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その9 鮎さん

「どうジャ、ランペル。その後は?」

「幼女たん」


 子ネズミ紳士のボクは、竜人たんに笑った。


「オニャノコ2人に、ボク1人だよ? よっしーたんならどーする? 最高だった……」

「お、おぅ。喜んでくれて、何よりジャ」


 いや~、変則ダブルス最高! お呼ばれのときも、ワンコたんを相手につけて、1対2ね!

 あ、でも、上位のオニャノコは別だよ? ワンコたんには、プレイのおベンキョーのために、お座りを指示してリュの。これも立派なシツケでプ。


「とゆーことで、人気1位の鮎たん、お願いしま~す」

「ラ、ランちゃん……」


 鮎たんは、ボクら2人を見てオロオロしてた。


「私ね? こういうのって、照れちゃうんだけど……」

「だいじょび! ボクもハズかしかった!」

「えぇ~」

「ンでもね? なんか、少しずつ快感になってくるの!」

「ふえぇ~!? ランちゃん、上級者すぎるよ~!」


 にゅふふ……。あわっこのプレイってね、誰にも見せず、自由でなんてゆーか、神聖なモノだと思ってた。1対1で、静かで豊かにね。

 けど、ギャラリーのいる対決も、クセになっちゃいそうでプ!


「あちき、勉強するだワン! 人魚姫さまのソフトさなら、あちきにも出来そうだワン!」


 ピクッ。


 おりょ? 鮎たんの耳ヒレが動いた。


「あのね、ランちゃん」

「ほむ」

「後輩には、キチンと教えたいなって思うの」

「んじゃあ……今日は?」

「本気でいくね」

「望むトコロでチュ」


 おおぅ、人魚たんが燃えている。ゴゥゴゥ。

 これは期待大でチュ。


 ◇


 はにゃ~、負けちった~!


「ふみゅぅ~。鮎たんってば、パッと見は大人しいケド、いざ戦うとシュゴいよね~」

「んもぅ……ランちゃんったら」


 ホホを染めた鮎たんは、ふわふわのタオルで汗をぬぐってくれた。あ、耳キモチいい~。

 どんな海よりも底知れないの、人魚たんって。ギャップ萌えでプ。


 一方、ワンコたんは、すみっこでブルブルしてた。


「あ、あぁぁああんなワザや、こ~んな高等テクまで……」


 にゅふふ、新人への洗礼ってヤツでチュね?

 ヒンヤリが売りの人魚たんも、見られてるとアツくなっちゃうみたいでプ。


「だけどね、ランちゃん? 観戦は……コレっきりでお願い。ね?」

「みゅ!」


 うなずくと、ホッペをウリウリしてくれた。てひひ~、紳士だモンね♪


「んねぇ、鮎たん? お礼に、困ってるコト、なんでも聞くでプよ?」

「それなら、お嬢様についてかな」

「アークヤ・クレイ嬢たんでチュか?」

「うん」


 あわっこの公式動画でも、よく他のオニャノコにプンスコしてる悪役令嬢たん。扇子で指して、「アナタはブタよ!」とかね。言われたがってる紳士、イッパイいるでチュ。


「最近、よく共演するんだけどね? 彼女がコワいの」

「ああ~」


 ズバズバ来るもんネ、お嬢タマって。


「モモさんは、心配ないって言ってくれたわ? だけど……ちょっぴり苦手で」

「ふむ。安心するでチュよ」


 しっとりした手を握る。


「お嬢タマは、本気で怒ってるワケじゃないでプよ?」

「そうなのかな」

「一度、聞いてみるといいでチュ」

「うん、分かった」


 その後、鮎たんは、お嬢タマに直接聞いたみたい。


(ランちゃん、ありがとう。お嬢様って、いい人だったわ)

(良かったでチュ)

(だけどね。そのせいで……もっと困ってるの)

(んゆ?)


 小首をかしげる。


(解決じゃないの?)

(えっとね。色んな人が心配してくれて、それは嬉しかったんだけど。今度は、お嬢様が責められちゃってて)

(あぁ~)


 動画のお嬢タマって、悪役でチュもんね。鮎たんを応援する子ほど、プンスコしちゃいそーでチュ。


(お嬢タマは、なんて?)

(アナタは気にせずともいいわ。むしろ忘れなさい、って)

(ほむ)

(だけど、責められるツラさは分かるから。みんなの誤解、正した方がいいよね?)


 ふみゅ、こないだの悩みよりも深そうでチュね。


(鮎たんが、考えた上でのことでチュか?)

(ええ)

(なら、それが正しいでチュ)

(勝手にやって、怒られないかな?)

(そのときは、ゴメンネって謝るでチュ)

(――うん)


 お、吹っ切れたみたいでチュね。


(ランちゃん、ありがとう)

(良い方向に転がるといいでチュね)


 んみゅ、転がるっていえば。

 次の冒険者チームで、久々に「ごろごろ先生」と組むでチュ。

 黒い紳士のテク、また見たいでチュね。




(葦原しゃん)


 黒光りする6才のオノコノコが、上目づかいでモジモジしてた。


(こ、こ~んな寂しいトコに鬼六を呼んで、どーする気でシュか?)

(退治だよ、ざまぁ団の)


 うにゅ。先生といると、どーも魂の声がウズウズしちゃうでプ。

 英雄のアバターに入ってたボクは、アフロな黒髪を優しくなでた。


(じきに敵が出てくる。頼んだよ、チビッコ先生)

(む~ん。葦原しゃんは冷静っシュね)


 鬼六先生は、トラ柄シャツをつまんでパタパタした。短パンも同じデザインで、頭には2本角。まさに黒鬼きゅんでチュ。


(ねぇ、もみじ)


 パールたんは、【衛星球】で監視中のシカ娘たんをつついた。


(鬼六さんとは初めてだけど、彼って強いの?)

