予定
結局更新遅くなりました・・・
すいません
「なんか悔しいな~~」
白川さんはムスッとした表情で呟く。
場所はファミレス。
時は放課後。
俺は、白川さんに誘われ、所謂放課後デートというものを楽しんでいた。
すみません。実際は反省会的な何かです。
「何がだよ。投票結果は白川さんの圧勝だっただろうに・・・・・・」
俺は、言いながらコーラを口に運ぶ。
「だって~~」
圧勝した筈なのに納得がいってなさそうな彼女。
「白川さんって、かなりの負けず嫌いだよな~~」
そんな彼女の姿に、本音をボソリと溢してしまう。
「ち、違うよ。そうじゃなくて・・・・・・。ま、いいや。それでいいですーー」
彼女は拗ねたようにプイッと顔を横に反らす。
「悪い悪い。飲み物、何がいい?」
「メロンソーダ!!」
彼女は俺の言葉にニコッと笑って答える。
こんなことで機嫌が取れるなら安いものだ。
「で、高橋君は夏休みって暇?」
アバウト過ぎませんかねその質問。
まあ、わかるけど。
「基本いつでも空いてる」
俺は、スマホでカレンダーを確認している振りをして答える。
「わかった。じゃあ、これ、見てみて」
彼女から送られてきた画像を表示する。
そこには、様々な予定が書き込まれていた。
「プールに、キャンプに、花火大会・・・・・・」
その予定を見て、こっそりとため息を溢してしまう。
バイト入れなきゃ・・・・・・
「どうかな?」
彼女は上目遣いで尋ねてくる。
断れるわけないだろ・・・・・・
「大丈夫だと思う。他に誰か誘ったりするのか?」
俺は、予定と大まかな予算をカレンダーに打ち込みながら尋ねる。
「そうだねー。大人数で行った方が楽しそうだよね~」
「そうだな。それじゃあ、シュンとリョウに声をかけとくわ。女子の方は宜しく」
俺、個人としては白川さんの水着姿を独占したいので他の二人を誘いたくないというのが本音だ。
だが、彼女がみんなでというなら一応声をかけた方がいいだろう。
こんなことを考えてしまう自分が嫌いになってくる・・・
「誘うのはにーちゃんと舞ちゃんでいいよね?」
「あ、ああ」
考えごとをしていた為に、反応に遅れてしまう。
「なに~~、私が誘った人達じゃ不満?気になる女の子でも呼びたいの~~?」
白川さんはニヤニヤした表情で尋ねてくる。
気になる女の子は貴女なんです。
ま、言える訳がないが。
「いや、考え事してただけ。ごめん」
俺は気持ちの切り替えも兼ね、コップに入ったコーラを飲み干す。
そこで、例の連絡アプリの通知音が鳴る。
「あ、ごめん。私、用事入っちゃった。帰らなきゃ・・・」
「おけ。じゃあ、俺も帰るか」
立ち上がり、先に会計を済ませてくる。
「あ、お金」
「いいよ。今日は俺の奢りで。急いでるんだろ?早く行きなよ」
「ごめん、ありがとう。じゃあね」
白川さんは駅の方へと走っていく。
「帰るか」
俺は、白川さんが向かった方とは、反対側の道を進んでいった。
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「暇だ・・・」
8月1日、電車に揺られている俺は、あまりの退屈さに言葉を溢していた。
「耐えろ、ジュン。楽園はすぐそこだ」
向かっている先は、プールだ。
少し遠目の場所にある大型プールに向かっている為、移動時間が長い・・・
「退屈すぎて頭がおかしくなってない?」
「いえ、兄はいつもですから」
変なことを口走るシュンに女子二人の辛辣な声がかけられる。
白川さんと舞ちゃんだ。
因みに、リョウと新田さんは少し離れた所に二人で座っている。
