その1 ショタ、あわっこで丸裸になる。
「『あわっこ☆吉原』が、VRにオープン!?」
世界初の電脳ソープ、誕生――。
この知らせは、光の速さで紳士たちのあいだを駆け巡った。
「YEAAAAH! ヤッパリ ジャパニーズ ハ サイコー ダゼ!」
「サスガ HENTAI ノ クニ ネ!」
海外勢もこの賛辞である。
今回のVRMMOは、リアリティの高さがウリだった。そのせいで、「ゲーム内の死が現実の脳死」を引き起こしたほどである。開幕直後の事故は、繰り返しメディアで報じられた。
だが、紳士のエロスは、アッサリと恐怖を乗りこえたのだった。だって紳士だし。
そして、今。
「あわっこ」に参戦すべく、千葉県で小さなネズミ紳士が生まれようとしていた。
※
にゅふ~、ボクちゃん、待ったでチュ~!
モチ、サブアバターね! 英雄のイメージは守るでプよ?
事前にチェックして、オニャノコ受けもバッチシ!
ヘッドギアをかぶって、いざ【開始】~!!
ん。まずは、VRの自宅に出現っと。
ボク自身のスペック、改めて確認ネ。
やっぱ、身長1mってちっこいや。
耳はウチワみたいのが上についてる。ふにゅふにゅ。
あっ、シッポ! 短パンの上から、チョロンっと出てる。フリフリ~。はぁ~ん、ボクかわいい~!
「あー、ア~。うさぎお~いし、食べたい~。こぶなつ~りし、食べたい~」
にゅふ、オニャノコみたいな高音。さすがは子ネズミたん♪
あどけなさ全開の愛らしい顔。ニパッと笑えば、ボク自身もクラッときちゃう。
――よし、いける!
「出陣じゃ~!」
もう、誰もボクを止められない!
ランペルくん伝説、始まりでチュ~!
受付でオネーサンに止められた。
ぷぇー、伝説終了でチュー。
「お客さまは何才ですか?」
「ボクよんさい!」
すっごくニラまれた。
「リアル年齢は!?」
「あっ、はい。21です」
怒らりた。ペコペコ。
「はぁ……、ではランペルさん。一度【終了】して、アバターに年齢を表示してから来て下さい」
う~、エロスは年齢にキビしいな~。あ、でもでも、メガネの黒エルフたんに「メッ」されるとか、ゴホウビでプ♪
出戻り後、ピンときたオニャノコをご指名したら、個室に案内された。期待にムネをふくらませてると、同じくおムネをふくらませたモーモーたんが入ってくる。
フヒョ~、たぷんたぷん!
「あら、初めての相手は、随分おチビちゃんなのね」
「えへへ」
大事なトコにアタッチメントをつけて、準備OK!
「コッチはちゃ~んと、満足させられるヨ?」
「んふふ、期待してるわ」
ボクとモーモーたんは仲良く運動した。
◇
「ラ、ランペルくん……。スゴすぎ……」
「にゅふ、ミルクごちそうさま」
戦い終わればノーサイド。ギュッと抱きしめて、フレンド登録をした。
はふ~ん、あわっこ最高! こりゃ~セイコーするよ、うん!
じっさい、大好評だった。現実だと奥手な紳士さんたちも、VRなら意外とダイタン? 需要があったのかも。供給の面でも、シロートさんの掘り起こしがあったりとか、そりゃもうスゴいし。
そんな感じで、順調なスタートを切ったんだけど、中には、不満タラタラの紳士さんもいたみたい。
「なんで、モモちゃんに会えないッスか!?」
「都合がございまして」
ある日、お店を訪れると、虎女ちゃんが受付さんに詰め寄ってた。
「お客さま。乳牛アバターがお好みでしたら、他にも何名か……」
「イヤだ! モモちゃんがいいッス!」
バブれたら、かえってモーモーたんには会えないよ? あ、モモたんの愛称ね、これ。
ダダっ子たんは、お店の護衛さんが出てきたらソソクサと帰っていった。ん~、イケナイ紳士でプ。
「あの虎女さんもねえ」
モーモーたんも、大きなムネをいためてるみたい。うんうん、暴走するファンは困るよね。
「あ、ごめんなさい。ランペルくんにグチってもダメよね」
「ん~ん、全然! 困ったちゃんは、ボクがやっつけたげる!」
「ふふっ、ありがとう。ちっちゃなナイトさん」
ホメられちった。
オニャノコに感謝されると、オノコノコは120%で頑張っちゃうのでプ。
チャンスは意外と早かった。
「どーゆーことッスか!? なんでこのチビ助は何度も会えるッス!」
翌日行くと、まーた虎女たんが文句言ってた。
「ヒイキじゃねッスか!」
「たまたまです」
もちろん違う。ホントは、向こうの空いてる時間にお呼ばれするカラだね。
ボクは、モーモーたんの他にも、いっぱいフレンド登録させてもらってる。お店にいるオニャノコって多いから、中にはヒマしてる子も出てくるでしょ? そういった子が、次々と逆指名してくれるワケ。まあ、マメに行けちゃえるのは、自分でも意外な才能だったケドさ。
んでネ、感謝の意味がこもってるのかな? 今やトップのモーモーたんからも、お声が掛かるって仕組みなの。ちなみに彼女って、一覧にはもう出ないから、お客さんはほぼ固定。ボクが呼ばれてるのは光栄でプ。
そもそも、オニャノコにも好みはあるワケだし。文句たれのオノコノコとか、ホントはとっくに出入り禁止だよ? 彼女のふところとムネの大きさには、本当に感謝すべき。
――なんだけど。
「ちくしょう!」
虎女たんには、サッパリみたい。
「バカにしてるッス!」
「キャア!」
うわ、剣抜いちゃった。あ、おマタの奴じゃなくて、真剣のほうね。
「こんなチビの、どこがいいッスか!?」
え、ボク? ワチャ、こっち来た!
