表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/20

その6 HENTAI魔王

 子ネズミのボクは、妖虎たんの全力テクにヘロヘロだった。

 部屋から出たら、黒エルフたんが笑ってる。


(先ほどは、お楽しみでしたね)

(見てたの!?)

(はい)


 クロエたんは、満足そうにメガネを押し上げた。


(事前に、【衛星球】を入れてましたから)

(うわ~ん! 見せ物じゃな~い!)

(すみません。再び襲われる危険がありましたので)


 あうぅ、そう言われると弱い……。


(気分を害されましたか? では、責任を取って辞職します)

(重いよ! ヤメないでイーって!)

(ありがとうございます)


 クロエたん、ニッコリ。うぅ~、絶対この流れって狙ってたよね? 腹黒~い。


(んねえ、クロエたん? 他に誰か、アヤしい人っている?)

(今はとくに)

(んじゃあ、モーモーたんは今ドコ?)

(リアルで待機してもらってます。お店の子には、体調が悪いとだけ)

(そっか。動揺を防ぐためだネ)

(はい。また、ランク上位の子には、護衛を付けるようにしました)


 ウワサをすれば影。まさに今、人気2位のオニャノコが通路を歩いてきた。


「クロエさん、何かありましたか?」

「これはどうも、千帆さん」


 白いカラスの千帆たん。切れ長の目が印象的な美人さんでプ。後ろには、クマさんの護衛もいまチュね。

 クロエたんは頭を下げた。


「実は、ランペルさまとお会いしたので、少々お話を」

「あらあら。クロエさんは、ショタっ子が大好きですものね」

「千帆さん!? あ、いえ……。決して、そんなコトは……」


 急にしどろもどろ。え、えっ? あれ~っ? クロエたんの受付がヤケに多いのって、そーゆーコトだったの~?


 ――っと、攻めるネタは置いといて。


「んねえ、千帆たん」


 トテテッと近寄った。


「モーモーたん、お休みなの? それじゃあ、忙しくって大変じゃない?」

「大丈夫よ、ネズちゃん」


 頭をナデてくれた。


「それこそ、モモちゃんも忙しかったしね。しばらく休んでもらって、私達でカバーすればいいダケよ」

「さすがでプ」

「なーんて言いつつ、今日は私、これで上がりだけどね」


 ウィンクした千帆たんは、クロエたんに一礼してから【終了】した。

 護衛のクマさんは、奥へと去っていく。


「ふみゅ。他のオニャノコも、こんな態勢でチュか?」

「ええ、ご覧になりますか」

「はいでチュ」


 オニャノコ側の待合室では、3位の悪役令嬢たんがピリピリしてた。


「あ~ら、クロエさん?」


 扇子をパシッと閉じたお嬢タマ。赤いドレスがお似合いでプ。


「ムサい護衛が、目障りですわ。何とかなりませんコト?」

「すみません、お嬢様」


 出た、クロエたんのスマイル。


「警備の仕方を、すこ~し変えたもので」

「はぁ、まったく……」


 頭を振ると、金髪の縦ロールもフルフル。まさにお貴族さまでチュ。

 んでもネ? 実はお嬢タマって、子ブタちゃんの種族なんでプよ? ぷくくっ。


「そこの子ネズミ」


 ありゃ、ジロリと見られたでチュ。


「何をニヤついているの? アタクシは、誇り高きイノシシ。卑しいネズミなど、一緒にいるのも汚らわしくってよ!」


 おおぅ……。蔑みの目でチュ。一部の紳士には、ゴホービみたいでチュよ?

 と、電光掲示板にお嬢タマの名前が出たでチュ。


「フン。失礼するわ」


 カツカツと音を立てて、お仕事へGO。護衛の虎さんは、廊下で立ちんぼでプ。


(んみゅ。これなら、子ブタちゃんが狼にガオーってされても、スグに乗り込めるネ)

(はい。他にも十数名は配備しております。身元もシッカリした精鋭ですよ?)

(それならダイジョビだネ)


 ボクは外に出て【終了】した。






 翌日。


「襲われた!?」


 急いであわっこに行くと、クロエたんが案内してくれる。


(すみません。最下位の子が狙われました)

(どこで!?)

(原宿の裏通りで、投げナイフを食らったようです)

(生きてる!?)

(ええ、数本刺さっただけで、無事に【終了】しました)


 ふひゅ~、ホッとした。

 だけど、すぐに怒りがわく。


(んもう! リスクを甘く見すぎだよ! ぷんすこ!)

(マホロバの町並みは、日本にソックリですからね)


 VR名、マホロバ。地球丸ごとを仮想現実にした世界でチュ。

 エレベーター代わりの「門」に乗ると、紙を渡してくれた。


(このビラが、店頭にバラまかれてました)


 すばやく目を通す。


“トップを休ませるだと? いずれ復帰させて、コキ使う気だろう。ならば、他の者が犠牲になるまでだ。手始めに、一番下からやってやった。これは店をたたむまで続くぞ”


(アチャ~。みんな知っちゃった?)

(おそらくは)

(襲われた子って、どうしてる?)

