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『アグライアの橋』

作者: モコたん

『アグライアの橋』


むかし、むかし、あるところに大きな川がありました。

流れが強く。船で渡ることも困難な川でした。

多くの人が、川を渡ろうとして命を落としていました。

王様も何度も橋を架けましたが、強い川の流れに橋は完成する前に流されるばかりで、橋を架ける事が出来ませんでした。

それでも、たまに、流れの弱いときがあって、船で川を渡ることの出来る日もありました。

ある日のこと、小さな赤ちゃんを抱いた美しい母親と父親が川を渡ろうと船を出しましたが、あまりにも流れが強くて前に進むことも出来ません。

父親と母親は、神様に祈りました。

「この子は、病気で早く川の向こうに住んでいるお医者様に見てもらいたいのです。川の流れが弱くなるのを何日も待っていますが、子供の病気はどんどん悪くなるばかりで、一日も速くお医者様に診て頂かないとこの子は死んでしまいます。どうか、お願いです。私達親子が川を渡ることをお許しください。」

母親と父親は、何度も何度も神様にお願いしましたが、川の流れは速くなるばかりです。

父親はそれでも諦めずに何度も何度も神様にお願いしました。

けれど、母親は、病気の子供を抱きながら、森の方に走り出しました。

草をかきわけ薄暗い道を走って行くと、小さな小屋にたどり着きました。

その小屋には、魔女が住んでいました。

母親は、小屋の戸をたたき泣きながら言いました。

「森の魔女様、どうぞお願いです。今にも死にそうなこの子を助けてください。この子を助けてくださるのなら私は何でもいたします。どうか、助けてください」っとお願いしました。

小屋の戸が少し開いて中からしわがれた声が聞こえて来ました。

「何でもしてくれるのか?それならば、お前の美しさとお前の可愛い娘の美しさをもらおう。その代わりに娘の命は助けよう」っと言いました。


母親は、「はい」っと迷わず言いました。


魔女は、少し開いた扉から、しわだらけの手で小瓶を差し出しました。

「その小瓶に入っている薬をお前も飲み、お前の子に飲ますとお前の望みは叶う」っと言いました。

母親は、小瓶を受け取ると子供に飲ませて、自分も飲み干しました。

すると、めまいがして倒れてしまいました。

「おぎゃ、おぎゃ」っと言う声に母親が目を覚ましました。

そこには、見たこともない赤ちゃんが居ました。

細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚、でも、着ている服は自分が娘のために縫った洋服です。

何よりも、絹のように美しい金色の髪は、毎日歌いながらなでてあげたあの美しい髪でした。

「お前は、メティスなのかい?」っと母親は聞きました。

赤ちゃんは、無邪気に笑っていました。



『アグライアの橋』


むかし、むかし、あるところに大きな川がありました。

流れが強く。船で渡ることも困難な川でした。

多くの人が、川を渡ろうとして命を落としていました。

王様も何度も橋を架けましたが、強い川の流れに橋は完成する前に流されるばかりで、橋を架ける事が出来ませんでした。

それでも、たまに、流れの弱いときがあって、船で川を渡ることの出来る日もありました。

ある日のこと、小さな赤ちゃんを抱いた美しい母親と父親が川を渡ろうと船を出しましたが、あまりにも流れが強くて前に進むことも出来ません。

父親と母親は、神様に祈りました。

「この子は、病気で早く川の向こうに住んでいるお医者様に見てもらいたいのです。川の流れが弱くなるのを何日も待っていますが、子供の病気はどんどん悪くなるばかりで、一日も速くお医者様に診て頂かないとこの子は死んでしまいます。どうか、お願いです。私達親子が川を渡ることをお許しください。」

母親と父親は、何度も何度も神様にお願いしましたが、川の流れは速くなるばかりです。

父親はそれでも諦めずに何度も何度も神様にお願いしました。

けれど、母親は、病気の子供を抱きながら、森の方に走り出しました。

草をかきわけ薄暗い道を走って行くと、小さな小屋にたどり着きました。

その小屋には、魔女が住んでいました。

母親は、小屋の戸をたたき泣きながら言いました。

「森の魔女様、どうぞお願いです。今にも死にそうなこの子を助けてください。この子を助けてくださるのなら私は何でもいたします。どうか、助けてください」っとお願いしました。

小屋の戸が少し開いて中からしわがれた声が聞こえて来ました。

「何でもしてくれるのか?それならば、お前の美しさとお前の可愛い娘の美しさをもらおう。その代わりに娘の命は助けよう」っと言いました。


母親は、「はい」っと迷わず言いました。


魔女は、少し開いた扉から、しわだらけの手で小瓶を差し出しました。

「その小瓶に入っている薬をお前も飲み、お前の子に飲ますとお前の望みは叶う」っと言いました。

母親は、小瓶を受け取ると子供に飲ませて、自分も飲み干しました。

すると、めまいがして倒れてしまいました。

「おぎゃ、おぎゃ」っと言う声に母親が目を覚ましました。

そこには、見たこともない赤ちゃんが居ました。

細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚、でも、着ている服は自分が娘のために縫った洋服です。

