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炎将

8

【業火の間】──戦神カドラの領地

炎に包まれた灼熱の世界。

空は真っ赤に染まり、地面からは常に炎が噴き出している。

その中央に、巨大な闘技場のような建造物がそびえ立っていた。

リベルタの《無制限転移》により、蓮たち五人は領地の外縁部に転移した。

「ここが…戦神の領地」

蓮は目の前の光景に息を呑んだ。

熱波が容赦なく襲ってくる。

「暑い…」

美月が額の汗を拭った。

「リベルタ、結界はどこだ?」

クヤが問いかけた。

「あそこです」

リベルタが指差した先に、うっすらと赤い膜のようなものが見えた。

「あれを越えると、戦神の眷属たちに気づかれます」

「どうやって越える?」

「正面突破は無理ですね。眷属の数が多すぎます」

柚木が冷静に分析した。

「じゃあ、どうすればいいんだ」

大樹が焦った様子で聞いた。

「結界には、必ず弱点がある」

クヤが説明した。

「神が創った結界には、必ずエネルギー供給源がある。それを見つけて破壊すれば、一時的に結界が弱まる」

「でも、それってどこにあるんだ?」

「たいていは、領地の中心か、あるいは端に隠されている」

リベルタが補足した。

「この領地の場合…おそらく、あの闘技場の地下でしょう」

「闘技場の地下か…」

蓮は闘技場を見た。

遠すぎて、詳細は見えない。

「でも、結界を越えないと闘技場にも行けない」

「いえ、方法はあります」

リベルタが微笑んだ。

「私の能力で、結界の一部を『存在しない状態』にすることができます」

「それって、結界を破壊するってことか?」

「いいえ。破壊ではなく、一時的に『なかったこと』にするのです」

「…意味が分からない」

大樹が首を傾げた。

「《絶対解放(アブソリュート・リベレーション)》」

リベルタが手を結界に向けた。

すると、結界の一部が、まるで最初から存在しなかったかのように消えた。

「すごい…」

美月が驚きの声を上げた。

「急いでください。長くは持ちません」

リベルタの額に汗が滲んだ。

「よし、行くぞ!」

蓮が先頭に立って、結界の穴を越えた。

五人全員が領地内に侵入すると、リベルタは力を解除した。

結界が元に戻る。

「はぁ…思ったより、エネルギーを使いました」

リベルタが膝をついた。

「大丈夫か?」

「ええ、少し休めば」

「ここで休んでる暇はないぞ」

クヤが警告した。

「もうすぐ、眷属たちが気づく」

その言葉通り、遠くから足音が聞こえてきた。

複数。しかも、速い。

「来たか」

柚木が構えた。

炎の中から、三体の人影が現れた。

いや、人ではない。

人の形をした、炎の獣。

戦獣(バトルビースト)】──戦神が創った眷属。

「侵入者だ!」

「殺せ!」

戦獣たちが襲い掛かってきた。

「任せろ!」

大樹が前に出た。

拳を握り、戦獣の一体に殴りかかる。

しかし──

「熱っ!」

大樹の拳が、戦獣の体に触れた瞬間、火傷を負った。

「馬鹿野郎、こいつら炎でできてるんだぞ!」

クヤが叫んだ。

「じゃあ、どうすればいいんだよ!」

「俺に任せろ」

柚木が前に出た。

手を振ると、強烈な風が巻き起こった。

「《風刃(ウィンドブレード)》」

風の刃が、戦獣たちを切り裂いた。

しかし、戦獣たちは再生した。

「無駄だ。こいつら、炎がある限り何度でも再生する」

クヤが冷静に分析した。

「じゃあ、炎を消せばいいのか?」

「ああ。でも、この領地全体が炎に包まれてる。難しいぞ」

「なら、俺がやる」

蓮が前に出た。

手を戦獣に向ける。

「クヤ、力を貸してくれ」

「ああ。だが、やりすぎるなよ」

蓮の手から、黒い光が放たれた。

黒い光が、戦獣の一体を包んだ。

「うおおお!」

戦獣が悲鳴を上げた。

炎が消えていく。

そして──

戦獣は、ただの灰となって崩れ落ちた。

「すげえ…」

大樹が呆然とした。

「でも、まだ二体いるぞ」

残りの二体が、蓮に向かって襲い掛かってきた。

「させるか!」

美月が前に出た。

手を二体に向けると、緑色の光が放たれた。

「え…?」

美月は驚いた。

自分の手から、神の力が出ている。

「美月、お前…」

「私…まだ、癒しの神の力が残ってるの?」

美月は混乱した。

しかし、緑色の光は戦獣たちを包んだ。

戦獣たちは、動きを止めた。

「これは…」

「癒しの力が、戦獣の攻撃性を抑えてる」

クヤが説明した。

「今のうちだ、蓮!」

「わかった!」

蓮は再び黒い光を放った。

二体の戦獣が、灰となって消えた。

「はぁ…はぁ…」

蓮は息を切らした。

「大丈夫か、蓮?」

「ああ…何とか」

「美月も、大丈夫か?」

「うん…でも、私、まだ神の力が…」

美月は不安そうだった。

「後で、また神を剥がす。今は、先を急ごう」

蓮が言った。

「ああ。闘技場へ向かうぞ」

五人は、炎の中を進んでいった。

9

闘技場の前。

巨大な鉄の門が、五人の前に立ちはだかっていた。

「でかい…」

大樹が見上げた。

「どうやって入る?」

「正面から行くしかないな」

蓮が門に手をかけようとした瞬間──

門が、開いた。

「ようこそ」

門の向こうから、声が聞こえた。

炎を纏った巨漢。

戦の神、火怒羅(カドラ)

「待っていたぞ、最厄の器」

火怒羅は不敵に笑った。

「お前が来ることは、分かっていた」

「…罠か」

クヤが呟いた。

「そうだ。お前たちが雅を助けに来ることは、予想していた」

火怒羅は闘技場の中を指差した。

「雅は、あの中にいる」

蓮は闘技場の中を見た。

中央に、雅が鎖で繋がれていた。

「雅!」

蓮が叫んだ。

雅は、虚ろな目でこちらを見ている。

「あいつは、創造神アルティスの器だ」

火怒羅が言った。

「だが、俺が奪った」

「奪った…?」

「ああ。アルティスから、雅を奪った」

火怒羅は笑った。

「そして、今度は俺の器にする」

「させるか!」

蓮は闘技場に飛び込もうとした。

しかし、目に見えない壁に阻まれた。

「無駄だ。この闘技場には、特別な結界が張られている」

火怒羅が説明した。

「中に入るには、条件がある」

「条件?」

「ああ。一対一の戦いだ」

火怒羅は蓮を指差した。

「お前と、俺の代理が戦う」

「代理?」

「ああ。俺の最強の眷属、【炎将(フレイムロード)】だ」

闘技場の中から、一人の男が現れた。

全身を炎の鎧で覆った、巨大な戦士。

その存在感は、先ほどの戦獣とは比べ物にならない。

「こいつに勝てば、雅を返してやる」

火怒羅が提案した。

「断ったら?」

「雅は、俺の器になる。そして、お前たちは殺される」

蓮は拳を握った。

選択肢はない。

「分かった。やる」

「蓮!」

美月が止めようとした。

「大丈夫。俺が勝つ」

蓮は闘技場に入った。

結界が開き、蓮を中に通した。

そして、再び閉じた。

「さあ、始めろ」

火怒羅の声が響いた。

炎将が、蓮に向かって歩き出した。

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