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冒険者ランク


 冒険者ギルドで絡んで来た二人組を撃退した俺は、改めて冒険者の登録をしようとしているところだった。


「ふう。変な奴らに絡まれたがなんとかなったな」


 リーゼは先ほどからずっと、身をかがめて俺の(ひげ)の中にその顔を埋めている。

 そして何度もその中で深呼吸を繰り返しているのだった。


「すーはー」


「……? どうしたんだリーゼ」


「いえ、あの男たちがなんだか嫌な臭いだったので……こうやって、ドゥリンで身体の中の空気をリフレッシュしているのです」


「はあ。よくわからないが、まあ俺はかまわないよ」


「ありがとうドゥリン。はぅっこれすごいのです。うっ……! ふう……。」


 やれやれリーゼはどうしたのだろう。

 彼女は気持ちよさそうに身体を小刻みに震わせていた。


 俺は受付嬢に向き直って話しかける。


「さて……受付嬢さん、改めて冒険者として登録したいんですが」


「は、はい。すみませんドゥリン様、この度はご迷惑をおかけしました」


「ははは、構いませんよ。しかしあいつらは何だったんです? 本当に試験官だったんですか?」


「いえ、彼らは素行の悪い冒険者たちで、勝手に紹介料と称して金品を奪ったり、初心者の冒険者に難癖をつけて暴力を振るったりと、とても迷惑な連中だったのです。しかし二人ともかなりの実力者だったのでこちらから強くも言えず……。今度のことで彼らもおとなしくなるでしょう。ドゥリン様、本当に助かりました、ありがとうございます!」


「そうだったんですか、それは迷惑な連中ですね。まあ役に立てたならよかったです」


「しかしドゥリン様の先ほどの動きは、速すぎてまったく見えませんでした。ドゥリン様は、さぞ高レベルの武闘家なのでは?」


「いえ、彼らの言った通りです。俺はただの〈荷物持ち〉ですよ」


「う、嘘っ!? 荷物持ちのクラスで戦闘職の二人を圧倒できるなんて……すごい、驚きました!」


「そうなんですか? いや、まったく大したことはしていないと思うんですがね」


「そんな。あれだけの実力がありながらなんて謙虚なお方……ぽっ……」


「おっと受付嬢さん、どうしました? なんだか顔が赤いですが?」


「あっ……すみません私ったら。こほん。で、では改めてギルドの説明をいたしますね」


 受付嬢は姿勢を直してギルドの説明を始めるのだった。


「……冒険者ギルドではその人の実績に応じて〈冒険者ランク〉というものが定められています」


「〈冒険者ランク〉、ですか」


「はい。ランクに応じて受けられる依頼や報酬の額が変わってきます。あと高レベルのモンスターが出現する地域には、一定以上のランクが無いと入ることが許可されない場所もありますね」


「へえ、少しうわさで聞いたことはあったけど、そういう仕組みだったんですね」


「冒険者ランクは下から〈F〉〈E〉〈C〉〈B〉〈A〉、その上に〈S〉〈SS〉、そして〈SSS〉ランクがありますよ」


「じゃあ冒険者の最高位がSSSランクって事ですね」


「あはは、まあ事実上はそうなりますね。……本当はSSSの上に、真の最高位――〈(ドワーフ)〉ランクもあるのですが、誰もそこまで上がったことはありません」


「Dランクか、へえ初めて聞いたなあ」


「私、ドゥリンなら、きっとなれそうな気がします!」


「あははっ! お二人とも、その意気です。冒険者なら夢は大きく、ですね!」


 笑顔で話す受付嬢。

 おっと、今のうちにあれを聞いておきたいな。


「そうだ受付嬢さん、実は俺たち〈呪いの洞窟〉というダンジョンの話を聞いて興味があるんです。どれくらいのランクがあれば行けそうですか?」


「呪いの洞窟ですか? うーんそうですね、あの洞窟があるのは〈絶望の山〉の麓ですからCランク以上なら立ち入りが許可されるでしょうね」


「Cランクか、結構上まで行く必要があるな……」


 あの二人組はBランクパーティーを名乗っていたが、さすがに彼らのハッタリだろう。

 Bランクといえば冒険者の中でもかなり上の方だと聞いたことがある。


 リーゼの話ではこうしている間にも森の危機は深刻になりつつあるらしい。

 早く〈浄化の水晶〉を持って行ってやりたいところだが……


 俺の様子から受付嬢は何かを察したのか、俺に続けて言ってきた。


「お二人とも、なにやら訳ありのようですね。もしすぐにでもCランクになりたいなら方法がないわけではないですよ」


「えっ? 本当ですか」


「はい。実は初めてギルドに登録した方は、ギルドが定期的に開いている〈適性試験〉を受けていただいているんです。その試験の結果次第で初期のランクがFか、Eか。あるいはCランクのどれかに割り振られることになっているんです」


「そうなんですね! じゃあそれでいい結果が出せれば……」


「ええ。ドゥリン様の言われた呪いの洞窟に、すぐに行っていただくことも可能ですね」


「そうか。じゃあリーゼ、適性試験を受けるとするか!」


「なんだか希望が湧いてきました。ドゥリン、頑張りましょうね!」


「次の適性試験は、ちょうど明日開かれます。内容は……ええっと、魔力の制御と行使に関するものですね……お二人は魔法を使われたことは?」


「そうですね、私はありますけど」


「お、俺は……」


 しまったな。俺は魔法など今まで使ったことないぞ。

 いきなり魔法などと言われても、どうすれば……


「受付嬢さん、俺は魔法を使ったことがないんです。それに俺はただの荷物持ちだから、練習しても多分使えないと思います。何か別の試験はないんですか?」


「うーんそうですねぇ。剣術を主とした試験もあるのですが、それだと開催は二週間後ですね」


「そうですか。二週間か……うーん」


「試験を受けなくても冒険者としての活動は可能ですが、その場合仮登録扱いになるのでランクはFランク扱いで固定になりますね」


「そうなのか。まいったな……」


 悩む俺。

 それを見て、隣に立つリーゼが笑顔で言った。


「大丈夫ですよ。ドゥリン、私が魔法の扱いを教えます。明日の試験を受けましょう?」


「しかし俺は魔法は初心者だぞ、明日までになんとかなるかな?」


「もちろん大丈夫ですよ。だってドゥリンはドワー……じゃなかった。ええっと、すごい人なのですから!」


「わかったよリーゼ。魔法か……よし、俺もやってみるとするか!」


「うふふっ私、魔法なら大得意です。一緒に頑張りましょう、ドゥリン」


 魔法か……そういえばエルフは魔力の扱いにとても長けた種族だという。

 リーゼに教われば、明日までになんとかなるだろうか。


 俺たちは試験への参加を決めてギルドを後にするのだった。



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