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冒険者ギルドへ


 捕まえた盗賊たちを衛兵に引き渡し、俺たちは冒険者ギルドへと向かった。

 人々の行き交う大通りにはいくつもの屋台が立ち並び、食べ物などを売っている。


 ギルドへの道中、リーゼはとても物珍しそうにあたりを見ていた。


「人間の里っていろんな物がありますね! なんだかとってもいい匂いがします」


「ああ、これはこの街名物のメルト焼きというらしい。鶏肉に蜂蜜をかけて照り焼きにしてるのさ」


「うわぁドゥリン、詳しいのですね」


「ああ、俺はパーティーの食事を担当していたからな。色々な料理にはつい興味が出てしまうんだ」


「へえ! ドゥリンはなんでもできるのですね! すごいです! 万能です!」


「やれやれリーゼは大袈裟だな。大したことないさ」


「ね、ねえドゥリン……その……」


「そうだなちょうど昼頃だし、食べていくか? 金も入ったことだし俺がおごるよ」


「わぁ! ドゥリン、ありがとう。私、楽しみです!」


 俺たちは屋台からの香りに誘われ〈メルト焼き〉を食べていくことにした。

 屋台では鉢巻をまいたおやじが鶏肉を火で炙っている。


「いらっしゃい! ご注文は?」


「メルト焼きを二つお願いします」


「はいよ。おや、お嬢ちゃんこの街は初めてかい?」


「はい。とっても色々なものがあるのですね!」


「ああ、活気があるだろう? 俺たちの自慢の街さ。……歓迎するよ、ようこそメルトビリーへ! お嬢ちゃん可愛いから一つサービスしちゃうよ」


「わあっありがとうございます!」


 俺たちは近くで適当な木陰を見つけ、その下でメルト焼きを食べた。

 甘辛いたれに、ジューシーな肉汁がたまらない逸品だ。


 隣でメルト焼きを頬張るリーゼは、初めての味に興奮しているようだった。


「はふはふ。私、人間に歓迎されちゃいました」


「ははっよかったよ。リーゼが街に馴染んでくれて」


「そうですね。いろんな物があるけどなんだか温かい感じがします。私、さっきまでは人間は怖いものだとだと思っていました。でもそうじゃないのかも、エルフでも人間でも一緒のところはあるって思いました」


「ああ。街にはいろんな奴がいるけどさ、でも悪い奴ばかりじゃない。俺もドワーフだけど、そう思うよ」


「……ドゥリンは皆を守るために勇者パーティーで頑張っていたのですか?」


「そうだな……まあ俺は追い出されてしまったからさ、それはもう仕方ないさ。魔王討伐は残った奴らに任せるよ。俺は、今はリーゼのことを助けたいって、そう思っているんだ」


「ドゥリン……ありがとう。ううっリーゼは嬉しいです」


 さて、食べ終わったらそろそろギルドへ向かうとしよう。

 例の洞窟に行くのにまずは冒険者の登録をしないとな。






 大通りの向こうにひときわ大きな建物が見えてきた。

 これが目的の場所だ。


「着いたな。これが冒険者ギルドか」


「大きな建物ですね。ドゥリンは来たことがあるのですか?」


「いや、この街のギルドは俺も初めてだな。よし、入るとするか」


 ギルドの扉をくぐる俺たち。

 建物の中には大勢の冒険者たち。皆、様々な装備をまとっているのが見えた。


「うわぁいろんな装備の冒険者たちがいますね」


「そうだな。はあ、俺もまともな戦闘向けのクラスだったらよかったんだが」


「もう。そんなクラスじゃなくてもドゥリンは十分強いですよ」


「そうなのか? まあ、だといいんだが」


 どうやらギルドの受付は建物の奥にあるらしい。

 俺はリーゼの手を引いてそちらへ向かう。


 俺たち二人を見る冒険者たちの視線、彼らの話す声が聞こえてくる。


「おい……見ろよあいつ。例の荷物持ちじゃないか?」

「えっ! 勇者パーティーを追放されたって噂の奴か」


 リーゼは不安そうに俺に身を寄せた。


「な、なんだか私たち見られているような。ドゥリンは有名人なのですか?」


「ああ。俺も昨日悪目立ちしてしまってね。はあ……さっさと登録を済ませたいところだな」


 ギルドの奥、受付のカウンターにはメイド服のような衣装に身を包んだ受付嬢がいた。

 俺は彼女の前に立ち、声をかける。


「失礼、俺たち冒険者になりたいんですが」


「冒険者の登録ですね。かしこまりました。ようこそ冒険者ギルドへ! ではまずこちらの書類に……」


 笑顔でほほえむ受付嬢。だがその時、別の大声が響いた。


「おい! ちょっと待ちな!!」


 俺たちの前にあらわれたのはいかつい顔をした目つきの悪い二人の男だった。

 彼らはいったい……?


「げっ! ゴドスさん!? ど、どうしたんですか?」


 受付嬢は嫌なものを見たような顔になってばつが悪そうにしていた。

 ゴドスと呼ばれた男は、受付嬢に詰め寄って大声を上げた。


「へへッどうもこうもねえ。知らないんですか受付嬢さん。この男はね昨日勇者パーティーから無能と追放された奴なんですよ? まさか、そんな奴が冒険者になるのを認めるわけじゃないですよね?」


「そ、そんな。冒険者になる権利は誰にだってあるはずです!」


「ふん、どうだか。おいお前ドゥリンとかいったか?」


「ああ。俺はドゥリンだが、君たちは?」


「俺はゴドス。Bランクパーティー〈トロルの咆哮〉のリーダーだ。後ろはパーティーメンバーのバリー。おいドゥリン、困るんだよな。俺たちのギルドで勝手な真似をしてもらってはね」


「ひひっ! そうそう。ギルドに登録するなら、ちゃんと紹介料を払って、俺たちを通してもらわないと!」


「な、なんだ君たちは? Bランクパーティー? 俺もやることがあるんでね。さっさと冒険者になりたいんだがそこをどいてもらえるか」


 なんだか態度の大きな奴らだな。声も大きいのでずいぶんやかましい。

 面倒なのに話しかけられたな……



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