その18 ショタ猫の《神業》
年が明けて、ネズミのボクは「ラビ庵ローズ」に出かけたでチュ~。
2号店ってば、開店直後から混んでたモンね。ボクは紳士だから、もっと混むよーなコトはしないでプ。ちゃ~んと、空いてから行くように待ってたでプよ?
受付でウサギたんとアイサツして、待合室へゴー! 妖虎たんにお呼ばれしてたから、ちょっと早めに来たでプ。
「んゆ?」
待合室には、12才ぐらいのショタ猫きゅんがお座りチてた。サラサラの銀髪で、純白のおぱんつを被ってる。うわぉ、紛う事無き紳士きゅんでチュ。
「おや」
向こうも気付いたみたい。ニッコリ笑って手をフリフリされる。
「キミは……ランペルくんだね」
「そーゆー紳士きゅんは……『マンチカン』きゅんでチュね」
1秒見つめたら、猫きゅんの上にふきだしみたいな情報が出てきたでプ。
「んっと、猫の種類にいるってのは知ってたでチュけど、マンきゅんの紳士スタイルを見ると、どーしてもヤヴァい方のネタがチラつくでチュ」
「ああ、コレだね」
マンきゅんは、おぱんつをつついて笑った。
「大丈夫、ここだけだから。外では他の紳士が白い目で見られちゃうから、しないよ」
「そんならオッケーでプ」
「良かった」
マンきゅん、ニッコリ。うわあ、おぱんつがなかったら、クロエたんには悶絶レベルの破壊力でチュ。
「ところでランペルくんは、外でもその姿なの?」
「別アバターはあるでチュけど、この姿でもフツーに出るでチュよ」
「スゴいね」
「そんなことないでプ」
ボクはピョンと隣に座った。
「んっと、たとえば、魂と肉体が違うって告白した鮎たんの方がスゴいでプ」
「ああ、彼女か」
マンきゅんは大きくうなずいた。
「彼女には、僕も勇気づけられたよ。僕は男だけど、肉体は女でね」
「ってことは、鮎たんの逆でチュか」
「うん。格闘が好きだったんだけどさ、筋肉の付き方が違うから、悔しかったよ。だから、この世界が出来て嬉しかったな。それで、最初はマッチョな男になってたんだ」
「今は……おぱんつショタきゅんでチュね」
「うん。実はソコなんだ」
マンきゅんは猫耳をかいた。
「マッチョになってみて、スグに分かったよ。『ああ、これは僕の姿じゃないな』って。――でも、僕はマホロバでカミングアウト出来なかった」
「なんででチュか?」
「マホロバではね、『リアルは女だからマッチョに憧れてた』ってふうに、仕事仲間に打ち明けてたんだ」
マンきゅんははにかんだ。
「なのにさあ、それを口にしてたことで、今度は『少女みたいな少年がベストでした』って、ずっと言えなかったんだよ」
「ふみゅ。たしかに説明しづらいでチュね」
筋肉のついたアバターが良いって言ってたのに、実は細っこい猫少年が良かったとか、「え、筋肉の話ってなんだったの?」ってなりそうでプ。
「んでもネ? マンきゅんの魂がソレなら、ソレでいーんでチュよ」
マンきゅんは、大きな金目をパチクリしたあと、ボクの頭をなでてくれた。
「ありがとう、ランペルくん。――いや、英雄様に憧れた、甥っ子クンの方がいいかな?」
「てひひ……」
そのとき、マンきゅんが立ち上がった。
「さてと、呼ばれた。近々大仕事があるから、盛大にあわっこするかな」
「またお話ししたいでチュ、マンきゅん」
「うん。それじゃあね、甥っ子くん」
すごい爽やかなオノコノコだったでチュ。う~みゅ、おぱんつ被ってて、あの清純さはズルいでチュ~。
(お待たせしたッス、ランペル師匠! いらっしゃいませッス!)
