第44話「なんだと……! やっぱりこうなるわなッ?!(後編)」
グルリと囲まれたグエン達。
さすがにこれには、ギルド職員も顔面蒼白。
殺気だった冒険者を押しとどめようとするが、突き飛ばされてしまうありさま。
暴力を仕事としている連中に事務職員がかなうはずもない。
「く! は、はなして! 放してよぉ!! リズさん、リズさぁぁん!」
ティナは一人、特殊警棒を取り出し、冒険者の群れに突っ込もうとしていたが、同僚に取り押さえられている。
「ティナ。大人しくしてなさいって。このくらいどぉってことないわ」
余裕を崩さぬリズ。
腰を半身に落とし、二手に短刀を抜き放つべく柄に手を添えていた。
そして、テーブルの上に立ったまま周囲を睥睨すると、
「マぁぁスタぁあ……。有象無象で、アタシが倒せるとでも──……? ふふふ。SSSランク──舐められたものね」
そぅっ……と、ほほ笑むリズに、マスターも凶悪な笑いで返す。
「は! 誰が一人でやるといったぁぁぁ?! マナァァアアアアック!!」
まるで、召喚獣でも呼び出すかのように、ギルドマスターはマナックを呼びつける。
当の本人はまだ事態についていけないらしい。
「は? え? お、おれ……? は?」
「はぁ?! じゃねーーーー!! マナァァァアアッッック! お前もやるんだよ!! 証拠隠滅だ!!」
「な? む、無茶な?!」
「バァカが!! このままじゃ、お前は破滅なんだだよ! リズが本部に報告しさえすれば、お前らは終わりなんだっつの! だから、こうなったら証拠をすべて消すんだよぉぉお!!」
「ぐ…………!」
そして、
「もとはといえば、お前らに付いた監察のせいだろうが! 俺は巻き添えだっつの! ならばよぉぉお──責任取って、小娘もグエンも殺せぇえ! 口を封じればどうということはないッ!」
無茶苦茶な理論だが、ギルドマスターからすれば、マナックたちの身元引受人になったがために、リズの追及を受ける羽目になったのだ。
一言いいたくもあるのだろう
───ま、自業自得だけどね。
「ちぃ!! しゃーねぇ、行くぞ!! 覚悟を決めろ、レジーナ、アンバス…………シェイラぁぁああ!」
「く……やむをえませんね」
「おうおう、こーゆのを待ってたんだぜぇぇ!」
「うう……ぼ、ぼくは──」
苦々しい顔のままレジーナも錫杖を構える。
そして、アンバスも楯を構えていつものパーティの陣形に!
「いくぜ! フォーメーション:アロー!」
ザザン!! と、息のあったタイミングで陣形を組むマナックたち。
だが、そこに加わるべきか否か、シェイラだけはいまだにオロオロとしている。
「ど、どうしよう…………ぐ、グエ───」
思わず差し伸ばした手が、ギルドマスターの背中に阻まれる。
「よーし! それでいい! お前らはリズを抑えろッ! 俺たちが援護する」
ギルドマスターの采配。
SSSランクのリズ一人に、SSランクパーティをぶつける。
いくら格上だとしても、この人数差……。
さらには、冒険者はその援護兼、悪事に片棒を担がせての口留めだ。
───実に無駄のない布陣だった。
グエン…………?
は、知らねぇっ~てよ。
「ち、舐められたもんだぜ」
「ほーんとね。誰が一番強いかも知らずに────」
シャッキン!
「後悔するわよー」
目にもとまらぬ速さで抜刀したリズが二刀をクロスして眼前に構える。
「策は?」
グエンも、とりあえず槍を構えようとするも、屋内では思ったより取り回しが悪いことに気づき、いつも通りの折り畳みスコップを構えた。
「さぁ? 出たとこ勝負よ」
ガクッ!
リズのマイペースさにグエンがズッコケル。
───ま、マジかよ……。
「なによ?」
「いや! なんかスゲー自信だから、何か策でもあるのかと……」
「あるわけないでしょ? っていうか、アンタこそそれなによ? スコップぅぅ??───様にならないわねー」
「うるさい。こっちのが性に合ってるんだよッ」
トン………………。
まったく悲壮感を感じさせずに、グエンとリズは背中合わせになり、クスクスと笑いあう。
「ま、なるようになるでしょ?」
「だな」
リズを半包囲するマナック達と、冒険者を指揮してグエン達を圧殺しようとするギルドマスター。
その状況においても二人は余裕ですらあった。
「ち──何を笑ってやがる! やれよ、マナックぅ!──そして、いけ! てめぇらぁぁああ!」
マナック達と冒険者に突撃を促すギルドマスター。
その瞬間、戦闘の火蓋が切って落とされる!
「「「うらぁぁああ!」」」
手始めに、遠距離攻撃職の弓手たちが、掛け声とともに味方の損害など知らぬとばかりにグエンめがけて矢を放つ。
「な、屋内で弓ぃぃい?!」
敏捷9999のグエンにはもちろん、弓矢ごときの動きは見えていたが────この距離では躱せない!
いや、正確には躱せるのだが、躱してしまえばリズに────……。
ばーか。
「へ?」
「余計な気を使わなくてもいいってば!」
キキキィィン!
グエンの背中を軸にスルリと位置をスイッチしたリズが、矢を弾きながら答える。
まるで背中に目がついているカのようだ。凄い……!
そのまま、グエンと立ち位置を変えてリズは冒険者たちに────。
そして、グエンはマナック達に向き直ることになった……。
「こっちは任せなさい。グエン──……そいつらは、アンタの手でケリをつけるのよッ!」
「あぁ……」
そうして、グエンは再びマナック達と相対することになる。
……………………今度は敵、味方として──……




