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第56話 可憐毒舌聖女は歪みをやっぱりなおせない

回想編ちょっとヘビーが続きますがどうしても本作で避けられないので。

明後日には再び現在に戻ります。


あと、ブレイブ・ブレイド誤字連発本当にすみませんでしたぁああああああ!

「どうしてこうなったんだろう……」


銀髪の幼い少女は目の前の白銀の化け物を見て呟いた。




ルナリエルがガナーシャと出会い別れ、真っ白な家に帰るとニコラエルはガナーシャの言った通り、部屋に戻っていてベッドで横になっていた。


「ねえ、ニコラエル、帰っていたのね」

「……」

「寝ているの? なら、よかった。ニコラエル、おやすみなさい。いい夢を見ようね」


そう言ってルナリエルは自分のベッドで横になる。

布を被り懐にある伝言用魔導具をこっそり覗き見る。


『無事に帰れたかな? おやすみ』

「ふふ」


ガナーシャからの言葉を受け取り思わず笑ってしまったルナリエルは『おやすみなさい』と返し眠りについた。

その日のベッドはいつもよりさらにふかふかな気がした。


「ねえ、ルナリエル……」


ぼそりとニコラエルの声が聞こえた気がしたが、微睡に落ち始めていたルナリエルにはそれが現実か夢か分からないまま、意識を手放し夢の世界へとおちていった。


翌朝、ルナリエルはいつも通りに目を覚ます。

だけど、いつも通りではなかった。いつもよりも更に気持ちのいい朝だ。

ベッドから元気よく出る。ニコラエルはまだ眠っているようでこちらに背を向けて眠っている。

いつもなら、ルナリエルとニコラエルはほぼ同時に目を覚まし、寝転がった状態で開いた目が合う。

いつもなら。

だけど、今日は違った。今日だけは、違った。

けれど、そんな日もあるだろうと。自分の寝覚めが良すぎただけなのだとルナリエルはそう思い、ニコラエルに声をかける。


「ねえ、ニコラエル、朝よ」

「そうね……」


いつもと違う様子にルナリエルは首を傾げる。だけど、昨日の興奮が残っているのかルナリエルはそこまで気にせず笑顔に戻り話しかける。


「ねえ、ニコラエル、おいのりの時間よ、行きましょう」

「そうね、行くわ。だけど、先に行ってて」

「分かったわ、ニコラエル。先に行くけど遅れないようにね。遅れたら『わるい子』よ」


そう告げてルナリエルは部屋を出る。

いつもなら一緒に出て一緒に向かうおいのりの時間に。

今日だけは、ルナリエルが先に行く。

ニコラエルは後に行く。

ゆっくりと身体を起こし、ニコラエルは懐でちかちか輝く魔導具を抑えながら、今日だけは一人で部屋を出て行った。


おいのりの時間。

みんなで神に祈りを捧げ、そして、祝福の儀式を行い、おかあさん達に褒めてもらう。

子どもたちはみんな、この時間がだいすきだった。


なので、誰も遅れたりはしない。ルナリエルは一番乗りだった。


「あら、ルナリエル。おはよう。起きられて素晴らしいわ。だけど、一人なの? ニコラエルは?」


大人たちが並んで待っていた輪から離れ、微笑みながら近づいてきた『おかあさん』が聞いてきた。ルナリエルは胸元で手を組みお辞儀をする。


「おはようございます。おかあさん。ニコラエルは後から来ます」

「……そうなの。分かったわ。ちゃんと答えられて素晴らしいわ、ルナリエル」


そう言っておかあさんは微笑む。

ルナリエルは、おかあさんに褒められた。褒めてくれたお礼にもう一度お辞儀をする。

だけど、そのおかあさんの言葉もなんだか違っている気がした。

不思議に思い、顔を上げると、いつもと何が違うのか探す。


「あの、おかあさん。……ルママーナおねえさんはいないのですか?」


おかあさんの次にみんなにやさしくしてくれていたルママーナがいない。

ルナリエルがそれに気付き尋ねるとおかあさんは嬉しそうに答える。


「ルママーナは神に認められ、ここより北にできた新しいおうちの『母』となったのです。あの子もとってもよい子だったから。ルナリエル、あなたも素晴らしい子よ。もっともっとがんばって素敵な聖女様を目指すのですよ」


