その7 ぅゎょぅι゛ょっょぃ
「よっしーたん!」
お部屋に戻ってきた竜の幼女を、ポカポカ叩いた。
「英雄が来てるって、バラしちゃラメ~!」
「えー? だっておヌシ、全力で頑張るって言ったじゃろ? アバターも違うし、そうそうバレんノジャ」
あー、そーゆー認識でチュたか。
「んっとねぇ。ボクの戦い方って、これオンリーなの」
「え?」
「あんな前フリだと、100%バレちゃうでプ」
よっしーたん、お目々パチクリ。
「ワシ、やっちまったかノォ?」
「うみゅ」
あぁ……。ぐっばい、マシュマロぼでぃ。
「ボク、アバター消すよ」
「待つノジャ、英雄!」
「ヤダよ! もー絶対バレちゃう!」
紳士2人のガチバトルでチュ。決して、姉と弟のほほえまし~ケンカじゃないでチュ。
「お二方」
ボクらのえり首を、ヒョイとつまんだクロエたん。
「それじゃあ、バレないように頑張りましょうね?」
「――でチュ」
「ノジャ……」
笑顔がすんごくコワかったでプ。
その後もオニャノコは、お外で狙われた。みんなアバターを変えてない子で、キッチリお手紙が届く。
“無理矢理トップを戻すような店に未来はない”
ブッブー。こんなヘッポコピーこそ、「のーふゅーちゃー」でプ。
お店の子も、また不安がってるみたい。早く解決したいでチュね。むん!
「ケケッ。よお、葦原」
冒険者10人での遠征中、馬人のゲハラーヅが肩を叩いてきた。
「話は聞いたぜ? あわっこで大活躍とかよぉ」
「ん?」
はにゃっ! えぇっ、バレた~!?
んでも、パールたんは笑ってた。
「フッフ~ン! お馬さんの想像とは、ちょ~っと違うわよ~?」
「なんだよ、どケチ」
「友達の話だケドね? こないだ、ソコで事件が起きて、解決のために呼ばれたんだって。ね~、英雄様?」
黙ってコクン。
「おい、葦原~! 俺も呼べよ~!」
「アハハ! 馬面ハゲはダメなんでしょ、シッシッ!」
さっさと追い払っちった。
(とまぁ、こんなモンでどうです、英雄様?)
(ありがとう)
(困ったときはお互い様、でしょ?)
あぅ。立場が弱いでプ。
(パールさん。困ったといえば、引っ掛からないね)
(ですね~。昨日も空振りでしたし)
そーにゃのだ。
ブラつく悪魔たんを、囮にするって作戦ネ。出歩く子も少なくなったし、食いつくかにゃ~って思ったんだケド、じぇんじぇん狙われない。
(敵はビビってますよ? 襲うタイミングが、ぜ~んぶ英雄様の活動中ですモン)
(僕が休めば収まるってワケか。だけど、こっちも大事だしね)
(ええ、アタシも困ります。コッチのが稼げるんで)
(ははは)
ん~みゅ、困ったコトに、英雄の動きが敵に筒抜けなんだよネ~。誰かの【衛星球】に映った途端、動画を出されちゃうんだモン。
――んゆ?
(そうか……。犯人も、こちらの動きに縛られてるんだ)
(おや~? 名探偵の称号まで狙ってますね)
(ないない)
それは困難でチュ。
あ、そだそだ。ざまぁ団・第15支部は、40人ぐらいいたけど、軽~くやっつけたでチュ。
「英雄様……はにゃ~ん」
「パールちゃんの気持ち……。分かってきたわ」
「いやはや……もう、葦原だけでいいんじゃねえか?」
ムリだって。
「みんながいたから、半分倒せただけだよ」
「イヤ、それが無理だって!」
え、別にボケてないんでプけど。
総ツッコミされたでチュ。
ネズミ紳士に戻ったボクは、あわっこでクロエたんとナイショ話をした。
「襲撃のとき、『お店にいない子』ですか」
「な~んか、気になってたの。ビリっけつの子を襲ったってのがサ」
あわっこは、お店の子だけがランキングを見られる仕組みだった。ボクは、モーモーたん自身から順位を聞いたけど、トップ付近は有名だし、知ってるお客さんも多いと思う。
んでもネ? おニューのオニャノコは多いワケ。だから、下の順位はどんどん変わる。
「その子、本当に最下位だったの?」
「はい。そのときの名簿順で、一番下でした」
「ならさあ、犯人って、『ランクの見えてる子』だよ」
「ですねえ」
あ、クロエたんも気付いてたんでプね。
「ただ、単独犯と仮定しても、候補はまだ数十名おりまして」
「あぅ」
んじゃ、プランBでチュ。
「実はボク、お知恵を借りれそうな人、知ってるんだけど」
「アノ方ですか?」
「でチュ」
「そんなに調べる必要はないわ、坊や」
空き部屋にまねいた理子ピンは、銀髪を耳にかけた。
「そうね……、トップ10に絞ればどう?」
「んゆ、なんで?」
「足を引っ張るときはね、あまりに実力差がある相手は狙わないものよ。相手の方が、ちょっぴり上のライバル関係。今回だと、トップを狙える位置の子がアヤしいわ」
「ふみゅ。そんな理子ピンの人気は?」
「6位。――あら、アヤしい容疑者がいたわよ、坊や?」
たはは……。
「理子ピンなら、もっとウマくやるでプ」
「ですねぇ。それに、理子さんのお仕事中にも、襲撃は起きてますので」
クロエたんは、データを操作した。
