オタクでもやしな俺の種目決め
宜しくお願いいたします。
白川さんの取材に協力するようになってから早くも三週間が過ぎた。
林間学校後は、周りからの視線のこともあり、放課後にファミレスで話す程度のことしかしていなかった。
放課後デート?
ファミレスでお茶会だ。分かったな?
そして、今日、この時間、
「これから体育祭の出場種目を決めたいと思いまーす!!」
「「「「いぇーーーい!!」」」」
インドア派の人間には辛いイベントの1つ、体育祭。その種目決めが行われようとしていた。
因みに、前回のイベントの林間学校から3日しか経ってない。
「それじゃあ、去年と変更されたルールを説明していくね~」
司会が説明している間に我が校の体育祭について説明しようと思う。
俺たちが通う南桜高校では体育祭を学校で行う。
雨の場合は延期。
まあ、一般的な体育祭だと思う。
この学校には一学年8クラスある。
それを各学年2クラスずつ、赤、白、黒、青の4チームに分けて勝敗が争われる。
クラスリレーなどのようにクラスごとに争われる競技もあるがそれらの競技に得点はない。
が、クラス競技ではそれぞれの競技に豪華な景品があるためクラス競技に力を入れるクラスも多い。
内のクラスもその1つである。
因みに、去年のクラス競技の景品は食券1ヶ月分(クラス全員分)である。
そのお陰で去年は1ヶ月お昼の食費を抑えられたのだがそれは別の話。
こんなことを話している間に競技決めは進んでいた。
現在、クラスリレーの出場者が出揃った。
最後はチームリレーである。
あ、俺は玉入れと借り物競争に入れときました。
やっぱり楽なのが一番!!
「じゃ、最後にクラスリレーね。出たい人いますかー?」
司会の女子が元気よく訊ねる。
だが、誰も手を上げない。
「え~、いないの?誰かやってくれない?」
クラスリレーは直ぐに決まったのにチームリレーは決まらない。
悲しいかな、人は物に吊られる。
「クラスリレーに出場してる人が出ればいいんじゃない?」
インドア派の人間が提案する。
「話聞いてた?クラスリレーに出場する人はチームリレーに出れないのよ」
クラスリレーに出場する女子が答える。
なるほど、今年からの変更のせいで現在の状況になってるのか・・・
「じゃあ、私出場してもいいかな?」
話し合いが停滞する寸前、救世主が現れた。
希望したのは白川さんだった。
「うん。いいね。要項にも引っ掛からないし女子は白川さんにお願いします」
あれ?要項?
「あと男子二人、お願い、誰か出てくれない」
司会女子、泣き目である。
「じゃあ、俺出るわ」
シュンが手を上げた。
「マジ?ありがとう。助かるよ!!あと一人!!あと一人出てください!!」
司会女子大喜びである。
シュン、お前、白川さんがいるから出場したわけではないよな?
「そういえば、何でリョウは主要種目に出てないんだ?去年はいっぱい出てたのに?」
俺は、得点が入らない種目にしか出ていないことに気になり、リョウに訊ねた。
「聞いてなかったんだね・・・。僕は出場制限選手に含まれているんだ」
「出場制限選手?」
俺は聞き覚えのない言葉に首を傾げる。
「今年から追加されてね、僕や白川さん、騎士団団長の浅井が含まれてるんだ。理由は、白川さんの場合、場合によっては騒ぎが起きる、男子が。僕と浅井は出場するだけで勝敗が決するからというのが理由だよ」
「確かに・・・」
俺は去年の事を思い出しながら顔をひきつらせる。
去年の体育祭、リョウと浅井が出場した種目は圧倒的な差がついて勝敗が決していた。
もちろん二人が居るチームがだ・・・
白川さんは騎馬戦に出場したのだが、騎馬が崩れ落下した時、多くの男子生徒が暴徒化して大変だったのだ・・・
2つの事を思い出すとこの処置は正しいように見えて来てしまった。
「じゃあ、タイム順で良くない?」
いつの間にか話し合いが進んでいたのだが、ちょっと待て、今、何言った?
「そうだね。あ、残ってる中で一番速いのは・・・高橋君。高橋君宜しく!!」
司会女子、勝手に決める。
「拒否権は?」
「ま、いいじゃん。頑張ろうぜ?」
クラスの男子が声をかけてくる。
お前は自分が走りたくないだけだろ・・・
「あの~、俺、もやしなんですけど・・・」
「「「関係無い!!」」」
俺の言葉にクラス全員が反応する。
「ですよね~」
こうして、小説のネタにする為に主要競争に出る予定のなかった俺だったのだが、誠に遺憾ながら目玉競技に参加しないといけなくなってしまった。
この日から練習は始まり、俺と白川さんのファミレス会議は暫くの間お休みとなった。
日は巡り、二週間後、俺達は体育祭当日を迎えた。
いや本当に、何でオタクでもやしな俺がリレーに出るんだよ・・・