(ほむ、すぐに行っちゃうでプよ)
そのあと、ボクも妖虎たんとあわっこを堪能したのでチた。
◇
◇
◇
◇
◇
妖虎たんもタフだから、5戦ほどみっちりプレイしたでプ。てひひ。
「俺のプレイ、どうだったッスか、師匠?」
「大分うまくなったでプね」
「おぉっ! 師匠にホメてもらえて嬉しいッス!」
親指を立ててスマイルを見せる妖虎たん。んでも、すぐに顔を曇らせる。
「そういや師匠、遅ればせながら、英雄様の甥っ子って話、聞いたッスよ?」
「ほえ?」
「道理で強いはずッスけど……水くさいッスよ~」
「いや、それは単に憧れてるだけでチュ。本当に甥っ子なワケじゃないでプよ?」
うみゅ、中の人は同じでチュけどね。
――んゆ?
そーいえば、なんでマンきゅんは、甥っ子って知ってたんでチュかね?
んまあ、ボクのヒミツってポロポロ漏れてるでプし、英雄ってバレるよりはいーでチュ、うみゅ。
妖虎たんが、ボクを「高い高い」してくれた。
「師匠は強いッスけど、最近は凶悪なざまぁ団も増えてるッス。集団で襲われないよう、気をつけて下さいッスよ」
「ん、妖虎たんもね」
ギュッとハグしてお別れしたでチュ。
今回の冒険者パーティーは、大チームが組まれていた。ざまぁ団の第46支部と第26支部の合同チームを退治するためである。
もみじとパールの両名も、久しぶりの参加だ。
「パールちゃん、こっちは久々ね」
「え? そ、そうね、もみじちゃん」
にゃはは、パールたんってば、サッきゅんとしても活動してるもんね~。――って、早くも集中が切れちったでチュ。
もみじたんが、丁寧にペコリ。
「お久しぶりです、葦原さん」
「ああ。今日もよろしく頼むよ」
パールたんは、頭をカキカキ笑ってた。
「あははっ。いや~、英雄様。最近あたしたち、マホロバ・ライトで働いてまして~」
「へえ。そっちでは何をやってるんだい?」
「子供たちの教育ですね~。とくに、マホロバできちんと立ち回れるように、逃げ方のレクチャーなどを」
「なるほど」
違法あわっこ店から助けた子たちでチュね。
「あたしの男性アバターでの姿を、子供たちが気に入ってくれたらしくて。運営さんからも是非にと」
「それは良かったね」
「はい。あと、お金も結構いいんで、本格的にシフトしようかと」
「ははは。うん、そっちの方がいいかもね」
ライトの方なら、死なないでチュもんネ。
冒険者仲間は、まだ死亡者ゼロでプけど、ざまぁ団にはちらほら出てるでプ。
「ケケッ、守銭奴天使にはお似合いだな」
「何よ、ゲハラーヅ!」
パールたんとお馬きゅんによって場の空気がほぐれたのち、ボクはみんなを見回した。
「多人数戦は、何が起きるか分からない。十分気を付けてくれ。あと、危なくなったら逃げるようにね」
みんなが口々に了解の返事をした。うみゅ、いよいよ出陣でプ。
「英雄チームが出たぞー!」
敵の怒号とともに、こちらは突入した。準備前の段階で探知呪文を使われたため、接近はバレてしまったものの、1人1人はこちらの方が強い。
「鬼六のテクを食らうっシュ!」
先生もダイス片手に駆けだしていく。負けじとボクも英雄アバターでダッシュ。次々と敵を切りつけていく。
(ゲゲーッ! あ、葦原ー! こっちにメチャクチャ強い奴がいる!)
(分かった、ゲハラーヅ。すぐ行く!)
(頼む! 俺は【終了】する!)
ほむ、お馬たんもかなり強いんでプけど、囲まれたんでチュかね。
ビューンって駆け付けると、そこには爽やかな猫少年がいた。
――え、マンきゅん? なんで!?
