その13 ビースト・ファンタジア
よっしーたんが、敵とOHANASHIした結果を教えてくれた。
「奴らは、新宿のあわっこ店に頼まれて来たそうジャ」
お店の最上階にある社長室には、ボクと鬼六きゅんが呼ばれてる。ボクが4才、黒鬼きゅんが6才、そんでよっしーたんが11才。みんなチミっこでチュね。
「んねぇ、よっしーたん? あわっこって、ココだけじゃないんでプか?」
「いい質問じゃノォ、ランペル。現在は、VRでキチンと認められたあわっこはウチだけジャ」
「つまり、他は違法なんでプね」
「そうジャな」
先生も質問した。
「鬼六たちを呼んだのは、ああいう奴らを撃退するためっシュか?」
「いいや、違うのジャ」
ほえ?
「実は、彼女たちと一緒に、そのお店へ行ってほしいのジャ」
よっしーたんが手を叩くと、扉がガチャリと開いた。
そこには、クロエたんとサッきゅんの姿が。
「お金は私たちが出しますので、楽しみましょう」
「あははっ、楽しみましょう~」
ほむ、オニャノコの店の人から、別のお店に行くよう誘われたでチュ。
「ボクは行きたいでチュけど、鬼六きゅんはどうでチュか?」
「先輩におともするっシュ」
オニャノコの頼みは受ける。これぞ紳士でチュ。
新宿までの【門】を準備する間、クロエたんが話をしてくれた。
(向かうお店ですが、ビースト・ファンタジアと言います。そこは、表向きは女性とお話しできる飲み屋さんですが、気に入った女性がいると、奥へ一緒に入ってあわっこをするという仕組みですね)
(ふみゅふみゅ)
(我々は、そこでお話しだけをして帰ってきます。まずは偵察しましょう)
鬼六きゅんは、サッきゅんとお話ししてた。
「サファイアしゃんは、悪魔っぽくないっシュね」
「え?」
「そう……。まるで、天使のようっシュ」
「お、鬼六さん!? あ、あはは……」
うわぉ、元から青いサッきゅんのお顔が、さらに青くなったでチュ。先生の眼力って、パないでプね。
サッきゅんってば、そそくさとテレパシーに切り替えてた。バラさないようお願いしてるんでプね、きっと。
【門】をくぐり抜けたら、そこはもう、新宿の冒険者ギルドの前でチた。
「ランペルさま、それでは私たち、少し入り直してきます」
「分かったでプ」
クロエたんとサッきゅんは、アバターを変えるため【終了】した。
しばらく待ってると、エルフのオノコノコと赤鬼のオノコノコが【開始】してくる。どっちも長身で、抜群に格好いいでプね。
「オレはシロエだ。よろしくな、ベイビー」
「僕はサードニクス。今日はランペル君と鬼六君が、オニャノコの店に連れてってくれるんだよね?」
うわー、なんか立ちポーズまでキメて、ノリノリでチュ。
(みなさま。お分かりかと思いますが、シロエがクロエです)
(それで、サードニクスがサファイアね。あ、パールでもいいですよ?)
腹黒たんとサッきゅんでいーでチュ。
ボクは2人を見上げた。
(アバターを変えると、がらっとキャラが変わるでチュね)
(えっ?)
な……なんでチュか、その呆れたよーな目は?
プンスコでチュ。
お店では、ボクと腹黒たんチーム、鬼六きゅんとサッきゅんチームで別れて入った。
ちょびっと暗めの店内では、ウサギのオニャノコと一緒に、木の人が飲んでたでチュ。
「ああ、オイシイねえ」
えぇ……? オニャノコも、どう接していいか戸惑ってるでチュよ?
高さ2mぐらいの樫っぽい木さんでチュね。根っこがワサワサしてて、太い幹の真ん中にはお口がポッカリ。《森の声》とかいうユニークスキルでお口がついてたハズでチュけど、正直怖いでプ。
(ランペルさま。あの方なら、あわっこにもいらしてますよ?)
(え、ウソ!?)
(ほとんどカブらない時間でしたからね)
そうだったでチュか。あわっこは24時間やってるから納得でチュ。
お席に案内されて、オニャノコたちとお話しタイム。んでも、始めこそチヤホヤ構ってくれたけど、明らかに腹黒たんの方がウケがいい。
むぎゅぎゅ……ナゼじゃ~!
猫のオニャノコが頭をなでてくれた。
「ランペルさんは、可愛いです。でも、シロエさんは、格好いいです」
げふ~。
「身もフタもない言葉、あぃがと……」
「? 身とフタが、どうかしましたか?」
ほえ? 意味が通じてない?
「ん~っとね。意味は、『それを言っちゃあオシマイ』ってコトでチュ」
「なるほど、分かりました。ありがとうございます」
ふみゅ。そんなにムズかしい言葉でチたっけ?
それに……ニャンコたんってば、さっきから、丁寧ではあるんでチュけど、な~んかぎこちないよーな。
「ランペルさん。あわっこに、行きませんか?」
「ん~、もうちょい飲みたいでチュ」
カラフルな果実酒をクピクピ。あ、マホロバは「よんさい」でも大丈夫でチュからね?