「理子さんのお話をふまえて、トップ勢に絞りました。その結果……1人だけ、該当者が」
クロエたんは名前を告げた。
「んじゃ、確認作業はボクにやらせて?」
「ランペルさま……」
「ボクなら、違ったときはゴメンナサイだし。何より、英雄としてのご指名だからサ。最後まで頑張るヨ」
お部屋で待ってると、全身白いオニャノコが入ってきた。
「ありがとう、ネズちゃん。早速しよっか」
「んねえ、千帆たん」
ランク2位の少女を見上げる。
「キミって、シューゲキ事件の犯人じゃないよね?」
千帆たんは、目をまたたかせた。
「え、なんで?」
「ボクって紳士だから、オニャノコのシフトは覚えてるんでチュ。そんで、時間を調べたら、千帆たんが浮かび上がってきたんでチュ」
「え~? ちょっと~。やだ、ネズちゃ~ん」
千帆たんは、ボクのほっぺをプニッとついた。
「そ~ゆ~ヘンテコな推理、他の人にしちゃダメよ~? 私は大丈夫だけど、怒る人もいるから。とくに、縦ロールのお嬢様なんか、カンカンよ~?」
「あの悪役令嬢たん?」
「そうそう」
悪役令嬢こと、アークヤ・クレイ嬢たん。うみゅ、言いそうでチュ。
反対に、千帆たんは、これっぽっちも言わなそう。
「んじゃあ、違ぅの?」
「もう~、ないない。ないってば~」
「ゴメンでプ」
「いいわよ~? ネズちゃんってカワイイから」
2人は存分にあわっこを楽しんだ。
◇
戦い終わって。
「ネズちゃんって、公園巡りが好きなの?」
「マホロバの中だけでチュけどネ」
「ふ~ん。1人で大丈夫かなあ、ボク?」
「はうぅ……弱っちいけど、すぐ逃げちゃうでプ」
「ウフフ。気を付けてね」
バイバイしてお店を出たあと、【衛星球】を空に浮かべた。
少し歩くと、ムキムキの虎男が後ろに現れる。ボールがバッチリ映してるケド、気付いてないみたい。シュッとナイフを投げてくる。
「きゃう!」
背中に刺さった。コテン。
「フハハッ、くらえ!」
すぐさま抱きしめにくるけど、オノコノコはのーさんきゅー! 【武具作成】で槍を出して、虎の手足を切りつける。
「なにぃ!?」
すかさず虎をグルグル巻き! え~い、召し捕ったりー!
「3人とも、出てきていーよ」
物カゲから、よっしーたんたちが現れた。
「千帆よ。ワシは残念ナノジャ」
「おあいにくさま! これが本性よ!」
捕まった以上、中の人も調べられるモンね。千帆たんも観念したみたい。
モーモーたんは驚いてた。
「なんで、千帆さん……?」
「ハッ、ウシチチ女! おっぱいプルンプルンさせちゃってさ! 大っ嫌いだったよ、バーカ!」
「私が休むときも、すごく親身に……」
「アンポンタン! 1位のテメーがジャマだったからだよ! そのまま辞めてろ、チクショウめー!」
う~みゅ、ガラが悪い。相当カッカしてるでチュー。
クロエたんが冷ややかに見下ろした。
「追放処分で済むことを、感謝して下さい」
「なにソレ、ダサいし! あークソ、ガキに釣られた。判断が足らんかったわ~! アバター人生、ハイ死んだー」
好き勝手言ってるネ。あ、目が合った。
「ところで、英雄サマ? アンタって、ド変態の幼児だったのね~ぇ? ハ~イ、マスコミのエサ、けって~!」
あー、そだねー。覚悟してた。
生け捕りにする以上、口はふさげないモンね。
「千帆よ。おヌシ、なーにをカン違いしとるんジャ?」
シッポで叩くよっしーたん。
「お客さんには、手伝ってもらっただけジャ。ワシのテクを、ちょこっと伝授してノォ」
【武具作成】して槍を出すと、すかさず連続突き。おー、サマになってるでチュ。
最後はピタリと虎のノド元へ。
「ワシと英雄、どっちの立場を用いても、おヌシは言い逃れをするからノオ。強いお客さんと、打ち合わせをしたまでジャ」
虎は、目が点になった。
「じゃ……じゃあ、アンタが!?」
「フフフ、あわっこの支配人とは仮の姿……そう! 英雄とは、ワシのことジャー!」
それにしてもこの幼女、ノリノリである。
(ワシからの謝罪ジャ。ごめんちょ)
(許すでプ)
紳士の心は太平洋でプよ?
モーモーたんにほほえんだ。
(もう、ダイジョビだよ?)
(ありがとう、ランペルくん……ううん、英雄様)
ガクッときた。
(んっとね、モーモーたん? 幼女たんに聞いたんだろ~けど……ナイショ、ね?)
(はい。シーッね)
包み込むように、ギュ~ッてしてくれた。はふ~ん、いい匂~い。
しばらく夢心地だったけど、虎の大泣きで終わっちった。
「あばばぁ~! ずっ……ズビばぜんでじだ~!」
ほえ? どったの?
クロエたんがメガネを直す。
「支配人が、よく言い聞かせましたので」
「ナノジャ~!」
ぅゎ、ょぅι゛ょっょぃ。
だよねー。ポカポカ叩いちったけど、泣く子も黙る魔王でチュもんねー。
「コヤツが単独犯と分かったからノォ。これでもう、誰もおびえんですむノジャ!」
誰も……?
いや、足もとの虎、ガクガクなんでチュけど。
――OHANASHI、コワイでプ。