表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/41

out 【商店街夏祭り企画】

out=演奏上使ってはいけない音を使った音楽

 俺はどちらかというと空気は読める方。それによってウザそうな女や、厄介そうな友達はうまく避け、面倒くさい事態陥る事も少なく生きてきた。

 そしてその能力を生かし、大学でもバイトでもソツなく上手くやってきたはずなのだが、なぜこの状況に陥っているのか。

「へえ、小野くんって、法学部なんですか、将来は弁護士とか?」

 ニッコリ俺に話しかけてくる澤山さん。

「まだ、悩んでるんですが検察のほうもやってみたい気もしていまして」

 俺はひきつる顔をなんとか笑顔にして答える。

「小野くんだったら、どこでも立派にやっていけそうだよね」

 二人で勝手に世界を作ってくれていたら良いのに、(ユキ)さんと透さんのほぼ彼女の澤山さんは俺を交えて会話している。俺のテーブルは平和で穏やかな会話を交わされているが、チラホラと店内にいる商店街の人の『お前、何その二人の邪魔してんだよ!』『 馬に蹴られろ!』オーラが半端ない。

 でも言い訳させて欲しい。俺は最初からこの『とうてつ』にいました。そこに透さんがやってきて俺に話しかけてきて俺の前に座り、そしてその後、澤山さんがやってきて俺の隣に座った。その時に俺はなぜコチラ側に? とも思ったけれど、その方が透さんの顔が見れて話やすいからというのを理解した。しかしこのポジションでの会話は俺が一番つらい。


 二人とも良識があり、人前でイチャイチャする事はない。逆にその部分に商店街中の人ヤキモキしているようだ。

 それだけに今、二人っきりの時間を大切してあげたいという、周囲の気持ちも理解出来る。だからこそ俺にも向けられる二人の笑顔が今の俺には辛い。

 俺がお店に入った直後に透さんが来て、その後一分ほどして澤山さんが来た、ということでほぼ同時に入ってしまった為に先に食べてお店を出るということが難しい。ましては、この後【黒猫】でのバイト。透さんと一緒に行動することになるのに、一人先に切り上げるのも不自然。本屋によってから行きたいという理由も今手にしている【Books大矢】の手提げ袋がそれをできなくする。その結果三人でとうてつを出て商店街を三人で歩くという、精神的に苦しい時間を追加体験する。俺はバイトの前にグッタリしていた。


 俺の控室にもなっている楽屋で制服に着替えていると、友人のダイサクから電話がある。

『お前、何お邪魔虫してんだよ!』

 同じ商店街でバイトしているとはいえ、なんでコイツにも、もうその情報が伝わっているのか?

「違うよ! 俺が【とうてつ】にいたら、二人が後から入ってきただけ」

 商店街をよく知っているだけに、俺の立場も状況も理解はしているのだろう。ダイサクはハハハと笑う。

「それよりさ、今度の花火大会一緒見に行かない?」

 別に用事はないので『いいよ!』と答える。そしてダイサク二人きりで花火か~と思っている時にふと何か嫌な予感を覚える。

 最近【黒猫】にもよく来ている女性三人組が頭に過る 。

『敬語年下攻めもあり?』

『マスターとの三角関係だとか !』

 不穏な会話をしているのが聞こえる。あの本の出所は間違いなく彼女らだ。キーボくんのショーでもよくみかけるし……。

 俺がキーボくん恋愛に巻き込まれた事で、作者が【黒猫】にまで浸入してきたようだ。俺とキーボくん一号との関係に更に透さんという、透さんが知ったら発狂しそうな事を三人で囁いている。もうそうなるとユキさんにとってはダブルの衝撃である。

 杜さん透さんが恋人関係で、それに横やり入れる俺という事も妄想しているようだ。安定した俺の『噛ませ犬』ポジションもどうかと思う。しかも杜さんと透さんをどうしたらそう言う関係に見えるのか……。彼女らの目には愛妻の澄さんや、商店街中でツーショット姿を晒している筈の澤山さんの姿が見えないらしい。

 ウッカリ彼女らに祭り時に商店街の別の店でバイトしているダイサクと二人で歩いた所を見られたら、物語はその脳内でどう発展していくのか恐ろしい……。

「けどさ、野郎二人のツーショットはちょっとな」

「法学でも呼ぶか」

 そういう俺の呟きで、同じサークル仲間の御法山学(みのりやままなぶ)の三人で行くことになった。結局二人であろうと、三人であろうと、そのようにしか世の中を見ない方には大した効果がある筈もないというのを考えてみたら分かるのだが、疲れていた俺はそれでいいかと思う事にした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