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2second  作者: 多々野よーすけ
第1章 日常
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第1章 1

随時編集しています。すみません。

________人類の繁栄が終わり、長らく経った


そうこれは、人類の自滅の物語




過去の人類は度重なる戦争の戦火と、発展にともなる大気汚染を含む地球破壊により自ら衰退した。



ほとんどの生物が戦争とその核兵器の餌食となり、急速に変動する環境の変化に着いていくことなど出来なかった。

森は焼け、水は渇き、風が止んだ。





いくつもの文明が滅びそてまた、滅び、滅んだ文明の余韻に浸る間もなく、汚れた大地から生まれた新たな天敵に人類は悩まされていた。


UL(unknown=life)アンノーン=ライフ。

通称ULウル、そう呼ばれている生き物は人間またはその他生物を主食とし、急速に繁殖していった。

大気汚染や核の力によってほとんどの生物が滅びた世界で器用に生態系を合わせていく異形の生物。


この生物が地上を闊歩 し、人々は地上に居場所をなくしつつあった。


そして、このまま争いを続ければこの先の未来に人類の希望はないと考えた各地域の国王達は何とか打開策を見いだそうと躍起になっていた。


しかし、今までお互いの資源や領土を巡り敵同士として対立してきた者がいきなりその間柄を縮めることなど、不可能に近かった。

人類滅亡の危機に瀕する中、お互いが譲歩することなく時は刻々と過ぎていった。




________




「いつまで、こんな無駄な会議を重ねるつもりですかな?諸公の方々。」


「これはこれは、心外ですな、無駄とは?ノエル帝(Noel)。」


「そもそも、我々を徴集したのはグラディール(Gradeel)公そちではないか?一体何の用事で?」


若者から初老までの男達が顔を合わせ話すは下らない牽制の言葉ばかり。


上から順に、Noel(ノエル)帝。

 北の領地を治める長。

どんな生物でさえも凍えるほどの厳しい極寒の地で地下に帝国を作り主に鉄鋼等の地下資源で繁栄してきた国だ。


そして、ノエル帝の言葉にいち早く反応を示したのが、

太陽の沈むところの王______Cavanis(ザヴァニス)王。

西の国は金の鉱脈が大きく走り、金を用いた金細工、黄金で栄えた。


いがみ合う二人に苛立たしげな南の君主。Svia(スヴィア )9世。


南は温暖な気候により食物が豊富で大地が潤っている美しい国。



そんな、それぞれが互いの言いたいことだけを言い口論しているところで、

寡黙を突き通すEaze(イーズ)の頭主。


東の国は静かに独自の文明を発展させ他の国にはない精密さ正確さを武器に加工技術が発展した国。


そんな光景をただただ微笑んで見ている今回、会議として徴集を掛けた中央の皇帝。

Gradeel(グラディール)

グラディールはその土地が中央にあることを器用に使い、周りの国との貿易で頭一つ分抜きん出て発展した国。


その国を治めるは皇帝という肩書きが到底似合わなそうな・・・まだ、若い男だ。その男は緩くカーブした金髪を揺らしながら肩を震わせて笑った。


話を振られたこの男は薄笑いを顔にたたえ、これは失敬、と、咳払いをした。して、何やらよからぬことを企んでいそうな独特のシワをよせた笑みを濃くした。


その表情に一気にその場が凍りつく。


「いや、あまりにも諸公らが滑稽だったもので?申し訳ないですね。話すに話すことが出来なかったのですよ。まぁ、それは私の統率力の無さにも責任があるようだ 。いや、実に申し訳ないね、実に申し訳ない。」


「余計な口を開くな小僧。貴殿の言葉は毒ぞ。早よう本題を申せ。我らとて暇でない。」


「…。」


どこかふざけた調子のグラディールを六十代後半と見られる黒髪に灰色混じりの男が一喝する。


その男の眼光は一瞬グラディールを息詰まらせ、その場の空気を変えた。ピンと張り詰めた空気の中、彼の口元にはキセルがあり、そこから出る細く、うすねず色の煙だけが場違いなようにゆらゆらと揺らめいていた。


