対決
更新しました。
宜しくお願いします。
「それではー、文化祭の出し物を決めたいと思います!!」
今日はハイテンションランドに行った翌日。
俺は昨晩、家で羞恥と後悔とその他諸々の感情のせいで身悶えていたため、寝不足な頭を精一杯動かし眠らないよう試みていた。
そして、視線の先では、三ヶ月後に迫った文化祭の出し物決めが行われていた。
みんな気が早くない?
「ジュンは何がいいと思う?」
隣に移動してきたリョウに声をかけられる。
「別に、何でも・・・」
正直、何をしようと興味はない。
どうせ、雑用係をやるのが落ちだ。
「ふ~~ん。演劇とかになったらキスシーンあるかもよ・・・・・・ 」
リョウの呟きに体をビクンと跳ねさせる。
そんな俺を、リョウはニヤニヤしながら見てくる。
「自分の気持ちに素直にならないと後悔するぞ~~」
リョウはそう言うと離れていく。
その声は、実感が込もっていた気がするのは気のせいだろう。
「あ、私、演劇やりたい!!」
一人の女子生徒が大きな声で意見を述べる。
その声に賛同の声が重なる。
なんだこれ?ラノベ展開か?
ヒロインがヒロインして主役が主役するやつ?
俺は回らない頭でそんなことを考えながらワクワクしながら会議の進行を見守る。
暫くの議論の後、演劇に決まりかけたその時、
「あのよ、映画なんてどうだ?」
一人の男子生徒がそんなことを呟いた。
「映画?演劇と対して変わらなくない?」
司会の生徒が少し、苛立ちを含んだ声で尋ねる。
「白川さんがいるから、折角だからいいかなと思ったんだよ。子役だった白川さんが出てるってなれば宣伝効果抜群だろ?それに、文化祭当日、少ない人数で回せる」
恐らく、この生徒の本音は後半だろう。
サボりたい。それが見え透けていた。
だって、宣伝効果なら白川さんがいるというだけで十分だろうから・・・
「いーじゃん映画!!やろうぜ!!」
クラスのめんどくさがりや男子達がその意見に賛同してしまう。
その様子にクラスの女子はヘイトを集める。
「映画やる場合、どんな内容にするの?」
司会の生徒は責めるように尋ねる。
確かに、演劇の場合は既に世に出ている演目をお借りすればいいだけだ。
だが、映画となると別だ。
ストーリー、脚本、様々なモノを自ら作らないといけない。
「それは決まった後に決めればいいだろ?今、決める必要のあるものではないし」
こいつ、逃げたな・・・
「なら、」
「多数決で決めようぜ~~」
女子生徒の声に被せ、多数決という意見を出す。
恐らく、女子生徒は話にならないとでも言おうとしたのだろう。
多数決という意見に男子は賛同してしまう。
クラスの比率から言えば、多数決になればほとんど男子の意見が通るからな。
「演劇がいい人~~」
女子生徒の大半が恐る恐る手を挙げる。
俺もしれっと混じっとく。
「次、映画がいい人~~」
やはりと言うべきか、演劇よりも多くの人が手を挙げる。
これで決まってしまったか・・・・・・
「それじゃあ、出し物は映画ということで」
最初に意見を出した男子は、してやったりと言う顔で言う。
「では、ここからはクラス委員ではなく、クラスの代表者を決め、その人に司会、進行をお願いしたいと思います」
司会の生徒は僅かな反撃に回る。
例年、クラス委員は運営の仕事が忙しくなるため、代表者を別に決める。
その仕組みを利用して僅かばかりに反撃だ。
「折角なので、意見を出してくださった方にやって欲しいですね。ね、蒼井俊さん」
そして、その男子生徒の名前が呼ばれた。
友人Aことシュン君だ・・・・・・
「え?ちょっと待て、それは・・・・・・」
「賛成の人~~」
「「「「は~~い!!」」」」
女子生徒&ノリの良い男子達が賛同の声を挙げる。
「では、代表者は蒼井俊君にお願いしたいと思います!!」
そして、クラス代表者はシュンに決まった。
その事により、満足といった表情を見せたクラス委員の白川さんは、笑顔で教壇から降りた。
「蒼井さん、前にどうぞ」
こうして、一先ずの決着を見せ、映画をやるという方向で話は纏まった。
「では最後に、ストーリーどうしますか?」
一時間後、シュンは疲れきった表情でクラスに訊ねる。
結局、ほとんど決まったものの最初の懸念事項であがっていたストーリーや脚本といった映画の最重要な部分は何も決まっていなかった。
因みに、仮で決められた主人公がリョウ、ヒロインが白川さんという配役になった。
妥当だな・・・・・・
「そういえば、前の国語の授業の時、お互いに物語を作って発表するやつあったじゃん」
女子生徒は思い出した!!という表情で告げる。
創造力を育むとかいう名目でそんなことをやった気がする。
発表と言ってもグループでのことだったと思うが・・・
「あの時、白川さんの物語に私凄く感激したんだよね~~」
「え!?」
そこで、疲れきった表情で窓の外を見ていた白川さんの名前が挙がる。
白川さんは驚いた表情で黒板の方へと視線を向ける。
「わ、私?」
「うん。折角だし作ってもらってもいいかな?」
女子生徒はそんな提案をしてしまう。
話がそこで終われば良かった。
だが、
「僕は高橋淳也君のもいいと思うな~~」
いつの間にか隣に座っていたリョウが余分なことを口にしやがった。
「お前!!そんなの、」
勝てる訳ないだろう。
その言葉は、リョウの手によって塞がれる。
個人的に、白川さんと競ってみたい気持ちはあった。
だが、惨敗するのは目に見えている。
この間、現実を思い知ったばかりなのだから・・・
「お、じゃあコンペ形式にするか!!」
シュンも急に元気になりやがる。
あいつ、仙○でもくったのか?
さっきまでヤム○ャのような姿勢で死んでたのに・・・
「「「「賛成!!」」」」
そして、無駄にノリの良いクラスのせいで俺と白川さんの脚本対決が決定した・・・・・・
因みに、話し合いによって決まったことは、
1 ストーリーは病弱なヒロインと主人公が互いに惹かれあっていく恋愛がメインの物語。
2 途中までのストーリーは同じ、後半をオリジナル展開にする。
3 期限は今日から丁度二週間後、夏休み前最後の登校日。
となった。
前半の同じ内容の部分で互いの基礎力を、後半はそれぞれの創造力での対決となる。
白川さん相手では分が悪いことも、時間が足りないこともわかってる。
だが、
「負けたくない・・・・・・な」
俺はポツリと自分の気持ちを呟いていた。
なんでだろう、前作と流れが似てくる・・・