「おや」
向こうも気付いたみたい。ニッコリ笑って手をフリフリされる。
「キミが英雄、葦原英クンか。――手合わせしたいと思っていたよ」
おぱんつは被ってないから、本当にただの優しそうなショタ猫きゅん。
んでも……今は敵!
マンきゅんの肉球に青い光が集まったあと、パッと光が弾けた。1回だけ攻撃を防ぐっていう【巨大な盾】だね。それが張られる。
「ざまぁ団の46と26、そして第4支部の僕がお相手するよ」
身のこなしが、強敵っぽいでチュ。
ためしに槍を突き出したケド、【武具作成】で同じく槍を出された。カキィンって、クリティカルで止められる。
「お返しだ」
マンきゅんの槍攻撃。こっちもカキィン!
「さすが英雄様、これぐらいはお手の物か」
「君も、《神業》の使い方が上手いね」
猫、猿、ネズミだけが持ってる《神業》ってユニークスキルは、発動すると体の動きがよくなるの。いっつも使ってると、あっという間にガス欠しちゃうから、こまめにクールタイムをとる必要があるんでプけど、マンきゅんは今まで見た敵で一番上手いでプね。
その後も、キッチリとクリティカルで止めるマンきゅん。ホントは、体格が大きいと跳ね飛ばしも出来るんだけど、クリティカルには効果ない。
「英雄様、どうしたのかな? 小さい相手だから手加減してるとか?」
そんなワケないでプ。ボクはいつも全力でチュ。
全力でやってて……押されてるでチュ!
少しずつマンきゅんの攻撃がボクにヒットし始めた。どっちもクリティカルで止めると、体の大きさってタダの的になるんでプね。
こりは……マズイでチュ!
ボクは、強引にマンきゅんをつかみにいった。《神業》の攻防を制し、槍で槍を跳ね飛ばす。
――とらえたでチュ!
細い体をガッチリと拘束する。
「大人しくしろ」
「ふふっ」
直後、マンきゅんが〖脱出2〗でボクを振り解いた。逆に、【武具作成】の槍でザクザク突かれる。
「うっ……!」
「去年できた違法呪文だ。もちろん持ってるよ?」
仕方ない。――奥の手でチュ!
ボクはこっそりと後ろ手にして、白い光を集めた。すかさず間をつめて、マンきゅんの目の前で【閃光】を放つ!
「む!」
相手が止まったスキに槍で連続攻撃に入る。そのつもりで目を開けた瞬間。
バシッ!
「なっ……!」
ザクザクザクザクーッ!
【閃光】返し!?
「その手は調べがついてる。――英雄様の戦いは、よーく研究したからね」
「くっ!」
目がくらみつつ、やたらに槍を振り回しても手応えはない。たぶん、【飛燕】でキョリを取られた。
ザクザクザクザクーッ!
「甘いね、後ろだよ」
つ、強いでプ……。
「窮屈そうだね、英雄様。なまじ強かったばかりに、ざまぁ団も苦労した」
「なぜだ? なぜ君は、その強さを持ちながら、ざまぁ団に入った?」
「僕に言わせれば、あなたこそ、なぜ冒険者をしているのか分からないな。この世界は、1度終わりにすべきだ」
ボクは視界を取り戻して槍を構えようとした。
(英雄様、退いて!)
(パールさん!?)
念話が入る。
(ダメだ、彼を野放しにしてはおけない)
(違うわ! 一番ダメなのは、あなたが倒されることよ!)
(!)
気付けば、双方半数ほどが【終了】をしている。
(あの猫を倒せるイメージはあった!? 今のまま戦っても、勝てないわ!)
(――分かった)
【煙幕】や【霧】が撃たれたので、それに紛れて逃亡した。
――敗北でチュ。
ざまぁ団の歓声が、ひどく耳に残った。