今日感じているちょっといやな何かはきっとこれだったのだろう。

そう思ってルナリエルは、おかあさんににっこりと微笑む。


「あなたなら、一人でも立派な聖女様になれるわ」


おかあさんの穏やかな言葉がルナリエルの耳に流れ込む。そして、それが頭の中で甘く、なのに、ずきりと痛む何かに変わる。けれど、それは気のせいだと。ルナリエルは、今のおかあさんを心配させてはいけないと笑顔を作り頷いた。

ニコラエルがわるい子になってしまうのではと心配したが、その後すぐにニコラエルはやってきたし、おかあさんもニコニコしていたので、ルナリエルはほっとし「ああ、いつも通りだ」と笑った。

その後から、沢山の子どもたちがやってくる。みんな、ニコニコわらっていた。


静まり返った祈りの間で、誰もが手を組み、祈りを捧げる。

ルナリエルも今日は特に気持ちを込めた。


(神様、昨日はとてもよい日をありがとうございました。ガナーシャに会えました)


「はい、みんなよくおいのり出来ましたね。素晴らしいわ」


おかあさんがそう言うとみんな揃ってにっこりわらう。

でも、ルナリエルは、今日は一番自分が笑っている。そう思った。

おいのりが終わると、祝福の儀式にうつる。

祝福の儀式では、一人一人、祈りを捧げる。

その間におかあさんが背中に手を当てて魔力を与えてくれる。

これが聖者になる為に必要な力だと何度もおかあさんやおにいさん、おねえさんに言われていた。

みんなと一緒に並び始めた時に、ルナリエルはまた気付く。


(そう言えば、小さい子達が何人かいないわ。スフィアにキャリヴァ、アルヴォ、ブレイド、シエル、アルマ……ルママーナおねえさんと一緒に行ったのかしら)


