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ドキドキ!?肝試し

更新しました。

宜しくお願いいたします。


「すいませんでしたーーーー!!」


 現在、肝試しの組み分けが行われたのだが、俺は新田さんとのペア権を見事引き当て土下座していた。


 肝試しのペア決めはくじ引きで決めることとなった。

 女子が数字を決め、男子がくじを引く。

 くじに書いていた数字と同じ数字を選んだ女子がペアになるというシンプルなやり方なのだが・・・


 一人目、シュン


「は?島?ナニコレ?」


 見事ハズレくじを引き当て、違う班(余りの男子)の元へと島流しとなった。


 そして、二人目の俺なのだが・・・


「二番だ。で、どっちが二番?」


「私です」


 見事、新田さんとのペア権を白川さんか新田さんかの2分の1の確率を悪い意味で引き当てた。


「じゃ、僕が白川さんとだね。宜しく」


「あ、は、はい。良平君、宜しくお願いします」


 リョウは、苦笑しながらこちらを見ていた。

 この時の男子達の視線は言わずともである。

 


「じゃあ、一班から入って行け。何かあったら直ぐに叫べば。見捨ててやるからなーー!!」


 教師と思えない台詞が混ざりながらも担任教師の声を合図に肝試しは開始された。


 今回の肝試し、このイベントは自由参加型である。

 こういうのが苦手な生徒達は、部屋で自由時間となっている。

 と言っても、ウチのクラスは全員参加しているのだが・・・


「「うぉーーーー!!」」


 シュンとそのペアの子(男子)の野太い悲鳴が響く。

 一瞬、白川さんが顔を青くしてビクッとした気がする・・・


「次、三班の生徒入っていいぞ!!」


 やっと出番が回ってきた。

 だが、このまま行くわけには行かない。


「リョウ、俺、トイレ行ってくるから新田さんも含めた三人で入っといて。悪い」


 二人っきりにさせてあげることはできないが俺と肝試しするよりはいいだろう。

 そう、判断して、俺は嘘をついた。


「急にどうしたんだい?」


「緊張でトイレに行きたくなっちまったんだよ。あとよろ!!」


 俺は、リョウが何か言いおうとしたのを遮りトイレへと駆け出した。




「高橋!!お前がラストだ、早くしろ!!」


「はーい」


 トイレから帰ってくると、教師以外誰もいなくなっていた。

 他の班員達は既に肝試しを開始していたのだ。

 一人で林の中に入るのか・・・


「高橋君、早く行こう!!」


 一人で行く気だった俺に、最近、良く聞くようになった声がかけられる。

 声の主は白川さんだった。先生の影に隠れ、姿が見えなかったのだ。


「なんでいるの?」


 俺は素朴な疑問を口にする。

 彼女はリョウのペアだった筈だ。

 リョウの姿はないため、ここにいる理由が思い当たらない。


「高橋君一人なのは可哀想だから待ってたの。早く行くよ!!」


 彼女は俺の背中をグイグイと押し、肝試しの舞台である林の方へと急かされる。

 俺は、教師の暖かい視線を受けながら林へと足を踏み入れた。


 辺りは静寂に包まれている。

 仄かに匂う土の匂い。

 灯りは星の光と手元の懐中電灯だけ。

 不気味というよりは心地の良い静けさだった。


「きゃ!!」


 木々が風で揺れた瞬間、白川さんは驚きの声をあげて腕にしがみついてきた。

 腕には柔らかい感覚が伝わり、近くにある彼女の髪からはシャンプーの良い匂いが漂い、自分の顔が熱くなるのがわかる。


「怖いなら参加しなければ良かったのに・・・」


 俺は、少し呆れつつ独り言を呟く。

 正直、さっきから白川さんにしがみつかれたままなので男としては嬉しかったりしているんだけどね・・・


「だって・・・、ウチのクラス、全員参加するって聞いたから1人だけ参加しないのもアレかなと思って・・・」

 

 独り言は聞こえてしまったらしい。


「ま、全員出席だとね・・・」


 俺は彼女の言葉に苦笑いを浮かべる。

 多数決とかで押しきられるのと同じイメージだろう。

 全体の流れには逆らいづらいよね。


「だ、だからいいでしょ。早く行こう」


 彼女は、自分では先には進めないらしく目で先に行けと言ってくる。


「了解ですお嬢様」


 俺はそんな彼女に思わず頬が緩まるのを感じながら言葉を返した。



 その後、お嬢様の悲鳴は断続的に鳴り響いた。



 暫く歩いた後、綺麗に円形に木々が開けている場所に出た。


「うわ~、綺麗~!!」


 彼女は、俺の腕から離れ、感嘆の声をあげる。

 

