世の濁りを知るのも悪くあるまい』
彼方の空より池に飛び込む弟子の様子を眺めていた南華老仙は、深いため息と共にそう呟くと、タオが消えて無人となった屋敷へと一人戻っていった。




