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ドワーフは懸賞金をもらう


 俺の名前はドワーフのドゥリン。

 エルフの姫、リーゼを助けた俺は街道を歩き街へと向かった。


 行く先に高くそびえる城壁が見えてきた。


「見えてきたぞリーゼ、あれがメルトビリーの街だ」


「うわぁ高い壁です。ここが人間の街なのですね!」


 城門をくぐる俺たち。この街は魔王城に近いので警備も普通より厳重だ。

 だが、リーゼにかかった〈隠蔽〉の魔法はどうやらバレなかったらしい。


 まわりからは、彼女の耳は人間のそれと同じように見えているのだ。


「どきどき。なんだか緊張しますねドワーフ様」


「おっとそうだ。街に入るのに呼び方がそれだとまずい。リーゼ、俺のことは名前で呼んでくれ」


「わ、わかりました。ドゥリン様ですね」


「やれやれ、『様』もいらないよ。それじゃ変だろ」


「し、しかしドワーフ様を呼び捨てにするなど」


「俺がそう呼んで欲しいのさ。なあいいだろ?」


「わかりました。じゃあドゥリン、行きましょうか」


「ああ。さてまずは捕まえた盗賊たちを引き渡したいな。衛兵のところへ行こうか」


 俺たちは二人並んで街の大通りを歩いているところだ。

 隣を行くリーゼが恥じらいながら俺に言った。


「ね、ねえドゥリン。手を繋いでもいいですか?」


「えっ? ど、どうして?」


「その……迷わないためです。私、人間の街は初めてなので」


「そうか。それもそうだな。じゃあ、ほら?」


「わぁい! ありがとうございます! むぎゅ……」


 差し出した俺の手にリーゼが嬉しそうに抱き着いた。

 柔らかな感覚に俺の腕は包まれてしまう……


「おいおいリーゼ。なんだか当たっている気がするんだが」


「えへへ。だってこれぐらい近くにいないとなんだか不安なので。ドゥリン、これは必要なことなのです」


「そうか。それなら仕方ないか」


 俺はリーゼを連れて歩いているのだが……どうしてだろう?

 なぜかすれ違う街の男たちが全員こっちを見ている気がするな。


 みんないったいどうしたんだろう。

 彼らはざわざわと騒然となっていた。


「す、すげえ。なんだあの金髪のめちゃくちゃ可愛い子は!? あんな美少女見たことないぞ!」

「隣にいるヒゲの奴、まさかあの子の恋人か? お、おいおいどうなっているんだよ?」


 うーむ。まさか俺たちが人間ではないことが疑われてしまっているのだろうか。

 まいったな。あまり目立ちたくはなかったんだがなあ。


 そんなことを考えている内、俺たちは衛兵の詰め所に到着した。

 詰め所には鎧を着た衛兵たちが何人かいた。


「失礼、実は俺たち街の外で盗賊に襲われたんです。多分お尋ね者じゃないかと思い、連れてきたんですが」


「ほお、それはありがたい。そいつらはどこに?」


「はい、ここに入れてあります。〈アイテムボックス〉オープン!」


 ズオオオ……!


 俺が〈アイテムボックス〉を使うと、目の前の空中に漆黒の穴があらわれた。

 そこから捕まえた盗賊たちが次々と落ちてくる。


 衛兵はどうしたんだろう。彼はなぜかとても驚いた顔をしていた。


「なっ!? こいつらどこからあらわれたんだ!」


「ああ、俺の〈アイテムボックス〉からですが、どうしましたか?」


「アイテムボックス!? す、すごい……人間を入れられるなんて聞いたことがない!」


「そうなんですか? これぐらい〈荷物持ち〉なら普通ですよ」


「は、はあ。それにしてもこの盗賊たち、まさか」


 盗賊たちの顔を見た衛兵は、驚いた様子で目の色を変えた。


「おい、誰か衛兵隊長を呼んできてくれ!」


「ははっただちに!」


「……?」


 しばらくして駆けつけてきたのは銀色の甲冑に身を包んだ男だった。


「私が衛兵隊長だ。む! こ、こいつらは!?」


「えっなにか?」


「間違いない。こ、こいつら〈凶刃の盗賊団〉じゃないか!」


「や、やはり!」「す、すごい。大手柄だ!」


「ど、どうしたんですか皆さん。俺、なにかやってしまいましたか?」


「これはすごい! たしか〈凶刃の盗賊団〉は凄腕の剣士がいると聞いているぞ。ま、まさかあなたが倒したのですか?」


「そうですね。しかしあまりにも弱かったですよ。なにかの間違いでは?」


「いえ、この凶悪な顔つき。手配書の通りで間違いありません!」


「すごい! 我々も奴らには手を焼いていたのだ」


「感謝いたします旅のお方。どうかお名前を教えていただきたいのですが?」


「俺ですか? 俺はドゥリンです」


 やれやれ、どうしたのだろう。

 そんなに騒ぐほどの奴らだったのかな。まったく手ごたえがないと、そう思ったんだがなあ。


 俺の後ろからリーゼが顔を出し、嬉しそうに言った。


「ドゥリンは本当にすごいのですよ。襲われている私を助け、盗賊たちを一瞬で倒してしまったのです」


「おお、なんと勇気のある方だ! ドゥリン殿この街の衛兵を代表して感謝します」


 衛兵隊長はそう言うと兜を脱ぎ、大きくその頭を下げるのだった。


「大げさだなあ。俺はただの荷物持ちですよ」


「な、なんと荷物持ち!? まさか荷物持ちでこれだけ強い方がいるなんて……驚きました。いやぁ世界は広いですな。我らも修行が足りませんでした」


「は、はあ。そうですか」


「そうそう奴らには懸賞金がかけられていました。ぜひ受け取っていただきたい」


「えっいいんですか? ちょうど金に困っていたんです。ありがたいなあ」


「よかったですね、ドゥリン!」


「ああ、いいことはするものだなあ」


 衛兵たちから俺に金貨の入った袋が手渡される。

 おっと、俺が思ったよりもだいぶ多いな……


 実は俺は無一文だったので宿代などどうしたものかと考えていたのだった。

 だが思いもかけず大金をもらってしまったな。


 ありがたいけど、でもあんな貧弱な盗賊たちを捕まえたぐらいでなんだか申し訳ないくらいだな。

 せめてこれは大切に使わせてもらうとしようか。



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