寡黙を突き通していたイーズである。


睨まれたグラディールはその体を軽く縮こませやれやれと軽そうで重い口を開いた。


「あぁ、イーズ君に言われたら仕方がない。」


「…。」


どこか気だるそうに言葉を出すグラディール。そんな彼など、歯牙にも掛けない様子で、イーズと呼ばれた男は固い口をさらにきつく結び、ゆっくりとその瞳を閉じた。


そのイーズの様子にあまり感情を表に出さないグラディールの眉がヒクリと動く。

どこか憎悪を含んだ瞳をイーズに向けながらグラディールは口を開いた。


「まぁ、いいさ。諸公らに紹介したい者がいてね。」


「我らに紹介したい者だと?」


「急かすのは一国の王としてどうなのかな?少しは我慢も覚えた方が宜しいですよ?スヴィア君」


「っ!?」


グラディールの挑発に思わず席を立ち上がったスヴィア。何か文句を言おうとし、そのこめかみをひくつかせた時。

この会議室に続く廊下の奥から場違いなヒールの音が響いた。カツ、カツと規則正しく刻まれ徐々に近づくその未知な存在。


怒りに沸いていたスヴィアの口もその音を聞いて黙り込む。グラディールを除く4人の間に緊張が走った。

暗い会議室の扉。その前に確かな存在を感じる。それは決していいものとは言えないものだった。

ガチャリとドアノブが回り誰もが釘付けになる。

息を飲んだ。

一時は世界を支配した王国の王、グラディールが各国の王を徴集してまで会わせたい者とは一体どんな奴なのか。

そしてゆっくりとドアが開かれた。


「失礼しますねぇ」


「「「「!!??」」」」


「やぁ、いらっしゃい。deity(デイティー)。調子はどうだい?」


「ちょうぅしぃいい?ハッ、そんなの絶好調ですけどぉ!!??グ・ラ・ちゃんっ」


やけに高い身長。

薄汚い白衣と一昔前に流行ったような小さいメガネ。

この場に似合わないやけに高いテンションもそれを後押ししている。


_____やつの不気味さ。

前髪から後ろ髪までキッチリと切り揃えられたおかしな髪型。

コイツはろくでもないやつだと一目瞭然。


「なに?このお硬そうな連中?…まさかこいつらが国の代表なのぉ??」


グラちゃんと全然違うのねぇ…と舐め回すようにそれぞれの国の王を見ていった。


「…。その口を閉じよ。貴様のような人間と話すことなどないわ。…説明しろ中央、どういうつもりだ?あまり我をおちょくると、ただでは済まさんぞ。」



低く唸るようなしゃがれたイーズの声がグラディールとデイティーと呼ばれた男に注がれる。

今にも人を殺してしまわんばかりの声だ。

そんなことも気にしていないとでも言うようにグラディールは笑を一層深めると、デイティーに先を話すように目線を動かした。



「おぉおおっと?、これは失敬失敬。挨拶が遅れて申し訳ございまっせんんん!!諸公の方々。この私、デイティーと申しましてぇ、しがない科学者の一人でしてぇえええ、企業DEITYの創設者であり、代表取締役であります。以後、よろしゅう、よろしゅう。」


「っ、??!?!?!!な、?!き、貴様のような輩がDEITYの創設者などと申すか!!??」


「ええそうですとも。」



人差し指をたててにっこりと笑みを浮かべた強靭に誰もが目を見開く。

声を上げたのはノエル帝だ。


そう、企業DEITYといえば今や世界中に規模を広げ医療から軍事、様々な分野においてトップを牛耳る超一流企業である。

この企業一つで一国であると主張してもだれも驚かないほどにこの企業は膨大に成長し躍進していた。

そんな一流の中の一流企業の創設者であり、代表取締役がこのイカれた男だというのだからだれも信じることができなくて当然だ。

ポーカーフェイスであるイーズでさえも目を見張っている。

そして、中央に位置し、工業都市として発展し力を膨らませたグラディールと繋がっていても確かにおかしくはない。


そもそもDEITYの本体はグラディールにある。繋がらないことなどがあるはずがないのだ。



「で、デイティーからすごい発表があるらしくてね?」


「そうそう、発表、発表でしたねぇ。これを見てもらいましょうかねぇ?あぁ、でもあなた方に見せたくないですね~」



心底嫌そうにデイティーが円卓の回りを徘徊し首を傾ける。

そして、自身の白衣に止めていたボールペンを出しては戻し、出しては戻し、を繰り返していた。

グラディールは乾いた笑い声を漏らしながらその様子を傍観していた。



「っこの!!!!!!えぇぇいぃ!!いい加減にしないか!我らは暇ではないのだ!貴重な1分1秒を貴様らの戯れ言に使っている暇などありはしないのだ。事があるなら早くしろ!さもなくば…っ?!」


「さもなくば?なんですかねぇーえっえっえっ?」



ザヴァニスが息を飲みその肥満気味な体を震わせる。その喉元には先ほどまでデイティーの手元で遊ばれていたボールペンがあった。

いつのまにかザヴァニスの懐に入り込みその切っ先を首元に近づける妖怪。

触れるか触れないかのギリギリの感じにザヴァニスは息することも忘れ冷や汗をだらだらと流し続けた。

ボールペンの細い先がザヴァニスの首もとで円を書いて揺れている・・・



「そこまでにしておいておやりなよ、デイティー?ザヴァニス君が恐怖で凍えて死にそうだ。」



喉奥をクツクツと震わせ、さも楽しそうにグラディールが笑う。

他の三方は苦虫を噛み潰したような顔で憎々し気にグラディールとデイティーを見た。

結局は同じ一国の王といえども、それぞれに格があり上下関係がある。そしてここでの勝者はグラディールにほかならない。



「まぁあぁ?グラちゃんがそう言うなら仕方ないけど…。で、私の発表でしたねぇ…。諸公の方々、こ〜れはご存知?」



デイティーが掲げたのは薄桃色に妖しく光る変な液体が入った試験管だった。それは時折泡立ちまるで息をしているかのような錯覚さえ起こる。



「…」


「これは、“インノベイト=セル”通常イン=セイル。革新細胞なんて呼ばれている、デイティーが今最も研究を推し進めているもののひ、と、つ。」



左右に試験管を振りながら新しいおもちゃを得た子供のようにデイティーがはしゃぐ。



「これを持ってすれば、世界中を我が物顔で闊歩するあんの忌々しいULどもを殺すことも簡単にできるのです!!そして、さらにこのイン=セイルの研究が進めば人類は永遠の命に近しいまでの寿命を得、再び過去の繁栄を取り戻すこともできるっっっ!!と、デイティーはここに宣言いたしましょう!!!!!!」