 星と月の光が射し込む。

 辺りの木が光を受け仄かに輝く。

 円の中心から見た夜空は、自然のプラネタリウムであった。


「本当に綺麗だな・・・」


 神秘的な光景に心を奪われていた。


「スポットライトみたい」


 光が集まっている中心部で彼女はくるりと回る。

 光を全身に受けた彼女は、まるで森の精霊のように美しかった。


「これを見れただけで頑張ったかいがあったよ」


 光の中で、えへへと笑う彼女に完全に見惚れていた。


「良かったな」


 俺は何か言わないと思い口を開く。

 だが、出てきた言葉は素っ気ないものだった。


「うん。・・・・・・ねぇ、少しだけ踊らない?」


 彼女は俺との距離をつめて告げてくる。

 彼女は、今、目の前にいる。だが、影の中にいるのでどんな表情なのかは暗くて分からない。


「俺、踊れないと思うんですけど・・・」


「ステップ踏むだけでいいよ、はい」


 彼女は、俺の言葉を了承と受け取ったのか手を差し出してくる。

 俺は少し迷いながら彼女の手を取る。


「じゃあ、曲流すね」


 白川さんは、手を繋ぐ直前にスマホを操作する。

 手を繋いだ直後、曲が流れ始めた。


「右、左、右、左、そうそう。上手だよ」


 彼女に引かれながら体を揺らす。

 繋いだ手から夜の寒さを忘れさせる程の熱が伝わってくる。

 白川さんの白い肌や綺麗な顔、細い手などが彼女が魅力的な女性であることを強く意識させられる。


「ふぅ、ありがとうね」


 おおよそ五分、だが、何時間にも感じられた長い時間が終わった。


「早く行きましょう。皆着いてるだろうから」


 俺は心臓の鼓動を誤魔化すように彼女に告げる。

 ドクンドクンとうるさいほどに、しんどいほどに鳴る。

 