こういった事は珍しいわけではない。今までも気付けば子どもたちがいなくなっていることはあった。なのに、何故か今日は妙に胸に引っかかり、何故かずっとざわついていた。


ルナリエルの前はいつも通りニコラエルだった。

ニコラエルはいつもと同じでちらちらとルナリエルの方を見てきたので、ルナリエルはいつものように微笑んだ。

だけど、いつもなら微笑み返すニコラエルがバツが悪そうに顔を逸らす。

ルナリエルは、自分の中でざわざわと何かがより騒ぎ出している気がして怖くなった。


そして、


「ニコラエル……貴方に神の力が宿らないわ」


そのざわつきが身体中を駆け巡った時、おかあさんが悲しそうにそう言った。


「え……?」


ニコラエルの声が静まり返ったいのりの間に響き渡る。


「何をしたの? ねえ、ニコラエル! 背中を……背中を見せなさい!」

「お、おかあさん! やめて!」


おかあさんがニコラエルの服に手を掛けめくりあげ背中を見る。

すぐ後ろにいたルナリエルにも見えた。

ニコラエルの背中は顔や腕と同じく真っ白で、背中には、白銀に赤黒い何かが混じった色で鳥の片翼のような模様が現れていた。


「ニコラエル……あなた、昨日、何をしたの? 正直にこたえなさい」

「お、おかあさん、わたしは……昨日、早く立派なよい子になりたくて、おつとめを果たそうと、外の、外の世界に出ました」


ニコラエルの告白に、祈りの間がざわめく。


「おつとめを……。それで、どうしたの?」

「おつとめを、はたそうと、したのだけど、うまくいかなくて、くろい子が赤いのを流して、それがちょっとついて、わたし、こわくなって、かえってきました」


ニコラエルが身体を震わせながら答える。

それを微笑みながら聞いていたおかあさんはニコラエルに近づく。


「ニコラエル、正直に話せて素晴らしいわ。ところで、その懐に持っているものは何かしら?」


おかあさんのやさしいようでなんだか怖いその言葉にニコラエルはびくりと再び身体を震わせ、取り出し、差し出す。

ニコラエルが手に持っていたのは、伝言用魔導具。

後ろで見ていたルナリエルが目を見開く。

それは、ルナリエルが持っていた伝言用魔導具だった。

ルナリエルが慌てて懐を見ると、そこには魔法のお勉強で使う水晶玉が。


「ニコラエル、それをどこで?」


おかあさんの声が聞こえ、全身から汗を噴き出しながらルナリエルはニコラエルを見る。

その時、ニコラエルと目が合った。


(言わないで!)


ルナリエルの頭の中でそう考え必死に手を伸ばそうとしたその時。

ザラついたあの男の手の感触が何故か蘇る。

そして、差し出しかけた手を下ろし胸元に当て、大きく深呼吸。


「おかあさん、わたしです。わたしが、もらったものです」


ルナリエルはそう告白した。

振り返ったおかあさんは微笑んでいたように見えた。


「そうなの?」


微笑んでいるように。見えた。だけだった。

ざわつきが大きな音でルナリエルを包み込んでいるような気が彼女にはしていた。

ルナリエルはこのざわつきを表す感情をほとんど知らずに生きていた。

だから、何も言えない。どうすればいいのか分からない。だけど、今、自分がしたことは決して『間違っていない』。それだけは分かっていた。

ざわつきの音で五月蠅い頭の中で、あの男が悲しそうに、でも、嬉しそうに頷いてくれている気がした。


「違います」


ルナリエルはそう言われた。

おかあさんを挟んで見つめ合うニコラエルに。

いつも一緒だったニコラエルが、ルナリエルを否定した。

その顔はいつもの顔とは違っていて、多分、今の自分の顔とまったく似ていない気がした。


「これはわたしのものです。あの子は嘘を言いました。これはわたしのものです。わたしが外から持って来たものです。嘘を言わないで」


ニコラエルは微笑んでいた。悲しそうに、そして、嬉しそうに。

あのひとと同じようなやさしい顔だった。

そして、そんな顔で、


「ねえ、ルナリエル」


ルナリエルはそう言われた。

ニコラエルはそう言った。


名前を呼んだ。


「……分かりました。ニコラエル、正直に話せて素晴らしいわ。みんなも見習うように。ルナリエル、貴方はニコラエルの為にと思って嘘を吐いたのね。嘘を吐くことはよくないわ。だけど、神様が見ているから正しい事をしようとしたのはよいことだわ。素晴らしいわ。……ヤシアナ。ニコラエルから外の世界のおはなしを聞いてあげなさい。『告白部屋』に」


おかあさんがそう言うと、ルママーナに代わり、一番近くに居たヤシアナが頷いてニコラエルを連れていく。

ニコラエルは微笑んでいた。ルナリエルに向かって。

ルナリエルは、真っ白だった。頭の中が真っ白で何も考えられなかった。

そのまま、言われるまま祝福の儀式を受けていると、


「……ルナリエル、あなたもしかして……」


そう呟いて、またおかあさんがニコラエルと同じように服を捲り背中を見る。

どうでもよかった。


「両翼の……素晴らしいわ! ルナリエル」


おかあさんが嬉しそうに叫んだ。初めて聞く声だった。

どうでもよかった。


「みなさん、聞きなさい! ルナリエルが神に聖女と認められました」


おかあさんがそう言うとみんなはにこにこしながら手を叩いてしゅくふくしていた。

どうでもよかった。


「ルナリエル、素晴らしい。素晴らしいわ。あなたは本当によい子ね!」


おかあさんがそう言った。

どうでもよかった。


そして、ルナリエルはひとりになった。

お読みくださりありがとうございます。

また、評価やブックマーク登録してくれた方ありがとうございます。


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[一言] ブレイブブレイドよりチキンナイフ選ぶからしゃーない
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