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8/20

その8 2人よりも3人

 千帆たんが、一身上の都合でお店をやめたあと、ちょびっとランキングに動きがあった。


『オーッホホホ! モモ・エンデさ~ん? あなたは月間3位! ワタクシの下でしてよ~?』

『ですね』


 モーモーたんは、お休みの分、順位が下がっちゃったの。


『だけど、アークヤさんも2位だとか。惜しかったですね』

『クキィー! 余裕たっぷりに!』


 お嬢タマは、人魚姫たんをニラんだ。


『ちょっと、鮎さん? どういうコトですの!』

『あ、あわわ……』


 なんと、今月の1位は、それまで4位の鮎たんだった。


『まさか鮎さん!? アナタ、組織票やチートを用いたのではなくって!?』

『いいえ! む、むしろトップなんて、お嬢様に譲っても……』

『ハァ!? 無礼者!』

『ひぃっ!』


 小柄な鮎たんは、色々とおっきいモーモーたんの後ろに隠れた。

 お嬢タマは、ビシッと扇子で指す。


『誇り高きワタクシが、お情けなど! 次の更新まで1ヶ月! 首を洗ってお待ちなさい!』


 イノシシの悪役令嬢たんは、嵐のように去っていった。


『ど、どうしましょ~、モモさ~ん! 怒らせちゃいました~!』

『大丈夫よ。彼女はああいう人だから』


 モーモーたんは、青い髪をヨシヨシした。


『根は優しいのよ』

『えぇ~? そ、それに私、4位でも恐かったんですよ? 1位だなんて……』

『平気よ、鮎ちゃん。英雄様が、ぜ~んぶ解決してくれたから』

『え?』

『だからね? 素直に喜んでいいの』

『じゃ、じゃあ……』


 鮎たんは、両手を広げた。


『た、多分コレっきりだけど! わあい!』


 鮎たんって、応援したくなる子でプね。

 今回の「あわっこ」動画、大満足でチュた。


 ちなみに、理子ピンはまた6位だとか。あれれ~、どーなってんの?


「この順位が心地いいのよ」


 お店だと、トップ5までが大々的で、6位からは次のページなんだって。吸血鬼たんは、コッソリが好きみたい。

 ――んみゅ? 1人が去っても、その位置をキープ? しかも、日間や週間まで、ほとんど6位……?





 考えるのをやめるでチュ。うみゅ。






 そうそう、事件を解決したゴホービとして、「あわっこ無料券」を1ヶ月分もらいまチュた。

 紳士としては、使わざるを得ない! フンス!


「クロエたん、来たよ~」

「はい、どうぞ」


 もはや、黒エルフたんの受付は宿命でプね。ショタ好きってのもバレたでチュし。


「ランペルさま、本日はご提案が」

「んゆ?」

「コチラの子はいかがでしょう」

「おっけ~」


 受付たんのオススメなら、全員カモンでチュ。

 お部屋で待ってると、茶色のワンコたんが入ってきた。あ、「人間に犬耳」じゃなくって、全身モフモフのメスワンコたんね。


「お客さま~! ご指名ありがとうだワ~ン!」


 ほえ、イキナリ土下座?


「ダメ犬のあちきに、お慈悲だワン! 神様仏様ネズミ様だワン!」

「あ、そーゆーのはいーんで」

「キャウ!? あ、あちきを変えないでだワン!」


 んゆ? 変える?

 あ~、対戦相手の交替って制度、あったね。

 紳士はしないでチュけど。


「んじゃ、やろっか」


 とくに今回は、受付たんのオススメでチュもんね。

 どんなに強いか、楽しみでチュ!


  ◇


  ◇


  ◇


「ラ、ランペルさま。強すぎだワン……」

「――う~みゅ」


 えぇ……、ワンコたん、弱すぎ……?

 いくらシロートさんでも、少しは「あわっこ」の基本、教えるべきじゃなーい?


 お部屋を出ると、クロエたんが待ってた。


(ランペルさま。ワンコさんの毛並みはどうでしたか)

(尻尾はモフモフだけど、肝心のあわっこがダメダメでチュ)

(なるほど)

(まあ、これからでプね)


 クロエたんは、ホッとしてた。


(ほえ、どったの?)

(今のワンコさんが、最初に襲われた子でして)

(あぁ~、お店をやめるって、泣いてた子ね)

(自信をなくしてるようで、面倒を見ていただけないかと)

(いいよ~)






 と、安易にOKしたのがイケなかった。


「2日連続、ありがとうだワン!」


 次の日もワンコたん。


「3連続! ワンワ~ン!」


 その次の日もワンコたん。


「4連だワ~ン!」


 ――むにゅ~。

 さすがの紳士も、モノ申すでチュ。


「ちぇんじ」

「ワンッ!?」


 無料券とか言って、実はシツケの押しつけとは、ヤラレタでチュ。汚いな、流石よっしー、汚い。


「ヒドいだワン! ネズミちゃんは、あちきの面倒を見てくれるって聞いてたワン! あわっこの紳士に二言はないって信じてたのにワン! うワ~ン!」

「あぅ……」


 そこをツッコまれると、弱いでチュ。

 引き受けたからには、世話をする。たしかに、それが紳士でプよね?

 ただし、あわっこの魔王、てめーはダメでチュ。ぷんすこ!