「そんなことが、あり得るのか…?そんなっ、希望がっ、この世には存在していたのか!!??」



「興味を惹かれましたかな?スヴィア殿下…しかし、これには重大でグラちゃんと私だけでは到底背負いきれない秘密が隠されているのです。このイン=セイルの原料…それはまさに




化物」



デイティーがいびつなメガネをお仕上げながら俯く。

薄暗い会議室の中逆光で光るデイティーのメガネだけが煌々としていた。



「こちらがその、“原料”。クイーン(Queen)です。」



それぞれの席に用意されていたモニターにクイーンと呼ばれたものが撮された。その姿に王たち全員の目が見開かれた。

そこには、肌が青白く、両腕がない。そして胸部より上しかない人の形とよく似たモノが映し出されていた。

髪の毛の長さと胸があることからかろうじてコレが性別上、女性であることがわかる。いや、果たして人でない化け物に性別という概念を用いていいか定かではないのだが…。

そんなものが凍結された状態で巨大なガラス管の中に密閉されていた。

大きさは映し出されている映像の近くにいるデイティーの従業員と思われる者と比較しても胸部より上だけで3mはありそうだ。

そんな巨大な人の形をした何かがデイティー曰くクイーンというらしい。



「これは、一体…っ!?」


「全ての元凶。全ての始まり。ULの母体とでも言えばよろしいでしょうか…。ULのDNAはほとんどこのクイーンのDNAを基盤にして変化しているだけのようです。太平洋中にある巨大な海溝調査の際、偶然発見された彼女は新しいものの宝庫でしたよ、えぇ、はい。そして彼女がULの元になっていると考えられるので、もはや化け物どもはUL(アンノーン=ライフ)と呼ばず、


Queen=Beast(クイーン=ビースト)、QBと名称をここに改めさせていただきます。」




そしてデイティーは語る。このクイーンを研究していく上でわかったことはULは彼女のDNA構造とほとんど同じであり何ら変わりがないということ。

そしてどのULにも共通するようにクイーンにも心臓ではなく(コア)というものがあり、完全に凍結しているにもかかわらず生きているように一定の間隔をおいて脈打っていること。

最後に、彼女の細胞を改良して人間に注入すると外見は人間のままでも恐ろしいまでの能力と強靭さを兼ね備えた強化人間(コンクエスター(conquester)征服者)ができるということだった。



「このコンクエスターを持ってすればQBなど恐るに足らず、世界を蔓延るあの忌々しいヤツラを殲滅することができるのです!!!!」



ダンッと拳を円卓に叩きつけデイティーは沈黙した。

その高揚しきった顔はもはや狂気に包まれつつあり、その顔を見たものを凍てつかせる。そこにグラディールの拍手が入った。


「あはははははっ!!!!!!本当、凄いよ。素晴らしいよ!!デイティー、賞賛に値する。

さて、そこで私は諸公らに提案する。この第17回グラント会議を持って諸公らノエル、ザヴァニス、スヴィア、イーズは我が国グラディールの傘下に入りこのデイティーの推し進める研究に資金と資源の提供を約束せよ

。」


「「「!!!!!????」」」」


「と、突然何を言い出すのだ!!貴様そんなことを我々が承諾するとでも思っているのか!?」


「承諾もなにも、君達は了承するしかない。そうしなければ、君達はこの世界を生きることなど、到底できないのだから。それとも、君達自身の民を殺すかい?ザヴァニス君。」


「…、貴様の性根の悪さは先代からのようだな…グラディール。実にずる賢い卑怯なやつよ。臆病でそれでいても権力と財力だけはある。救いようがないよの?しかし、仕方あるまい…。」



そうイーズは呟くとキセルを手から離し中身をその机の上に捨てた。




「我、イーズはグラディールの提示した条件をのみ、その規約に従ずることをここに宣言する。」


「…ふふふ。そう、さすがイーズ君。ホントわかっているよねぇ?…で、他の三方は?いかがするのでしょう?」



呆れたような憎んでいるようなよくわからない表情をイーズはグラディールに向け、グラディールの持つ書面にサインをした。

イーズの行動を、見た他三方も先ほどまでの威勢をなくしイーズの後に続く。

その様子をグラディールとデイティーは満足そうに眺めた。



これで、連合グラディールがことになる。分かれていた国々が繋がるのは約500年ぶりであり、異例のことであったが人類存続の危機において、各国なりふり構っている場合ではなかったのだ。




ここから、コンクエスターの歴史と物語が始まりを告げる。

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