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第63話中編 おじさん達は悪癖をなおせない


「こ、これは……? どういう原理ですの?」


一方、東の教会でもメラが叩いた魔震槌により白銀の化け物と化した信者達は震え動けなくなっていた。それを見たシーファは目を丸くし、メラを見る。


「これはっ! 呪いや祝福を持つものを動けなくしましたっ」

「その武器は……ただの呪いを受けた武器ではありませんね。呪いを掛けた武器?」

「おおっ! せんせえの妹さんっ! よく分かりましたねっ! これはうちのししょおが呪いを込めた槌なんですっ!」


メラがそう言ってにっこりと笑ったあと、脚をふらつかせる。

それを慌ててもう一人の青髪の美女が支える。


「す、すみませんっ。えーと」

「ああ、アクア。私はアクアと呼ばれています」

「ありがとうございますっ! アクアさんっ」

「それで、あれの威力や持続時間はどのくらいですの?」

「紋が反応した感情が落ち着くまでは基本的には止まりませんっ! 完全にそれだけに特化した呪いなんで。ですから……」


メラがそこまで言いかけると、4人信者の中から飛び出してくる。


「紋を持ってない人間や感情をしっかり押さえることの出来る人間には効きませんっ」

「わかりましたわ。では、貴女はゆっくりお休みください」

「で、でもっ」

「うふふ、こういう状態になった時には一旦魔力を落ち着かせないと駄目だと聞いたわ。大丈夫、私も彼女も強いらしいから」


アクアがそう言うと、メラをゆっくり床に下ろし、シーファに並ぶ。


「あら、わたくしを知ってらっしゃいますの?」

「ええ、ガナーシャさんから。素敵な妹だって」

「そうですの!? お兄様が!?」


目を輝かせてアクアの方を見たシーファに向かって飛びだしてきた四人の内の一人。

斧を持った男が飛び出してきたのをシーファは槍ではじき返す。


「おいおいぃい、随分と余裕じゃねえか。お喋りなんてよ。こっちは白の英雄候補ブレイドに認められた仲間達なんだぜ」


斧の男はこめかみに血管を浮き上がらせながらシーファを睨むとシーファはにっこりと笑う。


「これは失礼。こんなことでお怒りになるとは思っておらず。ですが、わたくしはいつだって、本気ですわよ。でなければ……」


シーファが槍を軽々と振り回し、周りに風を起こし構えなおすと、妖艶な笑みを浮かべ斧の男に告げる。


「お兄様の妹、失格ですわ」

「ちい! じゃあ、その【お兄様】と一緒に死に……!」

「は?」


その声が聞こえたとほぼ同時に斧の男の目の前にシーファの顔が、現れる。


「お兄様殺したら殺す」

「は?」


あっという間に目の前に飛んできたシーファに気付いて斧の男は驚愕の表情を浮かべる。

そして、後ろに跳ぼうとした瞬間、シーファの槍が迫る。


「あぶない!」


その声と同時に岩の壁が地面からせり上がりシーファの槍を防ぐ。


「助かったぜ」

「気を付けてください。彼女、相当強いですよ」

「十分わかったよ。目の前に顔が出てきた瞬間、肝が冷えた」


声の主である杖の青年が斧の男に注意を促しながらじっと岩の壁を見る。

岩の壁にはどんどんと罅が入っていき、そして、大きな破砕音と共に崩れ落ちていく。

その向こうでシーファが笑っていた。


「おいおい、本気かよ。貴族のお嬢様じゃねえのか?」

「アクア様、ここは二人ずつでよいですか?」


シーファが斧の男と杖の青年を見つめながらアクアに問いかけるとアクアはにこりと笑い、


「ええ、大丈夫だと、言っています」

「誰がですか!?」


シーファが思わずアクアの物言いにツッコミを入れると、アクアは人差し指を口元に当てながら走り出す。長く美しい青い髪を靡かせながらアクアは正面で待ち構える剣士の少年と魔法使いの老人を見て、目を閉じた。


