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第46話前半 おじさん達はうまく料理出来ない

ニナ編前に番外編です。また前後編です汗

『く、くるしい……どうしたらいい?』


 ガナーシャは、【青の魔女】がくれた複数の魔力紋が記憶できる特殊な伝言用魔導具にそんな伝言を送る。


「どうして、こんなことに……」




 遡る事、一週間前。


「はい、出来たよ」


 ガナーシャは、リア達に呼びかける。


「わかった。じゃあ、みんなで食べましょう、ケン……」

「俺は良いから、お前ら先に……」

「駄目よ。『食事は出来るだけ一緒に』アシナガ様のお言葉よ」

「……そうだな。わかった」


 ケンが見張りを買って出ようとするがリアに止められ、ケンもリアの、いや、アシナガの言葉に素直に従う。


『食事は出来るだけ一緒に』


 リアの言う通り、この言葉は、アシナガであるガナーシャが三人に伝えた。

 そして、三人はそれを今まで実行してきた。よほど、魔物が頻繁に襲い掛かってくる場所でない限りは、食事は短い時間だけでも共にする。

 ニナはそのやりとりをみながらニコニコ微笑む。


「ふふ、じゃあ、皆さん祈りも短くていいからしましょうね。聖域も張りますし、みんなの探知なら大丈夫ですよね? ねえ、ガナーシャさん」


 ニナが問いかけると、ガナーシャは穏やかに微笑む。


「うん、そうだね。みんなの魔力探知なら大丈夫」

「ま、まあ、だから、大丈夫よ! ケン!」

「お、おう……じゃあ、食うわ」


 リアとケンが少々まごつきながらも食事の席につく。

 食事は、基本的に冒険者が馴染みにしている長期滞在が可能な宿を借り、そこで済ませる。

 だが、依頼の場所やダンジョン内での滞在が長くなれば自分たちで作らなければならない。


 基本的に、ガナーシャが買って出ていた。

 料理が好きだし、自分は足を引っ張っているからと名乗り出た。

 今日は、パンと魔物肉のスープ。

 今日倒した岩牛ロックバイソンは皮膚が岩に覆われているものの、それを剥げばあとは普通の牛に近い。肉も大分硬かったが、料理屋スパイスの為に魔法を編み出す【食の魔女】が教えてくれたレシピとそのスパイスで作った間違いのない一品だ。


「ふわぁああ、スープが沁みる~」

「おかわり」

「ふふ、ケン、噛まなきゃ駄目よ」


 相変わらず、リアは表情をころころ変えて、ケンは勢いで、ニナは手を止めては感謝を告げて美味しさを伝えてくれる。


「にしてもよお、」


 ケンがおかわりのスープを注ぎながら、口を開く。


「食事は一緒にって他はやってねえらしいな。女将さんに伝えたら驚かれたわ」

「まあ、食事中・睡眠中は危険だからね」


 ガナーシャは、自分が、アシナガが言った言葉にも関わらず、そう告げる。

 実際、食事中に襲われたという話は昔からあり、未だにそういった話は聞く。


「それでも、アシナガ師匠はやっておけって言うから、師匠はかっこいいな」


 ガナーシャにはかっこよさが分からなかったが、曖昧に頷いておいた。


「勿論、アシナガ様がかっこよくなかった日なんてないわ」


 ガナーシャは、むしろかっこよかった日なんてなかった気がするが曖昧に頷いておいた。


「ふふふ、ですって、ガナーシャさん。アシナガ様はかっこいいんですって」


 ガナーシャは、曖昧に頷いておいた。


「あ、あはは」

「でもほんと、食事って思った以上に大切よねえ」


 リアがしみじみと言うと皆頷く。

 そして、誰よりガナーシャが深くうなずいていた。


 食事は、大切だ。

 空腹を満たすことは勿論のこと、健康面にも響いてくるし、味が悪ければ苛立ちの原因にもなりうる。ガナーシャも入れてもらったパーティーで食事によって崩壊したところはいくつも見てきた。

 そして、【食の魔女】の力でとてつもなく冒険の効率が上がっていたあの英雄達を見て、食の大切さは凄く実感している。


「まあ、そうだね。やっぱり食事は直接士気に関わるからね」

「うめえ飯は大事だ」

「オトさん、ごはんおいしいですもんね」

「……おう」


 ニナがニコニコ顔で言うと、ケンは急にもそもそとスープを飲み始める。

 そして、何故か急にリアまでもそもそとスープを飲み始める。


 不思議な空気の中、ガナーシャが困り顔で、ニナが笑顔で食事を続けていると、スープを飲み終えたリアがちらちらとガナーシャを見ながら呟く。


「あの、ガナーシャは、そのね、今までの経験上、その、ガナーシャは大人だから経験豊富だから、聞いてるんだけど、ごはん美味しく作れる子はどう思う?」

「そ、そうだね……い、いいんじゃないかな……」

「……お嫁にするならやっぱりお料理上手な方がいいですか?」


 ニナもニコニコ笑顔で聞いてくる。


「そ、そうだね……」


 ガナーシャは足が痛くなった。

 その日は、問題なく依頼を終えたが、ずっとガナーシャは足をさすっていた。


 そして、次の日、タナゴロに戻ると。


「ガ、ガナーシャ、ちょっと、あの、味見してくれない?」


 部屋を訪れたリアが持っていた鍋は……美しい空色をしていた。

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