結果
「脚本って思ってたより文章量少ないな」
俺は、手元の資料に目を通しながら呟く。
『そう?私からしたら普通だけどな~~』
スピーカーから、白川さんの声が響く。
現在、俺は文化祭で使用する脚本の制作に取りかかっている。
前半部分は統一することとなった為、白川さんと電話越しに会話をしながら執筆している。
「で、最初どうする?俺は・・・・・・」
俺は、自分が考えている構想を話す。
『だったらさ~~』
所々、白川さんに修正を頂くことになったが、大まかな流れは最初に提示したものとなった。
『じゃあ、そろそろ電話切るね。互いに内容は秘密のほうがいいでしょ?』
「そうだな。それじゃ」
俺は、通話を終える。
「白川さんに勝てる作品・・・か」
俺は、自分の思う通りに書き出していく。
書いては消して、足りなければ加筆して、時間だけが過ぎていく。
途中からは、学校を欠席して執筆に時間を当てた。
実力や才能がないなら時間で差を埋めていくしかない。
そして夏休み前最後の登校日、ギリギリ完成した原稿を持って家を出た。
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「じゃあ、読み終わった人は、自分の好きな方へ投票してくれ」
配布された脚本に目を通した俺は言葉を失っていた。
登場人物の想いが深く込められた台詞。
それぞれの思惑がからみあった行動、伏線。
物語の着地点。
全てが絡み合い、重厚な物語を奏でていた。
「本当にスゲーな」
俺はボソリと呟いていた。
今回、時間が少ない中だったが、自分の中では満足のいく物が出来たと考えていた。
でも、やっぱり敵わないな・・・・・・
「あれ?皆読み終わってないのか?決めた人はさっさと投票してくれ」
シュンは、投票箱を振りながら告げる。
どうやら、まだ誰も投票していないらしい。
恐らく、誰もが白川さんの作品に感動しているのだろう。
というか、選挙みたいな箱を用意しなくても挙手でいいじゃん・・・・・・
「凄く悩むな」
リョウは唐突にボソリと呟いた。
「え?いやいや、こんなの決まったようなもんだろ?」
俺は、白川さんの対抗馬が自分であることも忘れ、そんなことを言ってしまう。
「確かに、ほとんどの部分がこの2の物語として全般的に上だよ」
リョウは白川さんの脚本をひらひらとさせながら呟く。
「だけど、エンディングは、1のほうが好きだな」
「いやいや、2の方がいいだろ?」
リョウの言葉に思わず反論してしまう。
白川さんと俺の脚本の大きな違いはエンディングだった。
白川さんの脚本では、ヒロインが主人公に想いを託し息を引き取る。
俺の脚本では、手術を成功させ、主人公に告白する。
というものだった。
白川さんの脚本は、全てがエンディングに繋がるように書かれており、全て読み終わった時には思わず涙を流してしまうほどの内容だったのだ。
正直、俺のエンディングはご都合主義と言われればそこまでの内容なのだ。
「確かに、都合がよい展開だとは思う」
リョウは俺の考えと同じことを呟く。
「だけどさ、それでもいいと思えてしまう何かがあるんだよ。ごめんね、上手く伝えられなくて」
リョウは優しく微笑みながらそう締めくくった。
「そう・・・・・・か」
正直、そんな感想を貰えたことが意外で仕方がなかった。
惨敗だと思っていたのだ。少しでも対抗できただけ良かった。
「やっと投票が終わったので結果を発表するぞ。えーと選ばれたのは2番の、白川さんが書いた脚本になりました」
クラス全員が白川さんに拍手を送る。
白川さんは少し照れくさそうに笑っていた。
こうして、脚本勝負は白川さんの勝利で幕を閉じた。
更新遅くなって申し訳ないです。
今回は短めです。
次話は早めに更新できるように努力します。
次話も宜しくお願い致します。