(一応ね)

(なら、もっと英雄様と組みそうなモンだけど)


 たはは。動画の先生って、敵を縛ってるダケだもんネ~。


(この鬼六は、強いっシュよ?)


 親指を立てた黒鬼きゅんは、人差し指と中指も伸ばした。


(夜は、3倍っシュ)

(エロが強いのは、よ~く分かりました)

(ヒドいっシュ。このアプローチで、ハニーの気持ちをつかんだっシュのに……ヨヨヨ)


 泣きマネがヘタでチュね、先生。


(今度、家庭も持つっシュよ?)

(え~? 結婚するんですか~!?)

(4年も一緒に暮らしたっシュ。この戦いが終わったら、プロポーズっシュ!)


 ――んゆ?


(ステキな指輪も買ったっシュ。パパ頑張って、大家族にするっシュ!)


 アレ? これ、死亡フラグ?


(はいはい、幸せな計画はそこまでよ)


 もみじたんが、先生に【敏速】をつけた。


(敵が出てきたわ)


 ほむ、集中!


 先生が、サッと飛び出した。ダイスを出してコロコロすると、6が出る。


「ぐあぁ!」


 敵の1人が倒れざま、ボクもすかさず走り出す。


「やべえ、英雄チームだ!」


 敵の中心につっこみ、ガンガン切る!

 魔法は、オニャノコ2人が止める!


「シュ~……鬼六のフィンガーテクで、ハデにあえぐっシュ!」


 視点を【衛星球】に切り替えると、先生の右手が真っ赤に光ってた。準備が終わると、5cm角のダイスが1コ現れる。【パラメデス】っていう、出た目の分だけ相手にダメージを与える呪文ネ。


「ガキがギャンブル!? 100年早ぇぜ!」


 あちょ。鬼六きゅんのほうに1人いっちゃった。

 先生は、回避もウマいけど、やっぱり体格差はキョーレツ。お手々を握られちゃう。


「人質ゲット~! ざまぁっ!」

「お~ぅ……おしまいっシュ」


 ダイスが振れないし、【飛燕】も【武具作成】も出来ないモンね。


「――鬼六以外なら」

「なにぃ?」


 先生の体が、茶色く光った。1秒たつと、直径60cmの黒い岩になる。


「な、岩!?」

(おやおや。変身はハジメテっシュか、ウブな坊ちゃん?)

「う……うわぁ!」

(黒くてカタいモノ、ブチこむっシュ!)


 逃げる背中に、ごろごろ迫る先生。

 岩肌が赤く光った。ハデにブツかるや、【落雷】が発動。


 ゴロゴロピシャーン!


「……っ!」

(シュ? 気持ちよすぎて、声も出ないっシュね?)


 ショタに戻った先生は、スタンした敵を素早くナワで巻いた。


「葦原しゃん、そっちもフィニッシュでシュか?」

「ああ」

「む~ん。速すぎでソウロウ」


 いつもは、もーちょい遅いよ? んでも、今日は後ろが先生だったし。止めることより、おカタヅケを優先したでプ。

 ――フラグが、ちみっとコワかったケドさ。


「ねぇ、もみじ? 鬼六さん、メチャクチャ強いじゃない」

「そうね」

「じゃあ、あんまり組まないワケって……?」

「敵がカワイソーだから」

「あ~」


 ざまぁ団・第65支部は、これにて終了でプ。

 先生の死亡フラグとか、全然関係なかったでチュね。よかったよかった。






 鮎たんが告白する日、ボクは支配人室でイイ子にしてた。


「のぉ、おヌシ? この動画って、投稿したらイカンかノォ?」

「ぷぇー、ダメでチュ」

「ゼッタイ面白いノジャが」


 ブンブン。よっしー魔王に、人魚たんはヨゴさせないでチュよ。

 前みたいに、【衛星球】で見学ね。

 会場は、オニャノコたちでイッパイ。最前列では、お嬢タマが扇子であおいでる。

 お、ステージに鮎たんが出てきたでプ。


『皆さん』


 まずはペコリ。それから、集まってくれたみんなにお礼。ん~、マジメでチュ。

 鮎たんは、息を整えたあと、シッカリ前を向いた。


『あの! アークヤお嬢様のことを嫌ってる人が多いですけど、彼女はスッゴクいい人なんです!』

『はぁ!?』


 お嬢タマが、大あわてでステージに駆け上がる。


『ちょ……ちょっと、鮎さん?』

『彼女は、ワザと高慢なお嬢様を演じてるんです!』

『鮎さん?』

『オーバーにやっちゃうかもって相手には、事前に了解を取ってました!』

『鮎さん!?』

『私は、スゴく恐がりだったんで、彼女が思ってたよりも手前でおびえちゃったんです』

『鮎さん!』

『それで、丁寧な謝罪とともに、お芝居だってことを打ち明けてくれました!』

『鮎さーん!!』


 お嬢タマはガクガク揺するけど、人魚たんは止まらない。


『えーっと、なので! 彼女をキライにならないで下さい! どーしてもと言うのなら、代わりに私をきらって下さい!』

『あぁぁああ、鮎、さぁぁああん……!』


 うわ~お。誰かのためなら、勇気を出せる。鮎たんってば、まさに姫騎士でチュ。鋭い一撃でチたね。

 んでも、その矛先が一番クリティカルしちゃったのは、当のお嬢タマっぽいでチュけど。


 【衛星球】を回すと、オニャノコたちはみんな、生温かい目でニヨニヨ。対するお嬢タマは、涙目でプルプル。


『えっ……営業妨害ですわ~!』

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