表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

子供たちの国

作者: 実茂 譲

先月、アメリカのテネシー州ノックスヴィルで十二歳の少年が銃撃戦に巻き込まれて死亡した。

去年の暮れにやはりギャングの銃撃戦から友達を守ろうとして死んだ十五歳のいとこを追悼した銃規制式典の帰り道だったという。

2014年1月にはパキスタンで十五歳の少年が一人、自爆テロに巻き込まれて死亡した。

テロリストは学校で自爆しようとしていて、そのころ校庭には朝礼で生徒全員が集まっていた。

その少年はテロリストが校庭に入るのを制止しようとして、しがみつき、級友をかばう形で爆死した。


彼らは氷山の一角だろう。

だが、単純がゆえに純粋化された子供たちの正義や犠牲を前に、わたしたち大人は何もできない。

世界をずっと素晴らしいものにする方法が分からず、途方に暮れている。

銃規制やテロ撲滅は複雑な迷路に迷い込み、出口を見つけたころには、すっかりくたびれはてて、「何をやっても変わらない」という諦観を見出すばかり。


せめて、彼らのために永遠の王国があると信じたい。

何の悩みもなく、暴力もなく、彼らの勇気は一つとして漏れることなく反映され、ずっと素晴らしい世界をつくっていく。

ささやかな美徳を嘲笑う皮肉主義も、いかなる努力にも価値を見出せない諦観もない、悪い大人たちが彼らに理不尽な暴力や犠牲を強いることのない永遠の王国。


そう考えること自体が、大人の弱さを露呈しているとしても、そう考えるくらいしかできないのが哀しい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 大人としての義務(ではないけど)……はあ心苦しいばかりで。 物騒な地域のお子様方は本当に、ですが日本だってそうですね今じゃ生まれて来るのが罰ゲームみたいに言われている。大人がこうしたと言われ…
[一言] 子供たちが犠牲になるのはニュースで聞くだけでも本当に辛いものがあります。 銃社会で「周りが銃を持っているから自分も銃を持って防衛しないといけない。」「銃を規制すると今ある銃で暴力組織が力を付…
[一言] こどもたちの王国は、きっとどこかにあれば良い。 遠い果てであっても、安全で。皆がすこやかに暮らせる国があれば良い。 暴力も。理不尽な差別も。テロもなければ王国はそっと門を閉ざすのだろうが、今…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