「う、うん」


 俺の言葉を聞き、少し、淋しそうな表情を見せる。 

 そんな彼女に、心臓がキュッと痛む。


「・・・・・待って」


 この場を離れようと足を動かしたその時、彼女は俺の服の裾を掴んで呼び止めた。


「さっき、にーちゃんと何を話してたの?」


 刹那、先程とは異なる理由で心臓が高鳴る。

 にーちゃんは新田さんのあだ名だ。

 彼女の言葉から、恐らく会話を聞かれていないことは分かる。

 だが、もし聞かれていたらと思うとモヤッとした黒いものが心を包んだ。


「ち、ちょっと相談してたんだ」


 声が裏返りかける。

 自分で予想していたよりも遥かに焦っていた。


「何の相談?」


 彼女の目は不安で揺れているように見えた。

 何を恐れているのかは分からない。

 が、彼女を不安にさせた自分に嫌悪感を抱いてしまう。


「・・・・・・白川さんのこと」


 俺は、本当のことは言わず嘘で言い繕う。

 彼女の不安を取り払うことが出来る言葉を探す。


「俺と関わるようになってから迷惑かけてないかな~って。俺、男子達に目を付けられてるから色々聞かれてるかと思って」


 後で新田さんに話を合わせて貰わないと。

 そんなことを考えながら白川さんの言葉を待つ。


「わ、分かった。強引に聞いてごめんなさい。教えてくれてありがとう」


 彼女は言うと、俺に背中を向け先を歩いていく。


「嘘つき・・・・・・」


 彼女は小声で何かを呟くが、何を言ったのか聞き取ることは出来なかった。




「きゃーーーー!!」


 彼女が悲鳴をあげたのはそれから暫くしてからのことだった。



「お疲れ様」


 肝試しのゴール地点、出迎えたのはリョウだった。

 他の生徒は既にコテージに戻っている。

 因みに、白川さんは先程の恐怖が忘れられず俺の腕にしがみついたままである。


「白川さんと話はできたかい?こっちに来てから話してなかっただろう?」


 リョウは俺の耳元で小声で呟く。


「そっちこそ、新田さんと二人っきりだったんだろ?何かあったか?」


 俺は反撃を試みる。


「何もなかったよ。で、この謎生物はどうするの?」


 彼は話題を変えながら俺の腕に居すわる白川さんのことを見ながら呟く。

 たぶん何かのあったな・・・


「新田さん、お願いしても・・・」


 俺の言葉の途中で新田さんは首を横にブルブルと振ったので諦める。


「はぁ~~、白川さん、もう着きましたよ。離れてください」


 声をかけるのだが、


「い、イヤ」


 首を横に振り、濡れた瞳でこちらを見つめてくる。


「はぁ~~、コテージまで一緒に行くか・・・」




 この後、白川さんをコテージに送り届けたのだが、それを見ていた女子達には暖かい視線を向けられた後、話を聞かれ、男子達には虐められるのはまた別のお話・・・


 なんとか肝試しを終えた俺達は、林間学校の一日目を終えた。


『あの、私達と世界を救って貰えませんか?』


 否、まだ終わっていない。

 長い、長い夜を迎えることとなったのだった・・・・・・


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「で、何で皆眠そうなの?」


 無事復活した白川さんは俺達のことを見てため息混じりに呟く。

 現在、4班(コテージが同じ生徒達)と一緒に林間学校最後のイベント、散策をしているのだが、俺達男子は全員あくびを噛み殺していた。


「昨日の夜、世界を救ってきたんですよ。で、寝不足です」


 俺は深夜テンションに近い状態で真実のみを告げる。

 

「何バカなこと言ってるの?」


 白川さんは珍しく軽蔑の視線を向けてくる。


「で、4班の男子組の言い訳は?」


 4班の班長である女子が訊ねる。


「「「俺達も世界を救うのに巻き込まれた・・・・・・」」」


 ごめんよ、4班男子、巻き込んじまったよな・・・


「「「はぁ~~~~」」」


 女子達のため息が重なる。

 

「「「・・・・・・」」」



「どうせゲームの話でしょ?男子って本当にバカなんだから」


 4班の班長がテンプレな台詞を呟く。


「「「ゲームではなのに・・・・・・」」」


 しょんぼりした4班男子を放置して先に進んでいく。


「まぁまぁ」


「「「誰のせいだよ!!」」」


 リョウの言葉に突っ込みが入る。

 リョウがTRPGを提案したのがいけなかったのだ。


「「「ちゃんと寝たリョウ君に当たらない!!早く着いてるくる!!」」」


 そこで、昨夜あった話は一旦終わり、俺達は女子達を追いかける。


 散策?女子の尻に敷かれてました・・・・・・

 




 無事、全ての予定を終えた俺達は、帰りのバスに乗っていた。

 ほとんどの生徒は眠っていた。

 リョウは新田さんの隣(仕組みました)、俺の隣には白川さんが、シュンは・・・(先生の隣)になっていた。

 なんか、シュンがもう、悲しすぎる・・・


「にゃ~~」


 隣で変な寝言を呟く白川さん、可愛い。

 ではなく、現在、俺の肩に寄りかかって彼女は睡眠を取られていた。


「で、ヤバくない?」


 そう、ほとんどの生徒は眠っている。

 だが、例外がある。

 騎士団だ。

 騎士団のメンバーが俺を睨んでいた。


「まぁ、大丈夫でしょ」


 昨日、俺が襲われた時に助けなかったよな・・・


 だが、気持ち良さそうに眠る彼女を起こす勇気は俺にはない。

 彼女の役にたてるならその後のことなんてどうでも良くなる。


「なぁ、リョウって好きな人いるのか?」


 何となく、本当に何となく聞いていた。


「どうしてだい?」


 俺の突然の質問にこちらの真意を図る視線を向けてくる。


「いや、何となく・・・・・・」


 新田さんの為に聞いた訳ではない。

 だが、聞かずにはいられない気がしたのだ。


「そうか。好きな人・・・ね。居るよ」


「へぇ~~、居るん・・・・・・え?居るの?」


 いつもなら居ないと答えられたのだが、予想外の答えに驚く。


「まあね。どうせフラレるから告白なんてしないけど・・・」


 美幼女よりも、美少女よりもその子の方がいいのか・・・・・・

 というか、フラレる?

 何かの間違いでは?

 天下の主人公、リョウ様よ?


「ふ~~ん」


 適当な相槌を打ってしまったのは許してほしい。

 リョウは、気に止めることもせずそのまま眠りに入る。

 

 俺は、白川さんの目にかかった髪をそっと手でよける。

 そのまま、手櫛をしようとしかけて思い留まる。


「俺も寝よう」


 俺は目を閉じる。

 直ぐに、心地の良い眠気が意識を襲う。

 そして、気づいた時には深く寝入っていた。


「私、魅力ないのかな?」


 静寂が支配したバス内で、一人の少女の言葉がそっと消えた。


 その後、バスは何事もなく解散場所である学校に着いた。

 こうして、二年生になってから初めての学校行事は終わりを告げた。

次話は一週間以内に投稿したいと思います。

宜しくお願いいたします。

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