真夜中の価値
あの時の記憶がやけに、染み込んでて、
漂白しても取れない。微睡んであの日を見ない楽園は、凡俗的に量産された四角冂に突っ伏した感覚に吐される。
僕の平凡な脳は、狂ってしまいたかった様で、身体を縛る、白い静かな個室に酔ってしまう事に逃げてしまいたかった。ただそれも出来ないほど無能な僕は、
本棚達の狭間に頭と記憶と身体をめり込ませ、その細胞で脳味噌の容量を埋めていった。情報を詰める事で僕の中の貴女を削除してしまいたかった。
愚鈍な電気信号は目的を忘れたのか。
見ない、見えない、見たくないからか。
後悔の棺が目に留まったので、
融解点を越えた、僕の脳髄を焼き切ってくれないか。
狡猾で、悪辣な日が廻ってくるんだ。
正解を求めた生活は秒針の針を皮肉にも描写しているんだ。
柔らかなあの肉を切った瞬間は、あの時に返却された再生紙に惹かれた赤インクを僕の塵溜から引きずり出した様だった。
僕の隣で笑顔を描いていた、僕の中では逆光で見えないあの娘の顔は、夕陽に輪郭をなぞられていた。塵溜の海に揺蕩う一輪の硝子細工の貴女の記憶にどうしても縋って閉まっている。
あの日は窓から入った、暖かく冷たい息が貴女の艶やかな黒を揺らしていた。
僕のからだは重力に従属していて、後はあの瞬きの数秒で、灰色の地面を濡らしてしまうのだろう。




