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第75話「これが、突入前ですよ───奥さん」

 タタタタ!


 物陰から飛びだす、小さな影。


『ブヒ?!』

『テ、敵───』


 オークの巨体が存外素早く反応するも、


「シッ!」

「ふん!!」

 鋭い踏み込みで短刀と、槍が繰り出されてオークを貫く。

 そして、一番奥側にいたオークが慌てて警笛を鳴らそうとした、そこに───、

「たぁぁあ!」

 パリパリパリと輝く電気の(ほとぼし)り!

 それは狙い疑わず、オークに当たる。

『ブガぁっっ───!』


 シェイラの魔法が直撃したのか、オークは体をビクリと硬直させて、ゆっくりと背後に倒れていく。


「……クリア!」

 サッと手をあげてリズがパーティに合図を送る。

「こっちもクリアだ」

「く、くく、クリアだよ!」

 グエンとシェイラも問題なくオークを殲滅。

 警報の類いは発信させることはなかった。


「オーケー。入口は確保したわね」


 一体一体トドメを刺しつつ、リズがオークの装備を改めている。


 ダンジョン入り口を警備していたのは、オークナイトだったらしい。

 装備はボロボロで、武器もチグハグであったが上位個体だ。

 そんなやつ、今まで湿地帯でみたことがない。

 つまり、件の魔王軍の敗残兵がそのまま見張りについていたとわかる。


「疲労、空腹、渇き───そして負傷、か……」


 リズは無感情にオークナイトの死体の検分を終えた。

 どうやら、随分お粗末な見張りだったようだ。

 そんな様子なものだから、グエン達に攻撃にろくに対処できずに殲滅されたのだろう。


 リズのクナイの連射と、

 グエンのソニックパンチ。

 そして、シェイラの電撃魔法。


 あっという間に数体のオークの死体ができた頃にはグエン達はダンジョンの縁に張り付いて、もう内部を窺っていた。


 ソッと内部を窺うリズ。


「…………一階層は通路型ね。近傍にモンスターはいないわ」


 そういって、手鏡をそっとグエンに渡すリズ。

 どうやら内部確認用のそれ(・・)らしい。


 ───ふむ……。


「……中央の通路は大型モンスター用か。あとは、脇道があるな───そこは、無理して探索する必要はないか?」


 手鏡に映した内部の様子を頭に叩き込むと、

 そっと、手鏡をシェイラに渡そうとしてから、思い直したように、ヒョイっと取り上げるとリズに返す。


「あ!」

「お前が見ても、しょうがねぇだろ……」


 「ぶー」とシェイラがふくれっ面をしていたが、知らん。


「脇道かぁ。さーて、どうかしらね。メイン通路だけに集中してると伏兵にやられる可能性があるから──」

「ふむ……。なら、どうする?」


 リズがふと考えこむ。

 そして、

「オークは知能があるけど単純よ。だから、」

「ん?……あー。同じ手を使うってことか」


 うん。とリズが元気に頷いて、くるーりとシェイラを振り返る。

「そーいうこと。…………ね、シェイラ♪」


 その笑顔と言ったら──。


「な、なに?」


 ビクリと震えるシェイラ。


「大丈夫よー。痛くしないから」

「そーそー。ちゃんと守ってやるからさ」


 ニッコリ×2


「え? え? え? ま、ま、ま」


 まさか────……!


「「そのまさか(・・・)。シェイラちゃんGO!」」

 いい笑顔の大人二人。

 シェイラがタラリと冷や汗を流す。


 そして───。


 や、

 や、

「やだーーーーーーー!!」


 ニッコリ笑う大人二人に、シェイラの悲鳴が続いたとか、響かなかったとか────。


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