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自覚と更新

皆様、新年明けましておめでとうございます!!

今年も宜しくお願い申し上げます!!


『ヘタレ』


「悪かったな!!」


 

 体育祭翌日、俺はリョウとゲームをしながらVC(ボイスチャット)をしていた。


『だから、誘えばいいじゃん』


「そういう訳には・・・・・・よし、五人抜き!!奥の小屋に敵いる。スタン宜しく」


『はいはい。・・・最悪、取材を言い訳にでもすればいいんだから。何も怖がる必要ないって』


「わかってるんだけどよ」


 俺は会話をしながらも次々と敵を倒していく。

 リョウにスタングレネードを投げてもらった小屋に突撃した直後、


『白川さんが小学校の頃のことを覚えてくれてたからもしかたらなんて期待しちゃった?』


 そんな相方の言葉を聞き、射撃ボタン(R2)投擲ボタン(R1)を間違えて押してしまう。

 投擲するモノなど使用済みの為に有るわけもなく、

 

「殺されたーーー!!」


 相手に射殺されていた。


『はぁ~~。図星だからって操作ミスしないでよ』


「ち、ちげぇーよ。そんなんじゃねぇーよ」


『男のツンデレなんて需要ないからね。ま、たまにはジュンから誘ってあげなよ。いつも白川さんが誘ってきてくれてるんでしょ?白川さんもそういう思いをしながら声を掛けてきてくれてるかもよ?じゃ、対戦も終わったし落ちるわ。お疲れさん』


「あ、ああ。お疲れ」


 その言葉を最後にリョウがパーティーから抜けた通知が表示される。


「たまには、こっちから、か・・・・・・。とりあえずは・・・」


 俺は、無言でスマホと見つめ合う。

 何度も、文を見直し、消しては書き直し、三十分程かけた所でもう一度読み直し、送信ボタンを押していた。


「は~~、送っちゃったよ。どうしよ~~~~」


 女子のような女々しい台詞を呟く。

 

「兄さん!!うるさい!!キモい!!俺まで変な目で見られるから止めて」


 そんな俺に、弟の声がぶつけられる。

 どうやら、家にいたようだ。

 俺とは違い弟はアウトドア系(パリピ)なので休みの日に家にいることはレアなのだ。


「悪かったな!!」


 今日何度目になるかわからない言葉を口にしながら、LI〇Eの返信にソワソワする俺なのであった・・・・・・


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


 翌日、俺はカラオケ店にいた。

 一人カラオケ?違う違う。相手は・・・・・・


「カラオケとか久しぶり!!高橋君は何を歌うの?」


「俺は、アニソンメインです」


 相手は、白川さんだ。


 昨日、メッセージを送信した後、僅か一分足らずで返信が送られてきた。

 その後、いくつかやり取りをした後、気づけば、カラオケに行くことが決定していた。

 メンバーは俺と彼女の二人だ。そう、二人なのだ!!


「やっぱりか。予想してた通りじゃん。他にも何か歌えないの?……それに、また敬語に戻ってるし」


 彼女はため息を溢しながらこちらに問いかける。

 後半は良く聞こえなかったのでスルーさせて貰う。

 一応言うけど難聴ではないからね!!


「他?他は・・・・・・、すいません。ありません」


 残念ながら、俺に一般的な高校生が歌うような曲のレパートリーは、ない。


「正直で宜しい。じゃあ、今日はアニソン中心でいいよね?」


 彼女は「仕方がないな~~」などと呟きながらデン〇クに曲を入力していく。


「え、いいけど。白川さんアニソン歌えるの?」


 俺は素朴な疑問を口にする。

 普段、スクールカーストの最上位に君臨していることもあり、アニソンを歌うイメージがあまり湧かない。


「うん。結構歌えるよ。まぁ、見ててなさいって」


 彼女はマイクを手に持ち、立ち上がる。

 その直後、イントロが流れ始めた。

 たしか、この曲は・・・・・・


「届かない恋、か・・・・・・」


 white al〇um 2というアニメで俺の好きな声優が歌っていた曲だ。中々、コアな曲な気がする。

 確か、冴〇カノでもヒロインの一人がカバーしてたっけ?

 作家が関わりがあるのが理由で・・・・・・


「孤独な振りをしてるの何故だろう気になっていた♪」


 白川さんは、優しく、語りかけるように歌詞を紡いでいく。

 彼女の声は、とても綺麗で、包み込むような暖かさを持っていた。

 

「届かない恋をしていても、映し出す日がいつか来るのかな♪」


 彼女の歌を聞いて、自分の中の壁が崩れ、中にあったモノ(気持ち)を少しずつ理解していった。


「(そうか、俺は、白川さんのことが・・・・・・)」


 答えは出た。

 林間学校で新田さんから問われ、自分の中で見つけ出そうとしていたものだ。

 でも、どうすればいいのかは何もわからない。

 これからどうすればいいのか。

 何をしたらいいのか。

 どうすれば彼女が笑ってくれるのか。

 とうしたら彼女が振り向いてくれるのか。

 気持ちには気づいたが、何もわからない。

 

 高校生になってから、初めて声をかけてくれたのは彼女からだった。

 初めて一緒に出掛けたのも彼女が誘ってくれたから。

 林間学校で一緒の班になったのも、肝試しを一緒に回ったのも、体育祭のクラスリレーで頑張れたのも、全て、彼女のお陰だ。

 彼女から手を差し出してきてくれたら、俺はその手を取ることが出来た。

 でも、俺から差し伸べたことなどない。

 だから、何をどうしたらいいのか、全然わからないし、自分から行動するのが、間違いを選んでしまうことが怖い。

 それを自覚してしまった。

 


