voice
掲載日:2013/01/16
「どうかした?」
「ううん、ちょっと…誰かに呼ばれた気がして」
「嫌だ。私だけを見ててよ」
「もちろんだよ」
(………)
だけどやっぱりだれかが僕を呼んでいる。
「行かなくちゃ」
「待ってよ。どこに行くの」
(…こっちよ、こっち……)
「今行くよ」
「待ってよ、私を置いていかないで」
(………早く…来て)
「君は誰なんだ。どうして僕を呼んでいるの」
(………)
声が僕を呼んでいる。
早く、早く行かなくちゃ。
ギィィ、バタン。
扉を開けて、
ギィィ、バタン。
歌が聞こえる。
(来て、来て)
(早く来て)
「君が僕を呼んでいたの」
(ええ、そうよ)
(会いたかったわ)
(だって私)
(とてもお腹が空いていたもの)
「僕は君に食べられるんだ?」
(嫌?)
「そうだね」
「きっと君のお姉さんが嫌がるから」
「また盗み食いしようとしたのね」
(お姉様)
「悪い子ね」
(今度の人は躾ができているのね)
「貴女にこの人は渡さないわ」
「私だけのものなのよ」
「私のとっておきのごちそうなの」
「ねえ」
「私だけを見てて」
君と口づけを。




