エピローグ
秋も暮れに差し掛かっていた。紅葉の盛りを過ぎた木々は葉を落とし、朝には代わりに霜が張っている。登山にうってつけの季節とはいいがたかった。
だが私は登っていた。場所は四国伊予国、西日本の最高峰、石鎚山である。
服装は白衣に菅傘、そして輪袈裟。いわゆるお遍路さんの格好である。
石鎚山は遍路道ではない。しかし、横峰寺を打つ前後で、その奥の院と呼ぶべき石鎚山に詣でる巡礼者は少なくない。私もその一人であった。
ロープウェイを降り、道を歩んでいると、向こうから登山客が降りてくる。
「おつかれさまです」
と皆声をかけていく。私も小さな声ながら「こんにちは、お疲れ様です」と声をかけていた。
山道は整備されているが過酷に感じた。ここまで、逆打ちで四国を巡っていたことが、疲労を倍増させていた。
四国の巡礼者は普通1番札所から順に巡る。それを88番から逆にめぐることを逆打ちというのである。順路より行程は過酷である。
だが私はやるしかなかった。かつて、会うべき人を探して、逆打ちをした先駆者がいたからである。
相手はいるに違いなかった。かつての様に四国を巡っていると信じていた。逆打ちすればきっといつか――そう、いつか、彼女に会えると信じていた。
そしてその思いを胸に、今日も私は歩き続けているのである。
ひとまず終わりです。最後は駆け足になりましたが、ありがとうございました。少しづつ修正を加えることがあるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
次回作というか、放置している別作品に手を付けますので。