何よりも、絹のように美しい金色の髪は、毎日歌いながらなでてあげたあの美しい髪でした。

「お前は、メティスなのかい?」っと母親は聞きました。

赤ちゃんは、無邪気に笑っていました。

母親は、メティスを強く抱きしめて「神様に感謝いたします」っと言いました。

母親がメティスを連れて家に帰る途中、泉に自分の姿を映しました。

細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚、すっかり醜くなった自分の姿がそこにありました。

夫は、醜い姿になった私達をどう思うかしら・・・

そう考えながら、家に帰りました。

最初こそ、驚いた父親でしたが、妻の話を聞き、その美しい声と美しい金色の髪をみて妻であることを理解しました。

「どんなに、醜くなってもお前は私の妻で、メティスは私の愛する子供であることにはかわりはないのだよ。元気になってよかった。」っと言うと、妻とメティスを抱きしめました。

それから、しばらくして、王様はとても美しいお姫様と結婚しました。

その日から、川の流れが弱くなって、王様は橋を架けました。橋は前のように流されることがなくなって多くの人が橋を渡ることが出来ました。

国民の中には、美しいお后様が来てから川の流れが弱くなったので、お后様を川の女神様だと言う人もいました。

そんなある日、王様とお妃様の間には、とても可愛い王子様が生まれました。

王子様は、すくすくと大きくなりたくましい青年になりました。

ある日、森に狩に言った時に、美しい歌声が聞こえて来ました。

それは、それは、美しい歌声でした。

どんな、美しい娘なのだろうと思い、王子様はその歌声の方に近づきました。

しかし、その娘は、細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚の醜い娘でした。

『なんと、醜い娘だろう、あのように美しい声を持っているのに』っと思いました。


それでも、王子様は、娘の歌声を聞きたくて毎日、森に行きました。

娘が森にいない時には、村で娘の姿を探しました。

娘は、とても働きの者で、とても織物が上手で、とても明るくいつも笑顔でした。

でも、多くの村人は醜い娘を嫌っていましたが、娘はそれでも明るく笑っていました。

ある日、森で歌う娘に王子様は、声をかけました。

「名前は、何というの?」

娘は、目の前に現れた美しい王子様に言いました。

「メティスと申します」

それから、王子様は毎日、メティスの歌を聞きにいきました。

そして、たくさんのお話をしました。

ある日、王子様は聞きました。

「醜く生まれて、神様を憎んだことはないのかい?」

メティスは答えました。

「父が言いました。本当に醜いのは、自分の心が憎しみに囚われることだと、私の母も私と同じに醜いですが、父は母の優しい心が好きだといいます。」

そんな、メティスの話を王子様は楽しそうに聞く日々が続きました。


ある日、王子様は王様とお妃様に言いました。

「私は、ある娘に恋をしました。その娘と結婚したいのです。」

王様とお妃様は言いました。

「その、娘を連れてきなさい」

王子様は、美しいドレスを着せてメティスをお城に連れて行きました。

メティスの顔を見た王様が怒鳴りました。

「こんな、醜い娘を嫁にもらうというのか?」

王子様は言いました。

「メティスは、この世で一番心の優しい娘です。お母様と同じように美しい心の娘です」

しかし、王様は怒鳴ります。

「こんな、醜い娘を嫁にすることは、許さん、そんな、醜い娘と結婚したいというなら、お前は、王子などではない、この城から出て行け」っと言いました。

王子様は、メティスの手をとって言いました

「私は、この心優しいメティスと結婚します」そういうと、娘を連れて城から出て行きました。

王子がメティスと城から出て行く姿を見ながらお妃様が王様に聞きました。

「私が、あの娘と同じ顔であったなら、王は私をお嫌いになりますか?」

王様は言いました。

「后が、あのように醜い顔であったなら、どうして、后を愛することなど出来ようか?」

后は、大きな涙をぽろぽろ流しました。

その日から、川の流れが速くなり、橋は流され、船でも川を渡ることが出来なくなりました。

そんな日が、長く続いくなか、国民の間である噂が広まり始めました。

『あの、醜い娘の呪いだ、王子様がお城を捨てたのも、川が荒れるのもあの醜い娘の呪いだ、あの醜い娘を川の神にささげたらきっと川は元のように緩やかな流れになって、王子様もお城に戻ってくる』っと、多くの者が言い始めたのです。