「目を閉じるとは、お主も随分余裕じゃのう!」

「腹立つね」


少年が剣を構え、老人が詠唱を始める。だが、


「うふ、私もシーファさんと同じみたいですよ。最初から本気、と言われています。カイトくん、ワシャライさん、私はね……」


そう言って二人を驚かせたアクアは扇で口元を隠す。

すると、カイトと呼ばれた少年はあらぬ方向に剣を振り、ワシャライという名の老人は魔法の詠唱を中断させる。


「なに、今の!?」

「しまった……! こ、れは……」


あっという間に懐に飛び込んだアクアの一撃を喰らい、二人は後ろに下がりながら態勢を整えようとする。


「ねえ、じいさん! なんなのアレ!?」

「あれは、恐らく……」

『風に音を乗せたと言われます』


耳元で聞こえる声。それは間違いなく少し離れた前方で、扇で口元を隠すアクアで。

至る所から声が聞こえ始め、カイトは身体を震わせる。


『私の魔法は風魔法と言われています』  『風に音を乗せ、そこで解放させてあげるとそこで声が聞こえるらしいです』

           『ふふ』

   『音が離れて聞こえるとみんな変だと言います』

『厄介な魔法だと言います』     『風魔法の一つの極みだと』


『ガナーシャさんも褒めてくれます』 『本当にすごいと言われます』


 『だって、音を解放させる以外にも奪う事も出来るからといいます』

『うふ』

     『魔力の大きさによりますが、奪う事が出来るようです』

             『恐ろしい魔法だと』

『人は言います』  『うふふ』


アクアの声が色んな所から聞こえただけでなく、音はどんどんと入れ替わり、白銀の化け物のうめき声や、壊れたものが落ちる音、カイトの息遣いの音が全く関係のない場所から聞こえる。


『な、なんなんだよ! あんたは!』


そのカイトの声もカイトの口から消え、扇で口を隠すアクアの耳元に現れる。

にいと目だけで笑うアクアは、カイトとワシャライの耳元に声を送る。


『私は【聞く女】と呼ばれています。ガナーシャさんと共に【黒の館】で生きていた少女の生まれ変わり』

「な、ならば、お主が、あの! 記憶を、巡りの」

『そう……巡りを終えてなお、ガナーシャさんを覚え続けたのが私、らしいです。今は私だけがガナーシャさんとあの場所を語り合える女らしいんですよ』


アクアの口元は扇で隠れ見えない。だが、声には幸せが溢れている。


『ところで、そんなに声だけに集中していると危ないと言われますよ』「声の主が近くに居るかもしれないのに」


ハッと二人が気付くと目の前にアクアが。そして、風の魔力を纏わせた扇を振りかざすと、カイトとワシャライが吹き飛び動けなくなる。


「お見事ですわ!」


その様子を見たシーファがアクアに声を掛ける。


「うふ、ありがとうございます。シーファさんもお見事だと誰もが口をそろえて言うでしょうね」


シーファの周りでは、ビショビショで失神している斧の男と、土で身体を囲まれた杖の男。


「流石、四大属性全てを使える才女と噂です」

「お兄様の妹なんですから当然ですわ!」

「いやあっ! 本当にお二人すごいですっ!」


そう言いながらメラが倒れる信者達の海の中で笑っている。


「な、何故……こんないとも簡単に……!」


杖の男が土の中から呻くように呟くと、三人の女はニコニコと笑いながら、伝言用魔導具を見せつける。そこには夥しい量の文字が浮かんでいた。


「せんせえのお言葉ですっ!」

「うふふ、ガナーシャさんったら心配性とよくみんなに言われています。ありとあらゆる可能性を考慮した作戦、対策を立ててくれていたみたいですから。勿論あなたもらしいですよ、シバックさん」

「流石お兄様ですわ!」


シバックと呼ばれた杖の男は土の中で震えることも出来ず顔を青くさせる。

恐ろしい強さの三人は勿論だが、伝言用魔導具に浮かぶその文字には、やはり彼女達同様、いや、彼女たち以上の『本気』が見え、そして、シバック自身の全てが見透かされているような気がして、シバックは心からの敗北を感じていた。

お読みくださりありがとうございます。


コンテスト用短期連載文字数超えたので短編上げなおしました!! 良ければご一読ください…!

魔女と魔法少女バディものローファンタジーです!


『魔女に魔法少女』

https://ncode.syosetu.com/n9460ie/


よろしくおねがいします!



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