「ね……ねえ、虎女ちゃん? モーモーたんが悲しむから、そーゆーのはやめたげて?」
「なんスか、チビ助! だいたい、幼児プレイって、お前ヘンタイじゃねッスか!」
うえ~、そこイジる~? キミだって、中の人オトコじゃ~ん。
「吹っ飛べ、チビ助!」
ガードしたけど、壁まで飛ばされた。あちゃぁ、このカラダ、思った以上に軽い。
「ランペルさま、お逃げください!」
黒エルフたんが駆け寄ってきた。
「すでに他のお客さまは退避されました! あとは店の者にお任せを!」
あ~、VRのルールが発動しちゃった。これは虎女ちゃん、ヤバいぞ~?
――しょうがない、一肌脱ぐか。
「気持ちだけもらっとくネ、エルフたん」
寝転がった状態から、ピョンと跳ね起きた。
「ンでも、紳士のオイタは、紳士がカタつけるよ」
「ランペルさま!?」
軽やかに前へ出る。虎女ちゃんはヨユーの笑みだ。
「ハッ! やる気ッスか、チビ助!? 勝てると思ってんスか!」
「あのさあ。大ピンチだよ、キミ?」
「ほざけッス!」
同じ太刀筋で切りかかってきた。すかさず【武具作成】して槍を出し、真正面から受ける。
カキィン!
「はぁ!?」
クリティカルでガード。うん、これなら飛ばないネ。
さくっと両足を切りつけ、地面に転がした。道具袋からナワを出し、フン縛って【終了】もさせない。
「え……? な、なんでッス……?」
悔しいってより、ポカンとしてるね。
黒エルフさんも護衛さんも、呆気に取られてた。
えへへ……。実はボク、こういう戦いにも強いの。
「受付さん。彼にお説教するから、部屋を貸して? その分のお金は払うから」
「は、はい」
ご指名の他に、カップルでの利用もOKなのがココの魅力。フツーは別の場所から入るんだけどネ。
案内がてら、護衛のクマさんには、グルグル巻きの虎さんを運んでもらった。マッサージベッドの上に放ってもらうと、受付さんから念話がくる。
(ランペルさま、申し訳ございませんでした)
(ん~ん。こっちこそ、出しゃばってゴメンネ)
ホンワカしたけど、虎女たんはガクガクおびえてる。
「な、なんでもするから、助けてくれッス~……!」
「んゆ? じゃあ、オシオキするね」
ペチッと虎女たんの頭を叩いたあと、ロープをほどいてあげた。
別に逃がすわけじゃないよ? この手のお店って、お客さんは個室の中じゃ【終了】できないからネ。
「あのねえ、キミ。さんざんメーワク行為をした挙げ句、ボクにダメージ与えたでしょ? 完全にアウト。ボクが帰ってたら、キミ死んでたよ?」
「そ、そんな~……」
「ンでも、そうなったらきっと、モーモーたんが悲しむでしょ? 彼女は優しいから。それで助けたの」
虎女たんはガックリと頭をたれた。
マァ、この子はそこまで強くなかったから、テキトーに無力化されたあと、VRを永久追放ぐらいだったカナ。んでも、アバター紳士としての活動はそれで死んじゃうから、ウソじゃないヨ。
「わ、悪かったッス、ランペルさん……。お仕置き、身にしみたッス」
「ほえ、なに言ってんの?」
指を弾いて、戦闘時のスタイルに早変わり。
「今のは、お説教。オシオキって、これからだよ?」
「え……」
「言ったよね、キミ。なんでもするって?」
肉付きいいんだよね~、虎女たん。おムネもグレイトなカップだし。じゅるり。
「だいじょび♪ 戦いを通じて、愛を教えたげるダケだから」
「ファッ!?」
大きなアタッチメントを出した途端、虎女たんはズザザッと離れた。
「イヤ! オオォオレ、男ッスよ!?」
「ん~ん。今はおにゃのこ♪」
実はボク、お外がオニャノコなら、中がオノコノコでも気にしないタイプでチュ。
そんじゃま、虎女たんとの初対戦!
「レッツ、ぷれ~い!」
「あ゛ーっ!」
◇
◇
◇
「ね? 愛ある『あわっこ』って、気持ちいいでしょ?」
「――はい」
「ん。良かった♪」
OSHIOKI、完了でプ。
フラフラの虎女たんをリリースしたのち、もういっぺん受付へと戻ってきた。
「黒エルフたん、あぃがと」
「いえ、こちらこそ。スゴい立ち回りでしたね」
「えへへ」
深々とおじぎしてくれた。てへっ、これでメデタシメデタシだネ♪
だけど、顔を上げた黒エルフたんは、なんでかイタズラっ子みたいな笑みを浮かべてる。ほえ、なんでだろ?
念話が届いた。
(ちっちゃくてもお強いんですね、「英雄」さま?)
ブハッ!
うっぎゃあ~!! 正体バレた~!!