「んねえ、猫たん。キミはなんでボクの方に来たの? ライバルが少ないから?」
「違います。あなたを見てると、弟に似てるんです」
「おとうと?」
「はい。それで、コチラに来ました」
えぇ~、ちょっと待って~? そうでなかったら、このニャンコたんも腹黒はーれむに行ったってコト~? げふげふげふー。
「ボクは、その弟クンに感謝するでプ……。小さい頃が似てたんでプか?」
「いえ。今似てます。背も同じくらいで……あっ!」
んゆ? ニャンコたん、黙っちった。あ、奥から大きなクマさんが出てきて、連れてっちゃう。
「あ、待って」
止めたら、クマさんがこっちをジロリ。
「お客さん。あわっこするんですか?」
「いや、それは……」
偵察って言われたからネ。んでも、なんか絶対オカシイよ。ここのオニャノコたち、何かヒミツがある。
「待って下さいよ」
そのとき、お店の向こうで木さんの声がした。
「1000円って聞いたから入ったんですよ? それなのに30万は、ぼったくりでしょ?」
「お客さぁん。困りますねぇ」
木さんを囲んでるのは、負けず劣らずおっきなクマさんたちでチュ。今は、目に傷のあるクマさんがやりとりしてるでチュね。
「ウチのバーは、上質なサービスを提供してますよ」
「あわっこもしてないのにですか?」
「じゃあ、好きな子を選んで、奥でヨロシクやって下さいよ」
「いやぁ~、そうしたいのは山々ですけど……」
木さんは、枝をバサバサと揺らして、オニャノコたちを指し示した。
「ここの女の子達、未成年でしょ?」
あっ……。
違和感はソレだったんでチュか!
傷クマが頭をかいてた。
「あのねぇ、お客さぁん……」
「それも、ヘタしたら、小学生ぐらいの子ですよね。気付いちゃった以上、報告しましたよ? そういう子を働かせちゃダメですって」
傷クマが、大きく息を吐いたあと、アゴをクイッとした。
「おい、店閉めろ」
入り口のクマがバタンと閉じる。
「お客さぁん……あんた、言っちゃったね?」
ドガッ!
うわ、木さんにタックル! スゴくヤバい雰囲気!
「本業相手に、イキっちゃ駄目だよぉ? このマホロバってトコはねぇ、殺人罪が適用されないんだよぉ?」
「あぐぐ……」
うわっ、クマたちがボコボコにしてるでチュ! すぐ助けるよ!
(ランペルさま!)
(止めないよね、クロエたん!)
(――殺さぬよう、お願いします)
(おっけ!)
ボクはすかさず槍を出して、バンバン足を切りつけていった。
「なにぃ!?」
すぐにクマーズが捕まえようとしてくるけど、お店の中は障害物だらけだからネ。テーブルやらソファやら、好き放題使って次々クマを転がしていく。そこを鬼六きゅんが、ナワでグルグル縛り。このへんは「あうんの呼吸」でプ!
「おい! ガキども!」
む、傷クマでチュ。
「――ウチで金出すぞ。こっちにつかねえか?」
ふっ。おへそで茶をわかすでプ。
「んべぇ~っだ!」
ズンバラリと手足を切りつけ、見事に制圧したのでチた。
サッきゅんが、オニャノコたちを集めてなだめてる。
「みんな、僕の所に集まって。もう安心だよ」
オニャノコたちってば、シクシク泣いてた。うわー、ホントに無理矢理だったんでチュかー。
縛られた傷クマが、ボクをにらみつけてくる。
「クソッ……お前ら、ココを襲って無事でいられると思うなよ……?」
そんな傷クマに、さっそうと歩いていったのは腹黒きゅん。
「念話で伝えるよ」
テレパシーが始まった。そしたら、どんどん傷クマの顔が崩れていく。
「うっ……ぐぐっ……」
それを見たシロエたんは、振り返ってニッコリ。
「みんな、大丈夫。カタはついたから」
腹黒たん……恐ろしい子でチュ。
お店で働いてたオニャノコは、みんな未成年だった。
呆れたのは、クマーズも、ほとんど未成年のオノコノコだったことネ。
よっしーたんが話してくれた。
「アジア、アフリカ、中南米……。安い労働力には事欠かんノジャ」
「でも、子供を働かせるとか、本気でダメでチュ!」
「管理のしやすさなのジャ」
「だけど、気付いたハズでプ!」
翻訳機能を使えば日本語も出来るけど、丁寧な言葉のみ。ことわざもまだ直訳のみ。
「違和感は覚えたハズでプよ! プンスコ!」
「ランペルよ。――世の中な、気付いた上であわっこをする、大バカタレもいるノジャ」
よっしーたんは、ボクの肩をポンポンと叩いた。
「ウチはもちろん、全員が成人ジャ。きちんと本人の希望である旨、確認をとっておる」
「よっしーたん……」
「唯一のVR認可とは、そういうコトじゃ」
「さすがでプ」
よっしーたんは優しく笑った。
「ランペル。今日はしていくか?」
「ん~……やめ……いや、やっぱりするでチュ」
「くふふ。それでこそ、ランペルじゃ」
ビースト・ファンタジアっていうプンスコなお店は、すぐにツブれた。
そこで働いてたオニャノコとオノコノコたちは、マホロバの運営さんが持ってる養護施設で受け入れたそうでチュ。
「んでも、他にもこういう違法なお店はイッパイあるでチュよね?」
「ランペル。あまり根を詰めるなナノジャ」
出来ることと、するのが難しいこと。
ちょっぴり……ほろ苦いでチュ。




