転生記録21
「うーん。」
剣人はこの世界の地図を見つめながら唸っていた。
「どうしたの?ケント」
マーリが不思議そうに剣人に質問する。
「いや、この世界に来てから冒険者としていろいろ頑張ってきたけどこの付近には日本に帰る方法がまだ見つからないなって。」
剣人はこの世界に来て帰る方法を探すために冒険者として頑張ってきてはいたが、基本的にギルドから言い渡される仕事をこなすのみで、帰る方法の情報はあまり掴めてはいなかった。
「この調子だとなかなか帰ることもできそうにないしな・・・・。本当だったら冒険者に就かずに世界中を旅して回ったほうがいいんだろうけどな・・・・。」
「えっ、私ケントがいなくなるのはイヤだよ。」
「いや、辞めるつもりはないよ。俺を助けてくれたマーリの頼みだし何より旅するだけの資金が無いからな。」
「良かった。ケントと出会ってようやく作った天使と剣術者が無くなっちゃうのはイヤだったから。」
「でももし俺が帰る方法を発見して日本に帰っちゃったらマーリはどうするの?」
そう剣人が聞くとマーリは少し悲しそうな顔をする。
「・・・・そっか。そうだよね。ケントがいつまでもここにいるわけじゃないだろうし、そのうち私一人になっちゃうんだよね・・・・。」
そうぼんやり呟いたマーリを剣人は慌てて慰める。
「だ、大丈夫だよ。帰りたいなとは思っているけど今のところその方法は何も分かってないわけだし、しばらくは帰るなんてありえないから。これからもこのパーティの攻撃役として頑張るから!」
自分のことを慰めてくれている剣人にマーリは微笑みながら言った。
「うん。でもケントは帰ることが目的だからね。私もそれを全力でサポートする。だから一緒に頑張ろうね。」
「うん。」
そう剣人とマーリが話し終わったところにギルドの受付の人が近づいてきた。
「あの、今ニホン(?)がなんとか言ってませんでした?」
「え?」
いきなり日本のことを尋ねられて剣人は困惑する。
「何か知っているんですか?」
マーリが聞くと、受付の人が話してくれた。
「いや、私も職業がらいろんな人と出会うんですけど、過去にそのニホン(?)から来たって人がいたきがするんですよね。」
そのことを聞いて剣人は勢い良く立ち上がって受付の人に尋ねる。
「本当ですか?どこの誰かは分かりますか?その人と会ってみたいです。」
「うーん、確かその人は冒険者になったはずだから名簿を見れば分かると思うんですけど、昔の記憶ですからね。誰がその人だったかまでは細かく覚えていないんですよ。」
「そうですか・・・・。」
剣人は自分と同じ異世界へと転移してしまった人と出会えるのではないかと歓喜したが、その人が特定できなかったことに少し落胆する。
「まあ、俺以外にも日本からの転生者がいるってことを知れただけでも良しとするか。」
「もっと色んな情報が集まるといいね。私もできる限り協力するから。」
「ありがとな、マーリ。」
その時、受付の人が慌ててこちらへと駆け寄ってきた。
「突然で悪いですが出動命令です。トレア国へ向かっている商人がモンスターに襲われていると救難信号が入りました。速やかに商人を救助してください。」
「わ、わかりました!」
「行こう、ケント!」
剣人とマーリは急いでトレア国へと向かう道へとたどり着いた。そこにはモンスターに襲われている人の姿があった。
「ひいい!来るな!」
「なんとかこの台車に立てこもってゴブリンたちを上げさせるな!」
「・・・・!駄目だ、台車がもうもたない!」
「くっ!」
剣人は急いでゴブリンたちへと突撃をしていく。
「今助けます!はあああ!」
まずは台車の車輪を狙っていたゴブリンの体を切り裂いた。
いきなり一体仲間がやられたゴブリンたちは動揺し、全員が剣人の方を向く。
「よし、こっちだ、ゴブリンたち!俺が相手だぞ!」
剣人が走るとゴブリンたちも走り出してくる。
ゴブリンたちが台車から離れたのを見計らってマーリは台車の上の人たちに近づいていく。
「みなさん、大丈夫ですか?いま治療します。」
ー{回復属性魔術(小)}ー
マーリのスキルによって、ゴブリンによってつけられた傷が塞がっていく。
「おお、ありがたい。」
「良かった。俺たちは助かったんだ!」
マーリは剣人の方を見る。そこにはゴブリンをもう三分の二くらいは片付けた剣人がいた。
「分裂体とはいえ俺は魔王軍の幹部を一人倒したんだ。」
最後の一体になったところで剣人は剣を握る手に力を込める。
「戦闘経験は最初とは比べ物にならないくらいついてる!」
最後の一体を切り裂きゴブリンたちを全滅させることができた。
「やったねケント。死者も出てないみたいだし無事に任務かんりょ・・・・」
その時、木陰から炎の球が飛び出してきた。
「あ、危ない!!」
剣人はマーリたちに叫ぶ。
商人とマーリはなんとか走り逃げたので誰も怪我はしなかった。
「新手の敵?みなさん、隠れててください。」
マーリは商人たちに隠れるようにと指示をすると、剣人の方へと向かった。
炎の球が飛んできた方を見ると、格好の違ったゴブリンが立っていた。
「あいつが商人を襲ったゴブリンたちの親玉だったのか?しかも格好が違うということは高ランクのゴブリンか?」
「あの姿、もしかして火属性魔術師?いや、スキルの性能からしてもしかして・・・・」
ゴブリンが杖を構えてスキルを放ってきた。
ー{チェイス・ブラスト}ー
杖の先から炎の球が飛び出して剣人たちを襲う。
剣人はなんとか走りながらそれを躱していくが、なかなか近づけそうにない。
「これは、火炎魔術使い・ゴブリンだよ!」
「火炎魔術?!」
走って炎の球を躱す剣人だが、突如、躱したはずの炎の球が引き返し剣人に襲いかかった。
「何っ!・・・・うわっ!」
間一髪で躱すが剣人はその場に転倒してしまう。
「ケント!・・・・きゃっ!」
マーリにも別の炎の球が近づいていることに気付かずに炎の直撃を受けてしまう。
転倒した剣人の方にも炎の球が襲いかかり、剣人は大ダメージを受けてしまう。
「ぐわあああ!」
剣人とマーリは二人とも地面へと倒れ込み、起き上がることが出来なくなってしまった。
火炎魔術使い・ゴブリンはここぞといわんばかりに大量の炎を出してきた。
「このままじゃ、マズイ・・・・。」
なんとか起き上がろうとする剣人だがその前に炎の球が剣人たちに襲い掛かってきた。
「う、うわっ!」
腕で顔を抑え、ダメージを覚悟した剣人だが、炎の球が当たる直前、後方から何かが飛んできた。
ー{飛空斬}ー
白い斬撃が後方から飛び、ゴブリンの杖に当てたかと思うと、炎が効力を失ったのか消え去った。
「ぐっ、今のは空斬狼・ウルフのスキル?!!ということは新手の敵が?」
剣人はなんとか重たい体を起こして立ち上がり、後方を見る。
しかし、そこには狼などおらず、一人の女性が立っていた。
「冒険者?」
杖を飛ばされたゴブリンは杖を再生成した後、その女性の冒険者に対して炎を放つ。
しかし、その女性の冒険者は炎を回避し急接近する。
「はああ!」
彼女はゴブリンの胴体を真っ二つに切り裂いた。
「グエアアァ!」
「・・・・あっ。」
剣人はその光景をただ呆然と見ることしかできなかった。