「ねぇ、大丈夫?何か考え事?」


 気づくと、彼女の顔が直ぐ近くにあった。

 瞳は、こちらを心配そうに見つめていた。

 既に曲は歌い終えていたらしい。


「い、いや。何でもない。何でもないから!!」


 俺は、慌てて距離を取り、飲み物を一気に飲み干す。


「そう?ならいいけど・・・・・・」

 

 彼女の突然の不意討ち、否、彼女への気持ちに気付いたからだろう。

 心臓が痛いほど鳴り響く。

 白川さんに聞こえてしまうのではないか。

 そう思ってしまう程までに、ドキドキしていた。


「つ、次は俺の番だな。あの曲にするか~~」


 俺はデ〇モクを弄りながら気持ちを整える。

 

「へぇ~~、カノン歌うんだ。そういうアニメも見るの?」


「いや、声優が好きで曲だけ聞いてるんだ」


 そこで、気持ちを切り替え、曲を歌い始める。

 こうして、二人きりの時間は過ぎていった・・・・・・

 



「ねぇ、そういえば、何で高橋君から誘ってくれたの?初めてのことだから驚いちゃった」


「え~~と、ついこの間、小説の1巻販売されたでしょ?そのお祝いしてなかったから、さ」


 俺は理由を口にする。

 ま、完全に言い訳である。

 因みに、彼女の小説は販売から二週間近くたった現在、早くも重版が決定していた。

 体育祭の練習のために、中々二人で話す機会を作れず、お祝いするタイミングがここまで伸びてしまったのだ。

 ま、お祝いは口実だけど・・・


「そうなんだ。ありがとう。今日は沢山楽しもうね!!」


 彼女は俺の言葉に満面の笑顔で言葉を返す。

 ここからのやり取りはあまり覚えていない。

 だが、彼女の感動的な歌声を前に気づいた時には、号泣しながら三時間を迎えていた。

 もう、涙は枯れてしまった・・・・・・


「さっきから、顔が酷いことになってるけど大丈夫?」


 白川さんはしれっとキツイことを挟みながらも、こちらを心配そうに見つめていた。

 三時間程前に同じようなやり取りをした気がするのだが気のせいだろう。うん。


「白川さんの歌声が素晴らしすぎて涙が止まりません!!」


 涙と一緒に語彙力まで流れ出ていってしまっていた。


「え、え~~~~」


 白川さんは俺の対応に若干引いていた。

 だが、突然、真剣な表情に切り替え、こちらを見つめてきた。


「1巻も無事出版出来たし私からも言っとかないといけないことがあるんだよね」


 彼女はほんの一瞬、淋しそうな表情を見せた後、いつもの笑顔に戻り言葉を続けていた。


「今まで取材に付き合ってくれてありがとう。高橋君には色々迷惑をかけちゃったよね。一応、私の中の区切りとして、1巻の販売まで色々と手伝ってもらおうと思ってたの。黙っててごめん」


 彼女の唐突な発表に言葉を失う。

 やっと、彼女への気持ちに気づいたのに、突きつけられた現実は厳しいものだった。


「そして、本当にありがとう。高橋君のお陰様で、私が書ける最高の小説(物語)を書けたと思ってる」


 彼女の表情は自信に満ち溢れていた。

 自分には、とても眩しく、同時に羨ましく感じた。


「少しでも、白川さんの力になれたなら良かった。俺も、白川さんのおかげで貴重な経験が出来たよ」


 淋しい気持ちもある。

 悲しい気持ちもある。

 この二人の関係を惜しむ気持ちもある。

 正直、彼女が作品を書き終えるまで取材は終わらないのだとばかり思っていた。

 だが、これは俺の本音だった。

 彼女の役に立てたなら、これ以上何も求めない。


「高橋君、そう言ってくれると凄く嬉しいよ。本当にありがとう。高橋君にお願いして良かった」


 ここまでで、俺と彼女のこの関係は終わり。 

 また、新しい関係を築いて行けばいい。

 次は、0からじゃないんだから!!


 そう、決意した直後、


「ここからは、私の我が儘を言わして貰うね」


 俺は出端を挫かれていた。


「私は、貴方に、高橋淳也君に、私の物語が終わるまで、取材に手伝って貰いたいの!!」


 彼女は顔をほんのり赤く染めながら俺に告げていた。


「はい。喜んで」


 俺は、彼女の言葉に即答していた。


「え?」


 だが、彼女は驚きの表情を見せる。

 あれ?


「ほ、本当にいいの?いつ、作品が完結するのかもわからないんだよ?」


 彼女は目をぱちくりしながら訊ねてくる。

 やだ!!なんか可愛いじゃない!!


「元から最後まで付き合うつもりだったから覚悟?みたいなモノは出来てるよ。依頼が更新されたってことでokでしょ?」


 俺は苦笑しながら告げる。


「ほ、本当にいいの?」


 彼女は、なおも不安そうな表情でこちらを見つめる。

 その上目遣い、止めて!!心臓止まる!!捧げたくなる!!


「良いの!!この話はここまで。俺、飲み物取ってくるわ」


 少し恥ずかしくなった俺は、空になったグラスを持ち、ドリンクカウンターに向かう。


「高橋君、……」


 白川さんはボソリと何か呟いていたが、慌てて出ていった俺には、その言葉は届いていなかった。


 そして、この時の俺には、今日、このあと、何が起こるのかもわかっていなかった。

 わかっていたならここで部屋から逃げ去るなんて選択は・・・・・・ごめんしたかも

 

更新、遅くなってしまい申し訳ございませんでした!!

この話はもう少し続きます。

今までのを読み返すと前作と展開が似すぎてて……

無自覚でした、申し訳ない!!




さて、次回、ジュンの身に何が起こるのか、乞うご期待ください(笑)

それでは次話も宜しくお願いいたします!!

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