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第四話「おじさんは魔法少女の視線が痛い」

「おいおい、聞いてるのか? このゾワカ様が率いる【紫炎の刃】がお前たちをサポートしてやろうって言ってるんだ。そんな役立たずのおっさんに代わって」


【紫炎の刃】。

タナゴロ冒険者ギルドでは、上位に入る実力者チームで、特にリーダーであるゾワカは、二属性持ちの魔法使いとして評価されていた。

そして、ガナーシャは、そのゾワカに【紫炎の刃】をクビにされたことがあった。


「いいか、そのおっさんはな、動けないし、魔法は弱いし、ステータスも低い、とにかく、雑魚冒険者なんだ。そんな奴を連れていてもお前らには何もメリットはないぞ。な? 先輩の助言は聞いておけ」

「ありがとうございます、先輩。ですが、私たちには私たちの考えがありますので。お気になさらず」


リアが丁寧にそう告げると、ゾワカはリアの美貌に一瞬見惚れながらも首を振り、指を突き立てる。


「い、いいや! 何度でも言ってやる! そのおっさんはな……」

「おい……! うっせえんだよ。てめえのやり方をおしつけんな……!」


ケンが凄むと、ゾワカは出しかけた言葉を飲み込み、後ずさる。


「ゾワカさん、お互い頑張りましょう、ね? もしかしたら、お力を借りることがあるかもしれませんが、一先ず、私たちの勉強のためにも私たちだけでやらせてください」


ニナがそう言って頭を下げると、ようやくゾワカも納得がいったのかうんうんと頷き笑う。


「そうか、そうだな! まあ、痛い目を見るのもいい勉強となるだろう! まあ、では、困ったら大声で呼べ。『たすけてくださーい』ってな。じゃあ、お荷物抱えて精々頑張りな、英雄候補君たち」


そう言って、ゾワカと【紫炎の刃】は、【黒犬のあなぐら】へと向かうためにタナゴロの街を出ていく。

リア達は呆れた顔でその背中を見つめていた。


「よし、じゃあ……装備品の確認ね。破損とかあったら教えてね。あと、体調が悪かったりとか不調な部分があれば教えて」


リアが全員にそう呼びかけ、真剣に装備品の確認をし始める。

装備品の破損は時に致命傷になりうる。丁寧に確認をしていく。

リア達はやりすぎと言われるレベルまでやっていくので、それを遠目に見ている粗忽な冒険者たちは臆病者と笑っている。


「てめっ……」

「ま、まあまあ、ここで喧嘩する元気があるなら、ダンジョンで頑張ろう。ね?」


ケンが笑う冒険者たちに行こうとするのをガナーシャが抑える。だが、少年と大人にも拘らずケンの力があまりに強すぎて、そのまま引っ張っていかれそうになる。


「ちょっ……ケン! やめなさい!」


それを見たニナとリアに抑えられ漸くケンが止まる。

ガナーシャは、足に縋り付いているだけでほぼ寝ているような状態で苦笑いしながら立ち上がる。


「あはは……まあまあ、ああいう奴にはきっと天罰が下るからさ、放っておこう、ね?」

「はあ!? 天罰? 天罰なんて、神のクソ野郎なんて信じるかよ! オレが信じるのはあの人だけだ!」


そう言ってケンは先ほどの冒険者をにらみつける。

女に抑えられた腰抜けと思ったのか、冒険者たちはにやつきながらケンに近づこうとして足を滑らせてこけた。


「は……?」

「ほら、やっぱりね。さあ、行こう。構うだけ時間の無駄さ」


ケンも間抜けに転んだ男たちに気が抜けたのか立ち上がりにこりと笑う泥だらけのガナーシャに大人しく従いながら去っていく。

そして、冒険者ギルドから離れたところで、再び集まりリアが声をかける。


「はあ、まったく……それで準備はいい?」

「問題ない」

「うん、大丈夫よ」

「あ、あのー……」


ケンとニナが頷く中、ガナーシャが申し訳なさそうに手を挙げる。


「あの、足が痛いんだけど、今日はお休みにしたりは……」

「「「ダメ(だ!)(です)」」」


三人が声を揃えてガナーシャの意見を却下する。


「あのね、例え大発生スタンピードの恐れがなくても、いえ、恐れがないように、こういった討伐依頼が組まれるのよ。その重要性を理解して」


リアの言葉にガナーシャは苦笑いを浮かべ頭を掻く。

大発生スタンピード。それは、本来ダンジョンでしか生きられない魔物が、何らかの理由で大量発生し、魔力を求めダンジョンを飛び出す現象だ。場合によっては、街が滅ぶ大災害にもなりえるため、冒険者ギルドでは各ダンジョンの魔物を定期的に討伐することで大発生を未然に防いでいる。


「ああ、そうだよね。ごめんごめん。じゃあ、行こうか」


手をこすりながら苦笑いを浮かべるガナーシャのその言葉に、ケンは眉間にしわを寄せたがそれ以上は何も言うことなく進んでいく。ニナも圧ある微笑みでガナーシャを見ると歩き始める。

リアもガナーシャをじとーっとみて歩き出そうとし、


「あ!」


と、声を上げる。


「どうしたの?」

「指輪、忘れた……」


リアは、自身の人差し指をじっと見つめ顔面蒼白で震えている。


「いやいや、リアさん指輪って重要じゃない……」

「アシナガ様がくれたの!」

「「行ってこい(いってらっしゃい)」」


ガナーシャの言葉をリアがかき消し、ケンとニナの揃った声でリアは駆け出す。

ガナーシャは、はあとため息を吐いて足を擦り続けた。


「アシナガ、ねえ……」

「おい、アシナガ師匠を悪く言ったら殺すぞ」

「ガナーシャさん、アシナガさんだけは悪く言ってはいけませんよ。……天罰が下りますよ」

「わ、わかったわかった。ごめんよ。今後気を付けるよ……うん」


アシナガというのはリア達の支援者の名前だった。

ケン達を幼いころから支援し、成長してからも装備品などを含め色んなものを支援してくれる存在でケン、リアはもちろん、ニナも尊敬する存在なんだが、ガナーシャはそうではなかった。

とはいえ、自分には何も言う資格はないかと足を擦り待ち続けてしばらくの時間が流れる。

そして、やってきたリアは、息を切らしながらも笑顔で戻ってくる。


「ごめんね! おじさん! みんな! これでもう大丈夫! いこ!」

「うぐ」

「あん? どうしたおっさん」

「あらあら、リアの笑顔に見ほれましたか?」

「ばっ……! 何よ! アタシにはアシナガ様がいるんだからね!」


真っ赤な顔で指輪に視線を落としうっとりと見つめるリアを見て、ガナーシャは悲しそうな嬉しそうな顔で震えていた。

お読みくださりありがとうございます。

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