「葦原さん、日に日に怖さを増してるわね」

「ああ。マジでアイツ1人でいいな」


 今日の冒険者チームは、誘拐組織のアジトに踏み込んでいた。次々と制圧し、残るは数部屋だ。


「ヒャッハー! 英雄め、これで終わりだぁ!」


 召喚士が、【エメラルドドラゴン】を準備した。パールが【中止呪文】を飛ばすも、別の敵から更に【中止呪文】が放たれる。


「ヤバッ!」


 妨害が阻止された。魔法が完了するや、体長10mを超える竜が出現する。


「ハッハー! これで英雄もオダブツだぜ!」


 見下ろしてくる竜と目が合った。


 エメラルドの、ドラゴン……?


 緑の、竜……?






 よっしーのことかー!!


 猛然と突っこんだ。巨大な尻尾アタックは、槍でブロック。逆に、連続突きですぐさま竜を倒す。


「はぁ!?」


 そのままの勢いで、後ろの召喚士を一刺し!


「ぐはっ!」

「失敗だったな、竜を出したのは」


 ふむ、少しは気が晴れたでチュ。


(英雄様……、鬼気迫ってますね)

(パールさんか。今日は余裕がなかったね。すまない)

(えっと、それじゃ和やかな話題を)


 あぃがと、パールたん。


(最近、ワンコちゃんがお気に入りみたいですね)


 あぃがたくないよ、パールたん。


(え、あれ、英雄様?)

(人質を助けよう)


 アジトの奥へ向かうと、目的の人質以外に、もう1人捕まってた。


「あ~、英雄様~!」


 なんでかな。ワンコたんの姿が見える。


「ありがとうございます~! この部屋って、念話も使えないし、あわっこ相手の人質だとかで、死んじゃうのかなって思ってました~!」


 えぇ……本人? ウソォ。


「あ、私! あわっこで底辺やってます~! 今はまだ、幼児プレイの人だけ相手してますけど、英雄様も来て下さい~! しっかり頑張ります~!」


 んーっと……。アバターの変更、言われてたよね? なんでそのままなの?


 吹き出しをチェックすると、「ワンチャン・スー」って文字が。


 あ~、あわっこだと「ワンコ・イン」だったね。別アバターか。うん、ゴメン。

 ――でもさあ。


 見た目がソックリだと、意味ないってヴァ!


 パールたんが、こそ~っとコッチを見た。


「ピリピリの、原因ですか?」


 しばらく、息を止める。


 ――ガマンの、限界でチュ。






「よっしーたん!」

「おお、ランペル。最近ワンコとラブラブじゃな」

「ブッブー!」


 支配人室のパッパラパーな幼女に、ズンズン詰め寄る。


「いくら無料だからって、オニャノコ固定はズルいと思うナ! それも、超ヘタッピな子ってサ! ぷんすこ!」


 よっしーたんは、大きな目をパチクリさせた。


「なんじゃ、おヌシ? 知らんかったのか」

「何をさ!」

「あわっこは、ダブルスOKじゃぞ」




「ほえ?」


 首、こてん。


「どゆこと?」

「つまり、おヌシがシングルスで、こっちがダブルスでも構わんってことジャ」


 ぽくぽくぽく。

 ちーん。


「え~と、それって、1対2が出来るってこと?」

「ナノジャ」


 幼女の甘~いささやきは、ネズ耳からシッポの先まで染み渡った。


 え、えぇ~……。勝負の世界は1対1だよ。ダメダメ、それが至高だモン。

 んでもネ? 変則マッチのお知らせは、なんだかヤケに魅力的で。


「よっしーたん……」


 怒りにとらわれたボク、サヨナラ。

 喜びに満ちた幼女たん、あぃがと。


 右手を前に出した。


「ボク、誤解してたよ」

「分かってもらえてウレシイのジャ」


 紳士2人は、カタい握手を交わした。






「ラ、ランペルさま~! あちきには強すぎだワ~ン!」

「ニャ、ニャンコも! お慈悲がほしいニャ~!」


 何度もカワイがった2人を前に、ペロリと舌なめずり。


「え~? ボク、半分の力だよ~?」

「わひっ!? う、うそ! あれで、半分……!?」

「バ、バケモノだニャ……」


 ありゃ、言っちゃったネ?


「んじゃあ、バケモノらしく、本気でいくヨ?」

「ワヒィー!」

「ニャー!」


 2人の悲鳴は、時間いっぱいまで続いたのでチュた。てへっ♪






「ねえねえ、もみじ。最近の英雄様って、一段とキレが良くなってない?」

「そうね。怖さは消えたけど、伸びやかに動いてるわ」


 葦原が最初の部屋を制圧したあと、もみじが【治癒】をかけてくれた。


「お悩みが、解消されました?」

「ああ、もう大丈夫だ」


 敵は残り2人だが、スゴ腕だという。万全の態勢にしてから、奥の部屋へと突っ込む。


「食らえ!」


 敵が、葦原に【クロノス】を唱えてきた。パールが【中止呪文】を使うが、もう1人の敵も使ってくる。


 カチカチ、カチーン!


「よしっ! これで英雄もカカシだぜ!」


 たしかに強烈だ。【クロノス】の準備時間は5秒だが、発動したらターゲットも5秒止まる。VRの体感では3倍になるため、実質15秒。決まれば勝負アリだが。


「対策は、バッチリです」


 もみじがスマートに【魔法霧散】をした。

 その後、パールの【中止呪文】が相手の【のろま】をツブした。仮に通っても、もみじの【魔法霧散】は3回残っている。

 そして葦原は、多対1でも常に勝ってきた英雄だ。


 ざまぁ団・第92支部のスゴ腕は、たった2人。彼らを縛り上げる時間は、わずか数秒であった。


「葦原さん、やりましたね」

「ああ」

「はにゃ~ん。英雄様は強いです~」

「ありがとう」


 葦原は、もみじとパールにほほえんだ。


「やっぱり、2人よりも3人だよね」

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