いい感じの雰囲気が流れてくる。
甘い、甘すぎる・・・
「あの二人って付き合ってるんですか?」
舞ちゃんはぽそりと尋ねる。
「ううん。たぶん、付き合ってないよ」
白川さんは、そう答える。
その視線は、どこか気まずそうな、そして悲しそうな雰囲気を秘めているように感じた。
「くか~~」
シュンは今の一瞬で寝てしまっていた。
頭を肩に載せるな。男にやられてもうざいだけだ。
俺は、肩を動かしシュンの頭を壁側に傾けさせる。
ゴツンと痛そうな音が鳴ったが、相も変わらず眠っている。
「隣、変わってもらってもいいか?」
俺は、舞ちゃんに尋ねる。
「え?」
「いや、シュンが邪魔だからさ」
俺は苦笑いを浮かべながら理由を告げる。
「し、仕方がないですね。兄の面倒を見るのも妹の役目ですから」
舞ちゃんは、渋々提案を受け入れる。
だが、言葉とは裏腹に顔は嬉しそうだった。
あんなに羨ましそうな視線で見られたら・・・ね。
「優しいね」
「何がだよ?」
「わかってる癖に」
白川さんは言うと、俺の肩にポンと頭を置く。
刹那、心臓が早鐘を打ち始める。
心音が聞こえていないか。
思わず不安になる。
「私も高橋君の優しさに甘えさせてもらうね」
彼女は静かに目を閉じる。
「好きにしろ」
俺は、恥ずかしさを誤魔化すように視線を前に移す。
前方では、舞ちゃんが、シュンの頭を優しく撫でていた。
「え、え~~とこれは、そう。埃、埃が付いてたんです」
舞ちゃんは、視線に気づき、頭から手を離す。
俺は、白川さんに視線を送る。
すぅ、すぅと静かに眠っていた。
そんな彼女の頭に手を載せ、優しく撫でる。
その後、手櫛で彼女の髪を梳く。
「お互いさまだろ」
俺は、舞ちゃんに告げる。
彼女は、目を見開き驚いていた。
「先輩変わりましたね・・・」
「そうか?」
何も変わってなどいない。
ただ、白川さんが好きだということに気付いただけだ。
「そうですよ。先輩、凄く優しそうに笑うようになりましたから」
彼女は、慈愛に満ちた表情で告げてきた。
「そうかな?もしそうなら、こいつのお陰だな」
俺は、気持ちよさげに眠る彼女に視線を落とす。
「お兄ちゃんがいなかったら思わず惚れてました」
小悪魔のような表情の彼女にドキリと心臓が高鳴る。
「俺も白川さんがいなかったらお前のこと好きになってたかもな」
仕返しとばかりに言い返すが・・・
「ロリコン・・・」
「酷いな~~」
すげなくあしらわれた。
「ははは」
「ふふふ」
思わず、顔を見合わせて笑ってしまう。
「先輩、自信、持ってください。先輩は、先輩が思っているより魅力的な男性です」
舞ちゃんは、突然、真剣な表情で告げてくる。
「どうしたんだよ急に?」
彼女の言葉の真意を理解できない俺は、困惑しながら尋ねる。
だが、彼女は俺の言葉に答えず続ける。
「白川さんと釣り合わないなんて思わないでください」
思わず、顔が強張る。
それは、今まで何回も考え、後回しにして逃げてきたことだから。
「先輩は、白川さんに相応しい人間です。先輩はこの世界で、・・・・・・お兄ちゃんの次に良い男なんですから」
彼女は、優しく微笑み、告げてきた。
「そこは一番にしてくれよ・・・」
「譲れません!!」
「ははは」
「ふふふ」
また、互いに顔を見合せ笑ってしまう。
「ありがとう」
俺は、一言だけ告げる。
「はい。どういたしまして」
彼女はそれっきり、何も喋らず窓の外を眺め続けた。
「相応しい・・・か」
俺は、目的地に着くまで、白川さんの寝顔を見ながら舞ちゃんの言葉を噛みしめていた。
そして、気付いた時には意識は暗闇の中に沈んでいた。




