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第12話

 ケリーが朗読員になって、一週間が経った。


 この一週間は、大佐はケリーにあまり仕事を頼むつもりはないようで、まずは慣れてほしいと言って、毎朝新聞を読む以外は仕事を頼むことはなかった。


ケリーは新聞をめくりながら、書斎の中や大佐の様子を観察していた。まだ緊張して手に汗がにじんでくるけど、ケリーは毎日、目的を忘れずに目的のために行動していた。


 新聞を読んでいる間、大佐は椅子に座って腕を組んで聞いていた。

 ケリーが言葉に詰まったり、分らない言葉があると説明してくれるが、なにやらずっと、考え事をしているように見えた。


 ケリーは、あの日ほど豪華ではないけれど、毎日大佐の家でお昼をご馳走になっていた。最初は戸惑っていたけれど、むりやり食堂へ引っ張るローラさんに負けてしまっていた。でも、余った料理は持って帰らせてもらえたので、お母さんへのお土産を毎日持って帰ることができた。


 この日も新聞を読み終え、ケリーは大佐やローラさんたちと一緒にお昼を食べた。帰ろうとしたとき、ローラさんがお昼に出たステーキをサンドウィッチして五つも持たせてくれた。その後ろで、杖を突いた大佐が口を開いた。


「ケリーくん。そろそろ朗読員の仕事には慣れたかね?」


 ケリーは、大佐が声をかけてきたのでドキッとしながら、サンドウィッチが入ったカゴをギュッと握った。

「は、はい。なんとか」


「そうか。なら、明日から新聞の量を増やすことにしよう。今までなかった町のものもあるからね。それから、これからは新聞だけではなく本も読んでもらうこともあると思うから、そのつもりでいなさい」


 ケリーは「はい」と返事をした。


「よろしい。大変になるが、よろしく頼むよ。では、帰り道には気をつけて」

「はい。ありがとうございます」


 ケリーは大佐にお辞儀すると、ローラさんやフリッツさんにも挨拶をして、丘を下っていった。


 町に戻ると、まだ何人かの大人がケリーに仕事を変わってくれるように頼んできた。ケリーはうんざりしながら「兵隊を呼ぶよ」と言って、囲んでいた大人たちから抜け出した。


 ケリーはそのまま掲示板を通り過ぎ、町に唯一ある小さな噴水まで足を進めた。ケリーが到着すると、噴水の前でハトを追いかけていたジャックが、ケリーの傍まで駆け寄ってきた。


「よぉ、おつかれ。今日は何をもらったんだ?」


 ジャックは、ケリーが持つカゴを覗きながら言った。


「ローラさんが、お昼に出たステーキをサンドウィッチにしてくれたんだ」


 ケリーは、カゴを開いて言った。


「お! ならちょうどいいじゃんか。オレ、パパ達にひみつだからさ。あんまりパンを持って来られなかったんだよ。でも、それがあれば十分だよな」


 ジャックは、袋に入った小さなパンを見せながらニカッと笑った。


「うん、そうだね。じゃあ、早く持って行ってあげようよ」


 ケリーとジャックは、それぞれが持った食べ物が揺れないように注意しながら、家々の間を駆けて行った。


 二人はある家の近くまで来ると、物音を立てないように気をつけながら、裏に回った。

 そして、慣れた手つきでレンガや木材で足場を作った。ジャックは、袋を口にくわえたまま、猫のようにスイスイと足場を登り、壁を蹴って民家の屋根に上った。ケリーも続いたが、サンドウィッチが入ったカゴが邪魔でうまく登れなかった。


 途中まで登ったところで、ジャックにカゴを渡してしまうと、ケリーもあっという間に屋根まで登ってしまった。二人は得意げに笑い合うと、太陽を浴びて熱くなった屋根の上を足音を立てないように進んだ。


 進んだ先には、ケリーたちがやっと通れるくらいの窓があって、ジャックは窓をノックしながら小さな声で言った。


「おい、エミリー。パンを持って来てやったぜ」

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