ドワーフは街に戻る
俺はリーゼを連れて〈メルトビリー〉の街に戻るのだった。
あの街に戻ることになるとは思わなかったが、例の呪いの洞窟はメルトビリーが一番近いのだ。
嫌な思い出はあるが、今はリーゼの願いを叶えるのが先だろう。
街への道を行く、俺たち二人。リーゼが口を開いた。
「そういえばドワーフ様も冒険者なのですか?」
「俺か、実は正確に言えば違うんだ。でも同じようなことをしていたから、多分冒険者にもなれると思う」
「同じようなこと? いったいどのような」
「そうだな、リーゼのことも教えてもらったし俺のことも話さないとな。なあリーゼは〈勇者パーティー〉って知ってるか?」
「あっ知っています! とても強いパーティーがいて、最近魔王の幹部をどんどん倒しているとか」
「俺はそこで荷物持ちをしていたんだ。だから冒険者じゃないけど似たようなものさ」
「……!! やっぱりドワーフ様はすごいパーティーで活躍されていたんですね! 驚きました!」
勇者パーティーは〈神託の予言〉で選ばれた五人の集まりで、冒険者として登録されているわけではない。
だがモンスターや魔族と戦ってあちこち旅するのは、依頼を受けて行う冒険者と変わりない。
だから俺もギルドで冒険者として登録すれば、例の呪いの洞窟に行くことも出来るはずなのだ。
問題は俺たちだけでどこまで戦えるかというところだが……
「そういえばドワーフ様は勇者パーティーなのに、今日はお一人なのですか?」
「ああそれなんだが、実は昨日パーティーから追い出されてしまってね。俺みたいな役立たずはどうやらパーティーに要らないらしいんだ」
「なっ……! ド、ドワーフ様を追放!?」
「ど、どうしたんだリーゼ。俺、何か変なことを?」
「それはそうです! だ、だってドワーフ様はこんなにも強くてお優しいのにそれを役立たずだなんて。私、その人たちのこと許せません!」
「ははは。ありがとうリーゼ。でもいいんだ、なんだか俺、パーティーの皆に嫌われているみたいだからさ。まあ仕方ないよ、俺はドワーフだからみんなと見た目が違うんだ。俺は醜いから傍にいない方がきっとお互いのためなのさ」
「そ、そんなことありません! ドワーフ様はとても男らしくて素敵な方です。その人たちが魅力に気づいていないんですよ」
「そうなのか? まあ、だといいんだが」
「えへへそうですよ。ドワーフ様はとても素敵な方です。きっとたくさんの人がドワーフ様を好きになります。でも、もしまわりが気づかないならドワーフ様はリーゼだけのものです」
俺にむぎゅうとくっつくリーゼ。
どうしてか、彼女が傍にいてくれると俺はなんだか心地が良かった。
「おいおいリーゼ。そんなにくっつかれたら歩きづらいぞ」
彼女がなんだか視線でねだって来るので、たまらず俺は彼女の髪を撫でてやった。
リーゼは顔を赤くして俺のそばに身を寄せるのだった。
「うふふドワーフ様、リーゼは今とても幸せです。私の心は貴方の物です。ずっとお傍におりますよ」
パーティーを追放されたのはショックだけど、彼女のような優しい子を助けられたのなら、それは悪くなかったのかもな。世の中なにがあるかわからないものだなあ。
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