その、噂は王様のところまで聞こえて来ました。

王様は、お后様に言いました。

「あの、醜い娘を川の生贄すれば、王子も帰ってくる、そうすれば、王子がこの城を去ってから泣いてばかりいる后も前のように笑顔になることが出来る」

お后様は泣きながら王様に尋ねました。

「王様は、何も悪いことをしていない娘を醜いだけでお嫌いになり、噂を信じて娘を生贄にされるのですか?顔が醜いということはそれほどに嫌われなければならないことなのですか?」

王様は、お后様に言いました。

「后は、心が優しいからそのように思うだけで、心の醜い者は顔も醜いものだ。娘を生贄にすればすべて元の通りになる、何も心配する必要などない」っと、お后様を抱きしめました。

そして、王様は、家来を引き連れて王子様とメティスの暮らす小屋に行きました。

王子様は、一生懸命メティスを守るために戦いましたが、家来に取り押さえられてしまいました。

そして、メティスもとらわれてしまいました。

王子様とメティスは、別々の牢屋に入れられてしまいました。

夜中、王妃様は牢屋に入れられてる王子様のところに行って尋ねました。

「王子、もし、王子がメティスのように醜くなっても、メティスを助けたいですか?醜くなった王子を見て、メティスは王子を嫌いになるかもしれません。それでもメティスを助けたいですか?」

「はい、たとえ、醜くなってメティスに嫌われてもメティスを助けたいです」っと王子様は答えました。

お后様は、優しくうなずきました。

そして、次の日、縄で縛られた王子様とメティスが荒れる川の前に連れてこられました。多くの人が見物に集まっていました。

台の上にメティスが連れて行かれました。

王様が声高らかに言いました。

「この、醜い娘の呪いによって、川は荒れているが、この醜い娘を殺せは川は前のように緩やかになる。」

その時、お后様がゆっくりと台の上に上り、メティスの横に立ち言いました。

「川が荒れるのは、私が悲しむからです。私は王様と巡り合って、王様に大切にして頂き、愛して頂いて、とても、とても、幸せでした。その幸せが誰かの不幸の上に築かれたものであっても、私は幸せでした。メティス許しておくれ、お前の美しさをお前の母の美しさを奪ったのは私なのです。私は、お前のようには強くなかったから、お前の両親のように愛してはもらえなかったから、誰かに心から愛してもらいたかった。一度で良いから抱きしめてもらいたかった。罪深い森の魔女を許しておくれ、王様、今までありがとうございました。私は心から王様を愛しておりました。自分の醜い姿を変えてまで王様に愛してもらいたかった醜い私を許してください」っと言うと・・・お后様は短 剣で胸を貫きました。

すると・・・メティスの細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚が、美しく変わっていきました。

かわりにお后様の顔が、細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚にかわっていきます。

倒れたお后様を抱きながら、王様は大粒の涙を流しながら言いました。

「后・・・許しておくれ、私は、そなたの姿形を好きになったのではなく、そなたの心の優しさを愛していたたことに今頃、気が付いてなんて、そなたを苦しめてしまった。許しておくれ・・・」


王様は、死んでしまった王妃のために立派な橋を築きました。

そして、その橋に王妃様の名前をつけました。

古代ギリシャの光の女神と同じ名のアグライア橋となずけました。




その時、お后様がゆっくりと台の上に上り、メティスの横に立ち言いました。

「川が荒れるのは、私が悲しむからです。私は王様と巡り合って、王様に大切にして頂き、愛して頂いて、とても、とても、幸せでした。その幸せが誰かの不幸の上に築かれたものであっても、私は幸せでした。メティス許しておくれ、お前の美しさをお前の母の美しさを奪ったのは私なのです。私は、お前のようには強くなかったから、お前の両親のように愛してはもらえなかったから、誰かに心から愛してもらいたかった。一度で良いから抱きしめてもらいたかった。罪深い森の魔女を許しておくれ、王様、今までありがとうございました。私は心から王様を愛しておりました。自分の醜い姿を変えてまで王様に愛してもらいたかった醜い私を許してください」っと言うと・・・お后様は短 剣で胸を貫きました。

すると・・・メティスの細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚が、美しく変わっていきました。

かわりにお后様の顔が、細くて離れた目、上を向いた大きな鼻、酷く飛び出た歯、イボ蛙のように出来物ができた皮膚にかわっていきます。

倒れたお后様を抱きながら、王様は大粒の涙を流しながら言いました。

「后・・・許しておくれ、私は、そなたの姿形を好きになったのではなく、そなたの心の優しさを愛していたたことに今頃、気が付いてなんて、そなたを苦しめてしまった。許しておくれ・・・」


王様は、死んでしまった王妃のために立派な橋を築きました。

そして、その橋に王妃様の名前をつけました。

古代ギリシャの光の女神と同じ名のアグライア橋となずけました。


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