8話
ユキ・カリン板付け
SE 録音開始
照明明転
カリン 「皆々様、ご視聴頂き、誠に感謝申し上げます。私はカリン。そう、今噂のタイヨウTV社長の娘にございます」
カリン一呼吸。
カリン 「私は父から暴力に監禁、数々の虐待を受けてきた。権力、カネに物を言わせた恐怖の圧政に不満を持っていた者どもよ。今こそ立ち上がり、未だ甘い汁をすする旧体制派を打ち倒そうではないか」
照明変化
SE 録音停止
カリン 「どうよ。私の演説は?」
ユキ 「最高!SNSに流す動画も記事にする写真もバッチリ。あとはこれをどう混ぜるか。来週分にはもう間に合わないし、再来週。でも、これをそのまま通して編集長がOK出すとも思えない」
カリン 「その問題が解決して、来週に間に合わせられると言ったら?」
ユキ 「そんな事、出来るはずがない」
ファジーIN(USB入りの封筒を手に)
ファジー 「カリン。言われたもの盗って来たぞ」
カリン 「さすがファジー先輩。予想よりずっと早い到着ね」
ユキ 「それは?はっ…まさか来週刊行予定分の印刷前データ?」
カリン 「正解」
ファジー 「全く、こんな怪盗まがいのことするのは初めてだ」
カリン 「そんなこと言って、普段から武器を持った敵の見張りをかいくぐって、死体を回収しているじゃないですか。盗んでくるものの大きさも監視も、先輩にとっては余裕でしょ」
ファジー 「確かに警備はザルだったが。こういうことなら、ツキやセイの方が得意なんじゃないか?」
カリン 「もしあの二人が行って、事件でも起こしてしまったら印刷会社は一時的に営業を止めてるでしょう、そうしたら記事を出せない。それで済んだらいいけど、計画が流出するかもしれない。その点、ファジー先輩はもし見つかったとしても、大騒ぎにならないように動いてくれるでしょ」
ファジー 「信頼してくれていると受け取っておくよ」
カリン 「じゃあ、ユキ。後は頼んだ」
ユキ 「これが来週分なんですよね。つまり」
カリン 「怪しまれないように、明日には完成させて返してきてね。じゃあ頼んだわよ」
ユキ 「人使いの粗さが半端ねえ」
照明暗転
ユキ、カリン、ファジー OUT
イヨ・ツキ・セイ・マスター板付け
照明明転
セイ 「イヨとカリンってば、なんか色々やってるみたいじゃん。ずるい」
イヨ 「二人は別で任務をしているんじゃなかったか」
セイ 「でも、四人でチームなんだから皆で行動したい。そう思うよね、ツキ」
ツキ 「いいや。今は自分の任務に集中しないと」
セイ 「えー、振られちゃった」
イヨ 「二人は今、どんな任務をしているんだ?」
ツキ 「行方不明が最近多いんだ」
イヨ 「えっと?」
マスター 「イヨが入ってくる前かな。無差別連続殺人事件が起きたことは知っているかい」
イヨ 「ああ、タイヨウがもみ消してきた記事を探す中で、何故かこの事件ももみ消されていてな。確か、殺し方は決まって、心臓をナイフで一突きだったはず」
ツキ 「かなりの手練れだな」
マスター 「ああ、最近は無かったから、勝手にくたばったかと思っていたんだがね。しかも、隠し方が以前より巧妙になっていやがる」
イヨ 「どうして、以前の事件と関係性があると?」
マスター 「たまたま見つかった死体を調べてみたんだけれどね。殺し方が同じだったんだよ」
ツキ 「この街を守ることが俺たちの役目だから」
イヨ 「そうだな。することは違ってもそれは変わらない」
カリン IN
カリン 「ツキー」
ツキ 「くっつくな」
カリン 「せっかく、同じチームになれたんだから、もっと一緒に居たいんですよ」
セイ 「カリンもそう思うよね。二人ってば、それぞれで頑張ろうという感じでさ」
カリン 「あー、それは仕方ないですね」
セイ 「ひどい。はしご外された」
カリン 「もー冗談ですよ」
イヨ 「休んでおけ、と言ったはずだが」
カリン 「えー、休むの疲れたよ」
セイ 「分かる。長いこと動いてないと、逆にしんどくなってくるよね」
イヨ 「このグダグダぶりを見たら分かるだろ。こいつ、そこまで休んでないから。」
セイ 「へー、体調が分かるくらいまで気に掛けているとは」
イヨ 「違うからな。カリンが倒れて計画失敗というのが、一番怖くて気に掛けているだけだから」
ツキ 「初めはイヨが勝手に敵対心を燃やしていて、どうなることかと思ったが、大丈夫そうで良かった」
イヨ 「ツキまでそれを言い出したら収集付かないから」
カリンにやにや
ツキ 「カリン、無理するなよ。それじゃ、俺たちは任務に行ってくるから」
ツキとセイOUT
カリン 「分かった。ちゃんと休むよ。行ってらっしゃーい」