(店をやめると泣いておりましたが、ひとまず休み扱いにしております)


 最上階でおりると、大きなドアの前にやってきた。


「支配人はこちらに」

「分かった」


 どんな人だろ。頼れるマッチョマンかな。

 ガチャリと開けると、そこには竜人の幼女がいた。


「お久しぶりナノジャ~!」


 パタン。


「ボク、お部屋まちがえたみたい」

「合ってます、ランペルさま」


 幼女がワメいてる。


「コラ~、ネズミ小僧! なんで閉めるノジャ~!」

「えー? だって……フザけてんの?」

「お前が言うなナノジャー!」


 失礼な、カワイイ紳士に向かって。


「ランペルさま、お願いします」

「うぇー、開けるの?」


 ガチャ。


「フハハ! よく来たのお、ランペル!」


 身長145cmの竜幼女が、ない胸をそらしてフンゾリ返ってた。


「ワシが支配人、ナノジャー・ヨシワラじゃ! ナノジャーと呼ぶがよい!」


 竜のオニャノコは、2本の角を生やしてた。

 緑の翼に緑のシッポ、オマケに髪まで緑、と。


「よっし~」

「コラー! ワシを学生時代のあだ名で呼ぶなナノジャー!」


 知らんでチュー。


「え~い! かくなる上は、クマさんで見たヒミツをバラしちゃるノジャ~!」

「クマさん?」


 ぽくぽくぽく。

 チーン。


「おパンツ?」

「違うノジャー! おヌシが妖虎をつかまえたとき、護衛がおったじゃろ! てゆーか、昨日の千帆のガード! あれがワシじゃー!」

「あー、あのときの」


 そっかー、支配人さんが入ってたんでチュか~。

 アダ名がたしか、スゴかったハズ。あ、そだそだ。


「HENTAI魔王」

「ウガー!」


 魔王たん、ぷんすこ。カワイイ。

 クロエたんがチョップした。


「支配人。ボケはいいので本題に」

「はうぅ……クロエはキツいノジャ」


 よっしーたん、頭をさすさす。


「ランペル……いや、英雄よ」


 よっしーたん、キリッ。


「ワシは今回の事件、イヤガラセじゃと思っておる。しかし、大きな陰謀があるやもしれん。おヌシに協力をお願いするノジャ」

「いいよー」

「お~、頼もしいノジャ! オニャノコのため、全力で頑張ってくれるかノォ?」

「もちろんでチュ」


 紳士2人は、固く握手を交わした。


「では、ワシが早速、お店の子を安心させに行くノジャ!」




 広間には、お店のオニャノコが集まってた。

 ボクは、部屋でお留守番。【衛星球】で、様子を見てる。


 ステージの前で、千帆たんがお嬢タマと話してた。


『モモちゃん、辞めちゃうかもしれないわね』

『フン! トップに立つ者が、軟弱ですわ!』

『そんなこと言わないの。いい? 彼女は狙われてたのよ?』

『そして、休んでやり過ごしていたのですわね』

『ええ。だけど、襲撃が起きちゃった。――復帰したら狙われるって考えたら、引退も十分あり得るわ』


 あぅ~。他のオニャノコも心配してる。

 ヤバいょ~、やめにゃいで~。


『ご静粛に』


 クロエたんがステージに立った。舞台のソデにうなずくと、1人のオニャノコが現れる。


『皆さん。心配かけて、すみませんでした』


 たぷたぷでミルキー肌の……え、モーモーたん!?


『私、今日から復帰します』


 よ……良かったでチュ~!

 あと、いつものホルスタイン柄じゃない、青いワンピースも、すんごくラブリ~でチュ~。


『ア~ラ、牛の聖女様』


 お嬢タマが扇子で指した。


『アナタ、まだ休んでいても良くってよ?』

『ありがとう、イノシシのお嬢様。もう、平気ですよ』


 よっしーたんも現れた。


『みな、落ち着くノジャ!』


 ステージ上から、ぐるりと見渡す。


『すでに、チラシの件は知っておるな? モモは、ワシが休ませたノジャ! しかし、残念ながら被害を出してしまった。これは全て、ワシの見通しが甘かったせいジャ。すまぬ!』


 深々と頭を下げるよっしーたん。こーゆートコロはオトナでプね。


『狙われた場所じゃが、店の外じゃ。つまり、アバターを変えずに出歩いたのが原因ナノジャ! よって、外出時は違うアバターに変えること。変えぬなら、店の中だけで行動すること。これを、徹底してほしいノジャ!』

『あの』


 千帆たんが手を挙げた。


『この建物は、本当に大丈夫なんですか?』

『さらに護衛を増やしたノジャ! 中はゼッタイ安全ジャ!』


 力強くうなずくケド、アチコチから不安の声が聞こえる。


『そうは言っても……』

『恐いわよねぇ、マホロバって』

『えぇ、襲われたら……』


 うんうん、ボクみたいな冷静さって、難しいよネ。

 ――アレ? そしたらこの問題、長引いちゃうよ? あうぅ、それは困る~。


『みんな! 安心するノジャ!』


 幼女は、ぺたんこの胸をトンと叩いた。


『事件の解決を、スゴい人に頼んだからノォ!』


 ほえ、誰?


『何を隠そう! マホロバの英雄、葦原さんジャー!』


 ブッフゥーッ!

 なに言っちゃってんの、この幼女ー!?


『英雄様!?』

『それなら……』

『会ってみた~い!』


 あわてるボクとはアベコベに、オニャノコの動揺は見るまにおさまった。

 えぇっ!? ウソ、そんなコトで~!?


『むろん、アバターを変えての調査となるからノオ。英雄さまと、一戦交えたいなどという淑女、もしくは紳士の皆さまよ? 悪しからずナノジャ』


 頭を下げるよっしーたんに、オニャノコたちは笑う余裕まで出てきたみたい。クスクス聞こえてくる。


 だけどネ! ボクはパニックだよ!? うわ~ん!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