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第61話前編 おじさんは聖女の愛をなおせない

「えーと、ニナ様? 離れてもらえないですかね?」

「やだ」


南にある【白の庭】。そこにいた信者たちが捕らわれ、連れ出されている間、ニナはガナーシャにずっと抱きついており離れることはなく、ガナーシャを困り笑顔にさせた。


「あのー、ニナ様?」

「ニナ」

「え?」

「ニナって呼びなさい」

「……えーと、ニナ?」

「うふふ、なに? ガナーシャ」

「離れてくれませんか?」

「やだ」


ずっとこれを繰り返していた。


「ガナーシャがしかってくれたら離れるかもしれないわよ」

「はあ……ニナ、離れなさい」

「ふふ、怒られた」

「……えーと、離れてもらえるんじゃ」

「やだ」


ガナーシャは顔を引きつらせながら笑うしかない。

そこにマクセリオがやってきて、また笑う。


「ははは、ガナーシャ。随分と愛されているじゃないか、あい、あい、あいされて……ううっ!」


突如、笑っていたマクセリオが堰を切ったように泣き始める。

それを見てガナーシャとニナが目を丸くする。


「ガ、ガナーシャ、あの人、どうしたの?」

「あー……彼は彼なりに罪悪感を抱えていて。ニナ、に、いっぱい我慢をさせたんじゃないかって」

「ふふ、そうね。でも、大丈夫よ。ガナーシャに会えたもの」


ニナがにっこりとほほ笑むと、ガナーシャはまた困った笑顔を見せる。

だが、今度は本当に困っている様子で、ニナはざわつく胸をきゅっと抑える。

その様子を見てガナーシャは頭を掻きながら申し訳なさそうに口を開く。


「あー……それがね。僕はまた旅に出ないと行けなくて」


ガナーシャに別れ同然の言葉を告げられ、ニナは絶望の表情を浮かべる。

湧き上がる恐怖にニナは震える。


「離れるの? いやよ! いや! 絶対にいや!」


ガナーシャの服の裾をぎゅっと握りしめたニナの手をガナーシャのザラついた手がふんわりと遠慮がちに包み込む。

そして、じっとニナの瞳を見つめる。一生懸命に自分の事を、思いを伝えようと。


「でもね、これは僕で決着をつけないといけないことでね」

「いや!」


ガナーシャはじっと見つめる。ニナは離れないその眼を見て、これがどうしても避けられないものだと悟る。


「ごめん。これだけは譲れないんだ。僕が始めたことで、僕が終わらせないといけないことだから……」


絶望的な何かを覚悟したその表情は、今まで白の庭を訪れた誰よりも本気で、命がけで、悲しそうに見えて、ニナは言葉を詰まらせる。


「……わ、わかっ……! うううう!」


なんとか言葉を絞り出そうとした時、ニナは背中に激痛が走り身体を丸くさせる。


「ニナ!」

「ガナーシャ……! せ、背中が熱いの!」


ニナの背中から何かが生まれようとしている。

それに気づいたマクセリオとガナーシャは目を見合わせる。


「これは……ガナーシャ!」

「マック、分かってるよ。……ニナ、落ち着いて。ゆっくり深呼吸して。僕を信じて」

「で、でも……」

「大丈夫、僕はいる。絶対に生き残る……うん、そうだ。生き残るんだ。君たちがいるのに、死ぬわけにはいかないよな。生きる。絶対に生きて、また会いに行く。だから、待っていて」


ガナーシャのその誓いにも似た言葉にゆっくりと痛みと熱が薄らいでゆく。

ガナーシャに痛みが治まったことを目で伝えるとガナーシャはふんわりと微笑み、そして、ニナから手を離し、頬に手を当てて、小さくうなずくと立ち上がる。


「じゃあ……行くよ。マック、ニナを頼んだよ」

「ああ、行ってらっしゃい。君に神の祝福があらんことを」

「……うん、僕の代わりに祈っておいて。よかったら、ニナも」


そう言ってガナーシャは去っていった。ニナはその背中をいつまでも見つめていた。

お読みくださりありがとうございます。

コンテスト用短期連載作始めました! 良ければご一読ください…!

魔女と魔法少女バディものローファンタジーです!

『魔女に魔法少女』

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よろしくおねがいします!

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