第33話前半 おじさんは圧倒的な能力差に勝てない
二つ目のレビュー頂きました。
昨日今日と実家に帰っていたのですが、半分だけ頑張って書けましたので、アップさせていただきます。
皆様の応援が力になっています。本当にありがとうございます。
「おい、オレがあの剣を持ったガキをやる。お前らは、他を引き付けろ」
大柄な男の号令で、覆面が頷き散開する。
「ニナ、右側一番近くのを確実にやるわ!」
「ええ!」
だが、ガナーシャは動かず、リアとニナはペアになって一人を追う。
その様子を見て、男は残念そうに首を振る。
「ち。確実にとれるもんだけとるってか。面倒な奴らに当たっちまったなあ」
「やあ、そう思ってくれてるなら、降参してくれないかな」
ガナーシャが距離を測りながら、男に向かって話しかける。
男はガナーシャの言葉を遮るように手のひらを前に出す。
「それは出来ねえよ」
「じゃあ、見逃すからちょっと僕らに良い思いをさせてくれないかな」
「おい! おっさん」
ガナーシャがえへらと笑いそう話すと、ケンは叫ぶようにしかりつける。
「残念だったな。『おっさん』の欲しい情報を漏らすような馬鹿じゃねえよ。そういう事だよ、ガキ」
「……!」
ガナーシャの代わりに男がガナーシャの目論見を話し、お手上げとばかりにガナーシャは両手を上げる。それを見て男は満足そうにうなずきながらケンの方に向きなおり笑う。
「アイツらも、狙われた奴、助けに行っちまったし、若い奴らってのは考えが足りねえな」
男が今度はリア達の方を向くと、リアとニナに狙われた一人を助けようと散らばったはずの覆面達が集まっていた。
「まあ、いいか。オレはオレが助かればそれでいい」
「残念だったな。助からねえよ。俺が助からせねえわ」
「やってみろ」
「やってやる!」
ケンが剣を構え勢いよく駆け出す。
が、男の手前で直角に左に曲がり、身体をしならせ左から払い斬りを狙う。
「早いな。だが、オレの方が早い」
「な!?」
ケンの横跳びに合わせて男が跳んでおり、さらにケンを追い抜いて払いきりの構えをとろうとしていたケンの更に奥で身体をしならせ短剣でケンの背中を狙う。
「ケン!」
「くっそが!」
払い斬りの体勢だったために、咄嗟に剣を男の方へと構え受け止める。
だが、急を突かれ態勢が不十分だったこともあり、簡単に力負けしてしまう。
身体二つ分ほど飛ばされ、ケンは防御の構えをとり態勢を立て直す。
男は、追撃の構えはとらず、足元の確認をしていたのでケンもさっきの防御で乱れた呼吸を整える。
「ふぅうう、こいつ……強え……!」
「ち。なんだ、ぬかるんでやがったのか。運のいい奴だなあ」
男はそう言うと再び短剣を構え、ケンに襲い掛かる。
ケンと男のステータスには大きな差はない。だが、確実に男の方が上で、徐々にケンが押され始める。その理由は明確で、男の思考や経験がケンを上回っていた。
多少差があっても勝敗というものは基本的には分からない。ちょっとしたことで、隙や油断が生まれれば一瞬で形成が逆転することもある。だが、男はそれを許さない。
ガナーシャが、密かに黒魔法を行使して、『いやがらせ』もしているのだが、一向にそれに動じる様子がなく、ケンのフェイントにもひっかかることなくいなしていく。
そこにあるのは自分への絶対的自信。
動かずただただケンを待ち構え、ケンが引けばゆっくりと迫っていく。
「くそっがぁああああ!」
「おいおい、そんな熱くなるなよ。弱いからって」
ケンの飛び込んできた一撃を思い切りはじき返す。そして、ケンに短剣を振り上げたその瞬間、
「〈暗闇〉!」
ガナーシャの黒魔法が男の覆面の周りをぼやあと包む。
「なんだ、さっきからやりづれえと思ったら、あんたの仕業か。うまいことやるもんだ」
ゆっくりとガナーシャの方に振り返り、男が話しかける。
「いや、それでやりづらいだけで対応されているんだから立つ瀬がないよ」
「はは、まあ、魔力が弱すぎだろ。まさか、それが全力じゃないだろ?」
「残念ながら今のが全力くらいなんだよ」
ガナーシャが困ったように笑いながら告げると、男は大きく身体をのけぞらせ驚きを表現する。
「! ははは! 本気か、そりゃ残念だなあ。才能がないってのは残酷だな」
「同情してくれるなら少しだけでも話を聞かせてくれないかな? 君たちは盗賊団だよね?」
「……はあ、本当にあんたに才能があったらな。ウチでスカウトしたいくらいだな」
「じゃあ、肯定という事で。殺しはしたのかな?」
「ああ、した」
「!」
ケンが目を見開いて驚くが、ガナーシャと男は世間話をするかのように淡々と会話を続ける。
「盗みも勿論だよね」
「そうだな。だが、女は襲ってねえぜ、今回は。さあて、もっと話をしたいんだろうが、これ以上は時間稼ぎに付き合えねえ。こっちもアンタという人物が分かったところで、そろそろ行くわ」
「いかせねえよっ……盗賊野郎が!!」
逃げようとした男の背後から鬼気迫る表情でケンが飛び掛かる。
だが、その一撃も防がれ蹴り飛ばされる。
「ケン!」
「おっさん……下がってろ。こいつは、俺が絶対にやる……!」
「は! いいぜ小僧……世界の厳しさをてめえに教え込んでやるよ。おら、『おっさん』も一緒に来いよ。まとめて相手をしてやるよ……」
「やれやれ……お手柔らかに」
ガナーシャがケンに並び、少し腰を落とす。
「いくぞ、おらあああああ!」
「こい、小僧!」
「……!」
タナゴロの夜にケンの叫びが響き渡り、再び男とケンの短剣と剣がぶつかりあい、ガナーシャがこきりと指を鳴らした。
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